上洛準備

武田勝頼が上洛を渋っているのを知った武田信玄は小田原城に来ていた。

そして北条氏康と共謀して、武田勝頼に説教と共に武家の棟梁としてのなんたるや、武田家や北条家の為に何をしなくてはならないかを正論で論破して上洛を承諾させた。

武田信玄も北条氏康も何故勝頼が上洛を嫌がっているのか百も承知だった。

自分達だったら、敵中真っ只中であり作法もわからぬし、魑魅魍魎の公家の相手や挨拶など死んでも御免である。

しかし武田信玄は武田家の天下を統一は悲願であり、北条氏康も武田勝頼が天下を統一して愛娘が男児を産めば北条家は生涯安泰である。

先の話になるが、実際お早は男児を産みその子が北条家を継ぐことになるのでその判断は間違っていない。

武田勝頼は父親2人にやり込められ渋々上洛を宣言する事になる。

小田原城で武田勝頼は、風魔葵、北条氏康、山県昌景、上泉信綱、真田昌幸、雑賀孫市が同行することを宣言した。

風魔葵に関しては、京言葉を使われたり、京の名所について語られたり、わざとらしく旅支度をする仕草を見せられた為、言わずもがなである。

連れてくつもりではいたが…ここまでされて連れて行かないと夫婦仲に問題が生じる。

しかし、その中で一番心理的被害を受けたのは北条氏康である。

武田勝頼より、義父として公家衆全ての対応を委任され、その勉強にと真田昌幸をつけられたのである…逃げられない…

まさかの展開に北条氏康は呆然とする中、受け入れざるを得なかった。

武田勝頼としては、父2人を連れて上洛したかったが、今川義元のせいでそうもいかなかった。

この時ばかりは武田信玄も今川義元に感謝したとか？

武田勝頼より、指名され茶器を受け取った大名は歓喜していた。

武田勝頼が贈った品が誰が見ても価値があるのも勿論だが、数いる畿内の有力者の中でわざわざ自分を選んだ関東の雄に喜びが隠せなかったからである。

畿内では警戒され敵の方が多い彼であった為余計である。

こうして上洛への準備が整ったのである。