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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第90話 騎士の裁きと、真実の証言者


「まずは、事情を聞かせてもらうのである!」


 声の主は、商国の兵士たちとユークたちの間に立ちふさがった、灰色の髪の老騎士だった。

 その堂々たる姿と鋭い眼差しに、場の空気が一変する。


「……なんだよ。こっちは当事者だ。帝国の騎士に説明する義理なんて、ねぇはずだぜ?」

 商国の兵士の一人が、不満をあらわにして老騎士に言い返す。

 その態度はどこか挑発的だった。


吾輩(わがはい)らは同じギルドガードに属する者同士。誰かが問題を起こせば、それは全体の信用に関わるのである。やましいことがないのなら、語るのを拒む理由もないであろう?」

 老騎士は腕を組み、静かだが威圧感のある声で応じた。


「チッ……実は、こいつらが――」


 兵士の口から出たのは、あまりに身勝手な言い分だった。

(この人たち、自分たちに都合のいいことばかり……)


「それは違います! 俺たちはそんなことやってません!」


 一歩前に出たユークは、落ち着いた口調で言い切った。だがその瞳には、怒りと強い意思がはっきりと宿っている。


 兵士たちは「黙っていろ」と言いたげな視線を向けてくる。怒りと苛立ち、そしてどこか焦りを感じさせる目だった。


 だがユークはひるまず、真っすぐに(にら)み返す。


「……(らち)が明かないであるな」


 老騎士は困ったように眉をしかめた。

 しばし思案ののち、周囲を見渡しながら口を開く。


「この騒動を最初から見ていた者はおらぬか?」


 彼の呼びかけに、集まっていた野次馬たちがざわめく。

 けれど、その多くは視線を()らし、沈黙を守っていた。

 しかし――。


「あっ、あのっ……俺、最初から見てました!」


 沈黙を破ったのは、群衆の中にいた若い男だった。

 その声は震えていたが、目は真剣だった。


「なっ……!」


 商国の兵士が鋭い視線で男を(にら)みつける。

 だがすぐに、帝国の兵士が男の前に立ちはだかり、その視線を(さえぎ)った。


「そっ、その……えっと……」


 (おび)えながらも、男は少しずつ見たままの事実を語りめる。そして彼の証言に続くように、周囲からも「俺も見た」「私も!」と次々に声があがった。


 男の話を聞くにつれて、老騎士の眉間に深いしわが寄り、顔がみるみる(けわ)しくなっていった。


「えーと、違うんスよ……ほら、戦士の(かん)っていうか……」

 商国の兵士のひとりがしどろもどろに言い訳を始めたが――。


「黙れ!!」

 老騎士の怒声(どせい)が響き渡った。

 その一喝(いっかつ)に、兵士たちは身体を固くして口を閉ざす。


「そこの婦女子を連れ込んで何をするつもりだったのであるか!? この件、吾輩より正式に商国へ抗議させてもらうのである!」

 怒気に満ちた声が響き、群衆から歓声が上がる。


「まっ、待ってくれ! そんなことされたら俺たちは……!」

「違う! 本気でそんなつもりじゃなくて……!」

「俺は知らない! 全部あいつらが勝手にやったんだ!」


 今さらになって慌てて口々に弁明(べんめい)を始める兵士たち。

 だが、それを許す余地はなかった。


退()け!」

 老騎士の一喝(いっかつ)と同時に、商国の兵士たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。


「災難だったであるな」

 老騎士は少しだけ表情を和らげ、ユークたちに目を向ける。


「……はい。ありがとうございます」

 ユークは礼を述べたが、どこか(くも)った顔だった。

 老騎士たちの鎧にも、何かを削り取ったような跡があったからだ。


「ユーク! 行こうっ!」

 セリスが彼の(そで)を引っ張りながら()かす。


「……ユーク? その名、聞き覚えがあるな。たしか、ギルドガードと共に誘拐犯の拠点を潰した探索者ではないか?」

 老騎士がふと思い出したように問いかけた。


「……え? はい、たぶん、そのユークですけど……」

 セリスに引っ張られながら、ユークは戸惑(とまど)いつつも答える。


「やはり、そうであったか。ダイアスから名前を聞いておる。吾輩は帝国……いや、ギルドガード所属のオライトである。困ったことがあれば、吾輩の名を出すと()い」

 そう告げると、オライトは部下に目配せしながら続けた。


「……さて、吾輩たちは巡回任務があるのでな」

 そう言い残し、彼は部下たちと共にその場を後にした。


「……なんだったんだろう」

 去っていく背中を見送りながら、ユークはぽつりと(つぶや)いた。


「たぶん、私たちに恩を売りたいんだと思うわ~。ダイアスさんから話を聞いて、それだけの価値がある探索者だって判断したんじゃないかしら」

 ヴィヴィアンが隣で静かに答える。


「言葉通りに受け取っていいと思うけど……あの人の名前を使うってことは、向こうはそれを“貸し”として覚えてるはず。だから、注意しなきゃだめよ?」


 そう続ける彼女の声に、ユークは小さくため息をついた。

 面倒な立場になってしまったと、思わず天を(あお)ぐ。


「これ以上ややこしいことになる前に、エウレさんの家へ行こう!」

 気持ちを切り替え、ユークはセリスとヴィヴィアンに声をかける。


 三人はまだざわめきの残る人混みをかき分けながら、目的地へと急いでいった。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.28)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

備考:あの人、ダイアスさんとどんな関係なんだろう……?

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セリス(LV.28)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

備考:うそばっかり言って……ほんと最低!

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ヴィヴィアン(LV.28)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

備考:あまり“借り”を作るのはよく無いんだけど、今回は助かったわ。

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

オライト(LV.??)

性別:男

ジョブ:??

スキル:??

備考:偶然ではあったが、ラッキーだったのである。

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