第186話 朝食と新たな仲間
翌朝。
窓から差し込む柔らかな光が、木製のテーブルに並べられた朝食を照らしていた。
山盛りのパン、香ばしいベーコンの匂い、そして温かなスープの湯気。その光景は、昨日の騒動で張り詰めていたユークたちの心を、少しずつ解きほぐしていく。
「いただきまーす!」
明るい声をあげたのはセリスだった。
テーブルを囲むのはユーク、アウリン、セリス、ヴィヴィアン。
そしてもう一人。アウリンの師匠であり、ヴィヴィアンの祖父でもあるテルルの姿もあった。
「……うまい。こんなスープを口にするのは、本当に久しぶりじゃ……」
数か月にわたり信奉者やヘリオ博士に監禁されていたテルルは、両手で器を抱えるように持ち、ひと口ごとに噛みしめるように味わっている。
目には涙が浮かび、胸の奥からこみ上げるものを抑えきれていないようだった。
「おじいちゃんが無事で、本当によかったわ」
ヴィヴィアンはそっと微笑む。
「うむ、ワシもお前たちに再びあえて嬉しい」
その言葉にテルルは小さく頷き、深く息を吐いた。
その表情には安堵と同時に、言葉にできない不安も滲んでいた。
彼女は行く当てもなく、金も持っていなかったため、ユークたちの家で一晩を過ごすことになったのだ。
食事が進む中、テルルはそっとワンピースのポケットに触れる。
「ユークよ……。ひとつ、頼みがあるんじゃ」
真剣な表情でユークたちを見据えながら言う。
「なに?」
ユークはパンを皿に置き、テルルに向き直った。
「わしを……お主たちのパーティーに入れてはくれぬか?」
頭を下げるテルル。唐突すぎる申し出に、ユークは一瞬言葉を失う。
「えっと……どうする? 俺は別に構わないと思うけど……」
ユークは仲間たちに視線を送った。
「私は賛成よ。師匠なら、きっと私たちの力になってくれるわ!」
アウリンは微笑みながら静かに頷いた。
「私からもお願い、ユーク君。おじいちゃんは今、私たちしか頼れる人がいないと思うの……」
ヴィヴィアンの声は切実だった。
「ユークがいいなら、私もいいよ」
セリスはパンを頬張りながら、あっさりと答える。
「じゃあ……別にいいけど。ただ、五日後には街を出てゴルド王国に行く予定だからね?」
ユークが念のため釘を刺す。
「構わん! むしろ、それは好都合かもしれん」
テルルは笑みを浮かべて答えたが、その言葉にアウリンが怪訝そうに眉をひそめる。
「師匠、その言葉……なにかあるの?」
鋭い視線がテルルに突き刺ささった。
「な、何がじゃ!?」
テルルは顔を引きつらせ、額に汗をにじませる。
「師匠、何か隠してるなら言ってちょうだい。このまま言わないつもりならパーティー入りの話は無しよ」
アウリンは冷たい声で言い放った。
「え、ちょっと待って。それは厳しすぎない……?」
ユークが困惑する。
「そ、そうよ。アウリンちゃん」
ヴィヴィアンも口を挟むが、アウリンはテルルを見据えたまま視線を外さない。
その圧に耐えられなかったのか、テルルはやがて肩を落とし、観念したように息を吐いた。
「……分かった。実はな、これを拾ってしまったのじゃ」
そう言ってポケットから取り出したのは、小さな棒状の魔道具だった。
「これは……?」
ヴィヴィアンが首を傾げる。
「何これ? 先が尖ってる!」
セリスは目を輝かせ、好奇心を隠さなかった。
(なんだろう、どこかで見たことがあるような……)
ユークはじっと魔道具を観察する。
「あ! これ、ひょっとしてヘリオ博士が使っていた……!」
ユークの言葉に、アウリンの表情が一変する。
「まさか……! 師匠! それ、持ってきちゃったの!?」
「え? アウリン、知ってるの?」
セリスが問いかける。
「ええ。これはヘリオ博士が持っていた魔道具だったと思うわ。名前は確か――」
アウリンが深刻な表情で答える。
「うむ。これは『神の絵筆』。魂に情報を書き込むことができるアーティファクトじゃ!」
テルルは手にしたそれを、高く掲げてみせた。
「えっ!? それって重要なものじゃないの? 勝手に持ってきていいの??」
セリスの驚きの声が、静まり返ったリビングに響き渡った。
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ユーク(LV.44)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫
備考:昨日は疲れていたため、家に帰るなりそのまま眠ってしまった。
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セリス(LV.42)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
EXスキル:≪タクティカルサイト≫
EXスキル2:≪ブーステッドギア≫
備考:ユークのベッドに潜り込んで一緒に眠り、翌朝ユークを驚かせた。
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アウリン(LV.43)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫
EXスキル2:≪コンセントレイション≫
備考:帰宅後、皆がすぐに眠ってしまったため、自室に戻りギルド提出用の報告書を軽くまとめてから休んだ。
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ヴィヴィアン(LV.42)
性別:女
ジョブ:騎士
スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)
EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫
EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫
備考:寝る前に鎧の整備をしようとしたが、ほとんど劣化が見られず驚いた。
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テルル(LV.34)
性別:男(女)
ジョブ:氷術士
スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)
EXスキル:氷威力上昇
備考:夕食を楽しみにしていたが、皆が先に眠ってしまったため、仕方なく就寝した。
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