表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

191/192

第188話 テルルの頼み


「さて、じゃあ行こうか」

 テルルとのやり取りで気まずかった空気を一新するように、ユークが明るい声で仲間たちに言った。


「ええ!」

「うん!」

「分かったわ!」

「うむ!」

 それぞれの返事が重なり、一行はギルドへと向かう。


 道中、ユークはふと違和感を覚えた。


(いつもより、やけに人が少ないな……)

 普段は賢者の塔へ向かう探索者で賑わっている大通りも、今日はまばらだ。


(なんだか、嫌な予感がするな……)

 ユークは漠然とした不安を胸に、ギルドの扉を開いた。


「うわっ……」

 ユークは思わず声を漏らす。


 いつもは落ち着いている受付周りが、人であふれ返っていた。壁際のソファには座りきれず、床に腰を下ろしている探索者の姿まである。


(こっちは逆に混んでる……何があったんだ?)

 ユークは不思議に思いながら、人混みをかき分けるようにして受付に向かう。


 セリスたちが後からついてくる気配を感じながら、ようやく受付嬢の前にたどり着いた。


「すみません、この前の依頼の報酬がいつ頃になるか、確認したいんですけど」

 ユークはそう言いながら、探索者カードを受付に出した。


「はい、ユーク様のパーティーですね。少々お待ちください」

 受付嬢はにこやかに頭を下げ、奥へと引っ込んだ。その間も、ギルド内は尋常ではない喧騒に包まれている。


「お待たせしました」

 しばらくして受付嬢が戻り、にこりと笑った。


「はい、ユーク様のパーティーですね。ダイアス隊長から伺っておりますので、明日にはお渡しできるかと思います」


「おぉ〜!」

 ユークたちから驚きの声が漏れる。


(ダイアスさん、ちゃんと伝えておいてくれたんだ……)

 ユークは心のなかでダイアスに深く感謝した。


「よかったじゃない」

 アウリンが嬉しそうに言い、ユークも安堵の笑みを返した。


「これで予定を変えなくて済みそうね」

 ヴィヴィアンが小さく安堵の声を漏らす。


「あと、もう一つお願いがあるんですが……能力の鑑定をお願いできますか?」

 ユークがそう告げると、受付嬢は奥の部屋を指し示した。


「はい。では奥の部屋へどうぞ」

 ユークたちは案内に従い、鑑定のため奥の部屋へと進んでいった。。


 ◆ ◆ ◆


 鑑定を終えたユークたちは、新しい探索者カードが発行されるのを待つため、壁際に身を寄せた。


「テーブルは全部埋まってるみたいだね」

 ユークが周囲を見回しながら呟く。


「仕方ないわね。この待ちましょう……」

 アウリンが小さく息を吐いた。


「ユーク様のカードができました! 受付までお願いします!」

 しばらくして、受付嬢の声が響く。


「じゃあ、俺が行ってくる」

 ユークは立ち上がり、受付へと向かった。


「こちらが新しいカードです」

 受付嬢は笑顔で、ユークに四人分の新しい探索者カードを手渡した。


「ありがとうございます」

 ユークは礼を述べ、仲間たちのもとへ戻る。


「もらってきたよ!」

 彼がカードを広げると、皆がそれぞれのカードを手に取った。


「お帰り!」

「それが新しいカード?」

「新しいカード、楽しみだわ〜」

「ワシはこの身体になってから初めてじゃな」

 声が弾み、ユークも自分のカードに視線を落とす。


 そこには、新たな情報が記されていた。


(LV.33 → LV.44)

 ≪リミット・ブレイカー≫……自身の全能力を30秒間だけ《《500%》》まで引き上げる究極の自己強化スキル。ただし、発動後は24時間“ジョブ”の機能が停止する。


「うん。レベルが上がったのと、スキルが強化されたみたいだ」

 ユークがカードを見ながら言った。


「みんなはどうだった?」

 ユークが尋ねると、仲間たちから次々と声が上がった。


「私もレベルが上がってる! EXスキルは身体能力を上昇させる鎧を召喚だって!」

 セリスが言う。肉スライムとの戦いで使っていたものだろう。


「私もレベルが上がったわ。EXスキルは時間の経過とともに魔法の威力を最大200%まで高めるみたい。……限界があったのね。あの時、ちょっと無駄にしてたかもしれないわ」

 アウリンは反省を込めて呟く。


「私のは『盾と連動して魔法障壁を発生させる』ってだけ。……でももっと色々できる気がするのよね」

 ヴィヴィアンがカードを眺めて首をかしげる。実際、彼女は障壁を繋げて巨大な壁を作っていた。


「ワシは特に変わらんな……」

 テルルが肩をすくめる。


 こうして新しい探索者カードを受け取ったユークたちは、ギルドを後にした。


「さて、ここでの用事は済んだし、次はどうする?」

 ユークが仲間に問いかける。


「まだ挨拶をしていないのは誰だったかしら〜?」

 ヴィヴィアンがのんびりと答える。


「ラピスたちには帰りの馬車で済ませたから……」

 アウリンが記憶をたどるように言った。


「じゃあ、残ってるのはエウレさんだけかな」

「そうね……」

 アウリンは少し考え込む。


「エウレさんの所へは明日にして、今日は一度、家に戻らない?」

 アウリンの提案に、ユークは首をかしげた。


「どうして? 今日行ってもいいと思うけど」


「……私たちには家でやりたいことがあるのよ」

 アウリンは小さくため息をつく。


「それに、まだ安心できないでしょう? 前みたいに、あなたのことが狙われたら困るもの。エウレさんに会うにしても、ユークとヴィヴィアンの二人だけで行かせるのは正直不安なの」

 その言葉にユークははっとした。アウリンの言うのは、あのヘリオ博士に攫われた時のことだ。


 その言葉に、ユークははっとした。アウリンが言っているのは、自分がヘリオ博士に攫われた時のことだ。


「そっか……分かった。じゃあ今日は帰ろう」


 皆で家に戻り、ユークとヴィヴィアンはそれぞれの部屋へ向かった。

 一方、アウリンはセリスとテルルに声をかけ、自分の工房へと誘う。


「適当なとこに座って」

 工房の中はすでに荷造りが進んでおり、いくつもの箱が積み上げられていた。セリスとテルルは椅子に腰を下ろす。


「それで、師匠。私たちに話っていうのは?」

 アウリンが向かいに座り、真剣な眼差しを向ける。


「ヴィヴィアンは……あの子はユークのことが好きなんじゃと、ワシは思っておる」

 テルルが口を開いた瞬間、アウリンとセリスはわずかに息をのんだ。


 彼女の言葉は、確信を持ってそう断言しているように聞こえた。


「それは……本当にそうなの?」

 アウリンが問い返す。彼女も薄々気づいてはいた。けれど、それが尊敬なのか友情なのか、あるいは恋愛感情なのか、判断できなかったのだ。


 だからこそ、ヴィヴィアン自身が行動を起こすまで見守ろうと考えていたのだ。


「おそらく間違いない。だがあの子は自分に自信が無くて、ユークに想いを伝えられずにおる。それを、なんとかしてやりたいのじゃ」

 テルルはそう言い、深く頭を下げた。


「そのために……今夜、ユークとの情事の順番をワシら二人に譲ってはくれぬか?」


 アウリンとセリスは顔を見合わせ、言葉を失った。テルルがそこまで真剣に考えていることに、驚きを隠せなかった。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.44)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:≪リミット・ブレイカー≫の効果が「最大300%上昇」から「最大500%上昇」へアップした。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.42)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

EXスキル2:≪ブーステッドギア≫

備考:ブーステッドギアは、装着者の身体能力を大幅に向上させる鎧を召喚する能力。しかし、一度装着すると30分が限界で、その後は再度使用可能になるまで12時間のクールタイムを必要とする。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.43)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

EXスキル2:≪コンセントレイション≫

備考:威力が最大になるのは三十秒ほどチャージした後。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.42)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫

備考:状況については何も知らされていない。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.34)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:氷威力上昇

備考:年の功もあり、人の内心や状況を見抜くのが得意。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ