鬼島津
琉球王国に源氏の血が入った者がいる説をこの物語では使います。
琉球王国での即位式を済ませた武田勝頼は帰路についた。
琉球王国最後の日、勝頼は見事な黒カジキを仕留めた。その際、実は近くの領主の家で刺身にして、皆と分け合い食べた。勝頼の醤油が大活躍したのは言うまでもない。
勝頼が琉球王国の人々に受け入れられた理由は、一年間の年貢免除を即位祝いとして実質したからだ。その分領主たちには銭で払うことを約束した。
又、源氏の血が王家に入っているらしく、元々源氏の名門であるが、源氏宗家筋の将軍足利義輝の猶子になっていることも効果があったようだ。
黒カジキのツノは磨かせた物を、勝頼が細工を彫って槍に設え、武術大会を開き優勝者への景品とした。
サーヤは今回は首里城に残ることとなったので、武田典厩信繁と真田昌幸にくれぐれも頼むと申し付けて城を後にした。
サーヤと葵の腕には赤珊瑚の銀の腕飾りがお揃いで光っていた。
勝頼が、姉、妹と慕い合う葵とサーヤの為に島一番の職人に作らせたのである。
別れ際、手紙を書くことと再会を誓いあって葵とサーヤは抱き合って泣いて別れを惜しんだ…勝頼も貰い泣きしそうになったのは内緒である。
勝頼たちはまずは薩摩の国を目指した。島津家久が密航のような形でこちらに来てしまった為、きちんと島津家と話をする必要があったからだ。
武田勝頼は島津家との話し合いに関して勝算があった。勝頼はにやりと笑う。
そして薩摩沖に武田水軍が現れる。島津家の家臣団は混乱状態に陥り大名たる島津貴久に報告する。
驚いた島津貴久は息子の島津義弘に手勢を率いさせ直ぐに港に向かわせる。
化け物の様な大型船には、武田菱に、毘の旗、そして足利将軍家の旗が翻っていた。
するとそこから小船が近付いてくる。白い布に墨で手書きをした島津家の家紋を掲げている。
船が近づいて相手の顔が見えるようになった時に、皆はそれが誰であるかわかった。弟の島津家久だったからである。
暫く行方不明になっていた弟が何故ここにと義弘は驚いた。そして生きていてくれて良かったと安堵する。
島津家久は、この度は我が主人が父上に会って話をしたがっていることを告げる。
島津義弘は、怒り狂いどこの馬の骨かもわからぬ者を父上に合わせる訳にはいかんと家久に怒鳴りつける。しかも我が主人がだと?何をふざけたことを抜かすと説明しようにも聞く耳をもたない。
「しかし…兄上、私の話を…」
まだ言うかと義弘は家久を殴り飛ばす。そしてお主の主人とやらをここへ連れてまいれ。この俺が直々に叩き切ってやるわ。と家久に蹴りを入れる。
すると「それには及ばん」と鋭い視線を向ける武田勝頼と上泉信綱、風魔葵と雑賀孫市と鉄砲を構えた雑賀衆が上陸して島津義弘を睨みつけていた。
「家久からその汚い足をどけろ」
何だと。義弘と兵達が襲い掛かろうとすると、鼓膜を突き破るような轟音がしたかと思うと近くの建物が吹き飛んだ。12ポンド砲を威嚇に一発撃ち込んだのである。
「私を叩き切ると言ったな。面白い、手合わせしてやる」
それを受けて面白いと島津義弘が刀を抜く。それに対して勝頼は毘沙門を発動させ覇気を放つ。
島津兵達は次々に膝をつく。しかし義弘はそれに怯まず切り掛かってくる。
「まるで猛獣だな」勝頼はそれを全て受け流すと返す刀で義弘の刀を弾くと義弘の首に刀の切っ先を突きつける。
「勝負あったな」
義弘はがくりと項垂れると、俺の負けだ…斬れと叫ぶ。
「やれやれ、其方を斬る為に来たのではない。話し合いに来たのだ」
勝頼が刀を収めると、義弘は「弟と話をさせてくれ」と言ってきたのでそれを許した。
冷静になり、島津家久から事情を聞いた島津義弘は段々と青ざめていった…まるで青鬼だ。
そして全ての事情を聞いた島津義弘は勝頼に土下座をして謝る。
「知らぬとは言え数々のご無礼お許し下され」
勝頼はにかりと笑うと、「よい。こちらこそ驚かせてすまなかった。して島津貴久殿の元に案内してくれるな?」
こうして勝頼達は島津貴久の元に案内されるのであった。
次回島津貴久との対面となります。




