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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第187話 テルルの隠し事と神の絵筆


「えっ!? それって重要なものじゃないの? 勝手に持ってきていいの??」

 セリスの驚きの声が、静まり返ったリビングに響き渡る。


「良くはない」

 即座に返したのはテルルだった。彼女の声音は冷静で、真剣な表情でセリスを見た。


「じゃがな、このアーティファクト(古代魔道具)を使えば……ヘリオ博士が造り出したような改造人間を、誰でもいくらでも生み出せてしまうのじゃ」

 テルルは手にしていた魔道具を弄びながら言葉を続ける。


「コレはあまりにも強力すぎる。もし大国の手に渡れば、それこそ戦争の火種になりかねん。だから、ワシが回収したのじゃ。誰の手にも渡らぬようにな」

 『神の絵筆』を顔の前まで持ってきて語るテルル。その瞳には確固たる決意が宿っていた。


「そう、だったのか……」

 ユークは感心したように頷き、真剣な表情でテルルを見つめる。


「そっか……そんなことまで考えてたんだ……」

 セリスも両手で口を覆い、尊敬の眼差しをテルルに向けた。


 だが、アウリンとヴィヴィアンの二人は熱弁を振るうテルルに冷めた視線を向けていた。


「ねえ、師匠。本当にそれだけなの? 本当は自分が欲しかったんじゃないの?」

 アウリンが疑いを込めた声を投げかける。


「何を言っておる! そんなわけないじゃろう!」

 テルルは胸を張って大げさに頷き、笑みを浮かべる。


「おじいちゃん。それなら、いっそ壊してしまえばいいんじゃないかしら?」

 すると、ヴィヴィアンがにこやかに口を開いた。


「えっ?」

 テルルの顔が一瞬で固まる。


「あ、確かに……!」

 ユークが納得したように呟いた。


「壊しちゃえば、絶対に悪用もされないもんね!」

 セリスも明るく賛同する。


「ま、待て待て! これは学術的にも大変価値のある代物でな! そう簡単に壊すなど……」

 テルルは慌てて早口でまくし立てるが、その額にはじっとりと汗がにじんでいた。


「師匠」

 アウリンがため息をつき、じっと師匠を見据える。


「な、なんじゃ!?」

 滝のように汗を流しながら視線を向けるテルル。


「本当のことを言ってくださいって、約束しましたよね?」

 アウリンは首を傾げながら笑顔を見せる。しかし、その笑顔には明らかな圧がこもっていた。


「うっ……」

 テルルはその視線に完全に押され、観念したように肩を落とした。


「すまぬ……正直に言うと、ちょっと……いや、かなり欲しかったんじゃ……」

 ようやく白状したテルルの言葉に、一同は呆れてものも言えない。


「もう……師匠は本当に……」

 アウリンは額に手を当て、深く息を吐いた。


「まあまあ。でも、この『神の絵筆』をどうするか決めないと」

 ユークは苦笑しつつ、なんとか場を和ませようとした。


「俺たちが持っていると知られたら、狙われる可能性が高い」

 両肘をテーブルにつき、顔を覆ってため息をつくユーク。


「そうね……でも、今さら手放すわけにもいかないわ」

 アウリンが疲れた表情で応じる。


「だったら、やっぱり壊しちゃうのが一番だと思うのよね~」

 ヴィヴィアンがのんびりした調子で提案する。


「でもこれは国を相手に交渉できるくらいの希少品よ? 持っていれば、何かあった時の切り札にも使えるかもしれない……」

 アウリンが反論する。


「けど……なんで持ってるのか聞かれたらまずいんじゃないの?」

 セリスが不安を口にする


「“倒した相手が所持していたものは討伐者のもの”って取り決めがあるでしょ? ヘリオ博士を倒したのは私たち。だから、一応は私たちのものだって主張できなくもないわ」

 アウリンは腕を組み、そう言い切った。


「……だったら、私たちで持っていた方が良いのかしら……?」

 ヴィヴィアンはテルルの顔をちらりと見て、悩みながら言った。


「なら、しばらくは俺たちで管理するしかないな……」

 ユークは小さくため息をついて結論を出した。


「うむ、そういうことじゃな!」

 テルルは真剣な顔でうなずく。


「師匠は反省してください!」

 アウリンが容赦なく叱りつける。


「う……すまん」

 テルルは肩を落とし、しゅんとした表情を浮かべる。その姿はまるで叱られた子どものようだった。


 こうして一行は、どこか気まずい空気のまま朝食を終えることになった。


「じゃあ、準備ができたらギルドに行こう」

 ユークの一言で場の雰囲気が切り替わり、皆はそれぞれ荷物をまとめ始める。


「そういえば……」

 そのとき、テルルがふと思い出したように声を上げた。


「アウリン、セリス。あとでヴィヴィアンのことについて話があるんじゃが、よいかの?」

 真剣な表情でヴィヴィアンを見つめるテルル。


「ええ、私は良いですけど……」

「どうしたの? 何か相談?」

 その様子に、アウリンとセリスは思わず顔を見合わせるのだった。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.44)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:テルルの手癖に呆れながらも、場をまとめる役目を意識していた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.42)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

EXスキル2:≪ブーステッドギア≫

備考:話を聞いて尊敬しかけたが、一瞬で地に落ちた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.43)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

EXスキル2:≪コンセントレイション≫

備考:あとで『神の絵筆』を調べる時は、自分も絶対に同席しようと考えている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.42)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫

備考:祖父に振り回された幼少期を思い出し、苦笑していた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.34)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:氷威力上昇

備考:どうしても欲しかったので、戦闘後必死に探し回っていた。

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