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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第42話 アウリンの秘密


「ユーク!」


 セリスが素早く槍で男の手を狙う。攻撃こそかわされたものの、ユークの拘束は解かれた。


「ゲホッ、ゴホッ……」

 ユークが咳き込む。


「大丈夫? ユーク!」


 セリスは心配そうに声をかけながらも、視線は男から()らさない。彼女は男を強く警戒していた。


「ほう……なかなかやるな」

 冷たい目をした男が自らの手を見やり、それからセリスに興味を向けた。


 そのとき、叫び声を聞いてアウリンとヴィヴィアンが家から飛び出してくる。


「っ! ダメだ、来るなアウリン!」

 ユークが叫んだ。


「来たか……」

 男がアウリンに目を向ける。


 その瞬間、アウリンは信じられないものを見たかのように後ずさった。


「な、なんでここに……」

 そして、男とアウリンの言葉が重なる。


「我が妹よ……」

「殿下……」


 二人の言葉を聞き、ユークとセリスが叫ぶ。


「妹!?」

「殿下!?」


 そのとき、ユークたちが来た方向とは反対側から新たな人物が現れた。


「坊っちゃん、いきなり走らないでください。老骨には少々こたえますので」


「殿下〜、置いてかないでください〜!」


 現れたのは、優しげな風貌(ふうぼう)の老人と若い女性だった。


「おや……」

 老人がユークに気づく。


「もしや、あなたがユーク殿では?」


「え……?……はい。俺がユークですが……」


「やはり。私はゴルド王国で剣術指南(けんじゅつしなん)(まか)されている、ジルバと申します」


 老人――ジルバは帽子を取り、(うやうや)しく自己紹介をした。


「こちらの者はシリカ。同じくゴルド王国の王宮でメイドをしておるものです」

 隣の女性を指して紹介する。


「シリカですぅ〜」

 シリカは小動物のようにおどおどとしながら、自分の名前を名乗った。


「どうか我々を、あなたがたの自宅に招いてはいただけませんでしょうか、ユーク殿」


 ジルバの優しげな表情の中に、鋭い眼光がひときわ光る。


「ちょっと待て! なんでそいつに聞く! アウリンに聞けばいいだろうが!」

 男がジルバに食ってかかる。


「坊っちゃん、ユーク殿はアウリン殿のパーティーのリーダーです。許可を求めるのであれば、まずユーク殿に伺うのが道理というものでは?」


 ジルバの眼光がさらに鋭さを増す。


「ちっ……!」

 男は舌打ちした。


「え〜っと……」

 ユークは困ったようにアウリンを見る。


「ごめんなさい、ユーク。家に入れてあげて」


 アウリンは大きくため息をつき、こめかみを押さえて、ひどく疲れた様子でそう頼んだ。




「……どうぞ」


 そう言って、玄関に立つ三人をリビングへと案内する。

 気まずい沈黙の中、全員がテーブルを囲んでイスに座る。


 部屋には重苦しい空気が立ち込めていた。


 疲れ切った様子のアウリン。

 ムスッとした表情の、"殿下"と呼ばれた男。

 そして、今もその男に敵意を向け続けるセリス。


 誰も口を開こうとしない中、最初に動いたのはセリスだった。


「……アウリン。こいつ、ユークの首を思いっきり締めた!」


「はぁっ!?」

 アウリンが目を見開き、驚きの声を上げる。


「ちょっと、どういうことなんですか、殿下!?」

 詰め寄るアウリンの勢いに、男はたじろぎながらも両手を上げる。


「ま、待て! これは、ちゃんとした事情があるんだ!」


「事情? どんな?」

 アウリンが責めるような表情で男を睨む。


「……可愛い妹が、毎晩こいつと……盛ってると思ったら、どうにもムカついてきてしまったんだよ!」

 逆ギレ気味に叫ぶ殿下と呼ばれた男。


「なっ……! 盛ってるって、そ、そんなことしてないわよ!」

 アウリンが顔を真っ赤にして否定する。


「なにっ? 男女が一つ屋根の下で暮らしてたら、やることは一つじゃないのか?」

 男は視線をシリカに向ける。


「そっ、そんなこと私に聞かれても〜!」

 シリカはぶんぶんと首を振り、全力で否定した。


 続いて男はヴィヴィアンの方を向いた。

「少なくともまだ、アウリンちゃんとユーク君は、そういう関係ではないわね〜」


 ヴィヴィアンは頬に手を当てて、柔らかく答える。


「……そうか。すまん、ユークとやら。どうやら俺の勘違いだったようだ。許せ」


 男はしばらく考え込んだ後、ユークの方に向き直り、頭を下げることもなく謝罪した。


「なっ! そんなことで――!」

 セリスが立ち上がりかけたところで、


「申し訳ありません、ユーク殿。私からも謝らせていただきます。どうか、お許しいただけないでしょうか」

 ジルバが深々と頭を下げた。


「あわわわ……」

 それを見たシリカが、なぜかひどく慌てている。


「あっ、頭を上げてください。俺、もともと怒ってなんかないですから……」


 ここまでされては、ユークとしてもそう言うしかなかった。

 そしてユークがそう言ってしまえば、セリスもそれ以上は強く出られない。


「むぅ……」

 セリスは不満げに(うな)りながら、黙り込んだ。


 重くなりかけた空気を変えようと、ユークは無理にでも話題を切り替える。


「とっ、ところで……あなた、一体誰なんですか?」


 その問いに、男は突然得意げに胸を張った。


「そうか、まだ名乗っていなかったな! 俺の名はジオード・ゴルド! ゴルド王国の第三王子だ!」


 胸に手を当ててキザなポーズを決めるジオード。


「違います。今の坊っちゃんは、ただのジオードです」

 すかさずジルバが訂正する。


「おっと、すまん。……訂正する。ただのジオードだ」


 そのやり取りを聞いたユークは、唖然とした顔でつぶやいた。


「王子……様?」


 そして隣のセリスが驚きの声を上げる。


「えっ!? ってことは、アウリンは……王女様ってこと?」


「違うわ!」

「そのとおりだ!」


 アウリンとジオードの声が、同時に部屋に響き渡った。


 ◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.20)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

備考:頭が混乱している。

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.20)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

備考:嫌な奴。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.20)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

備考:面倒な人が来てしまった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.20)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

備考:何で来たのかしら?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ジオード(LV.??)

性別:男

ジョブ:??

スキル:??

備考:アウリンへの愛情は家族愛であって異性愛ではない。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ジルバ(LV.??)

性別:男

ジョブ:??

スキル:??

備考:後でユーク殿には殿下が迷惑をかけたお詫びをしなくては……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

シリカ(LV.??)

性別:女

ジョブ:??

スキル:??

備考:また殿下が面倒をおこしてる……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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