表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

186/192

第183話 休憩と訪問者たち


「やっと倒したー!」

 セリスが両手を高く上げて、元気いっぱいに声を張り上げた。


「ふぅ……本当に疲れた。ねぇみんな、少し休憩しない?」

 ユークが仲間たちに視線を向けて問いかける。


「そうね。でも、まずはここを離れましょうか」

 アウリンが辺りを見回しながら答えた。


 ユークたちが立っている場所は、肉スライムとの戦いの余韻が色濃く残っている場所だった。

 床は焼け焦げて所々が盛り上がり、金属が焼けたような焦げ臭さが漂っている。


「じゃあ、壁沿いに歩いて落ち着けそうな場所を探そうか」

 ユークの提案に、仲間たちはうなずき一列になって歩き始めた。


「兵士の人たちも大変ね……この後もたくさんお仕事があるんだもの」

 ヴィヴィアンが視線を向けた先には、壊れた魔道具や散乱した研究資料を仕分けている兵士たちの姿があった。


「そうね。あれだけの数があると、調べ終わるまで 一体どれくらいかかるか見当もつかないわ」

 アウリンが同意するように言葉を添える。


「うわぁ……見るだけで嫌になりそう」

 ユークが顔をしかめると、アウリンが肩をすくめて笑った。


「安心して。私たちはギルドとの契約で、敵を倒したときの戦利品以外はすべてギルドのものって決まってるの。だから、あの作業にどれだけ時間がかかっても私たちには関係ないわ」


「それはそれで勿体なく感じちゃうな……」

 ユークは複雑な表情を浮かべながら、山のように積まれた魔道具へと視線を向けた。

 あの膨大な数の品々がどれほどの価値を持つのか――考えるだけで、思わずため息が漏れそうになる。


「ねえねえ! ここらへんでいいんじゃないー?」

 先を歩いていたセリスが手を振りながら飛び跳ねてみせた。


 そこは魔道具の設置も少なく、戦場から程よく離れているため臭いも届かない。休憩にはちょうど良さそうな場所だった。


「ふぅ、やっと腰を下ろせる……」

 ユークは金属の床にどさりと腰を下ろす。冷たい感触が熱を帯びた身体に心地よく、疲労が一気に押し寄せてくる。


「ねー?」

 セリスが背後から抱きついてくる。鎧を外しているのか、彼女の柔らかな胸の感触が背中に触れた。


 ユークは思わず身体を強張らせる。何度も夜を共に過ごした仲であっても、この無邪気なスキンシップにはどうしても慣れなかった。


「もう、お行儀が悪いわよ!」

 アウリンがたしなめながらユークの隣に腰を下ろし、そっと肩を寄せてくる。


 その様子をヴィヴィアンは少し寂しそうに見つめていた。


(いいなぁ……。私も、ああしてユーク君に甘えられたら……)


 彼女は鎧に包まれた自分の身体を見下ろす。その厚い金属の鎧よりもずっと重い見えない壁が、ユークとの間にあるように思えてならなかった。


 そこに、どこかに行っていたのかテルルが戻ってくる。


「おぬしらの場所を探している者たちがいたから、ここを教えておいたぞ」

 そう言ってヴィヴィアンの隣に立つテルル。


「どうした? 一緒に混ざらんのか?」

 テルルは彼女の視線の意味を察したのか、率直に問いかける。部外者である彼の目から見ても、ヴィヴィアンがユークに好意を抱いているのは明らかだった。


「その……私はこうだから……」

 ヴィヴィアンは自分の鎧に触れながら小さく答える。


「そんなの脱げばええじゃろうが……」

 テルルは呆れ顔を向けるが、彼女自身が心を閉ざしているせいで、ユークたちも手を出せずにいるように見えた。


「でも……私なんかがユーク君に抱きついたら迷惑だと思うの……」

 ヴィヴィアンは視線を伏せてため息をつく。


「う〜ん。これはワシがなんとかせんと、いかんかもしれんな……」

 テルルは険しい顔で腕を組んだ。引っ込み思案な孫の心を開かせるには、もう荒療治しかないかもしれない。


(今はワシ自身が女になってしまっておるしな。まあ、やりようはいくらでもあるか……)

 そう心の中でつぶやきながら、テルルはいちゃつく三人を眺めていた。


「おお! 探しておったのである、探索者ユーク!」

 休憩している一行のもとに、帝国の騎士オライトが姿を現した。


「え? あっ、はい!」

 ユークは慌てて立ち上がる。


「今回の戦い、ご苦労であった」

 ユークをねぎらってくるオライト。


「いえ……オライトさまこそ、いろいろと協力していただいて助かりました」

 ユークが頭を下げる。


「なに、あんなものをほおってはおけぬからな。まあ、あの肉塊がヘリオ博士だとは思わなかったのであるが……」

 少し落ち込んだ様子のオライト。


「えーっと。何かご用だったのでは?」

 ユークが問いかけると、オライトはすぐに表情を引き締めた。


「おお! そうであった。道中無傷で内部だけ破壊されたミスリルゴーレムがあったであろう? あれをやったのがお主らのパーティーだと聞いてな」

 オライトが顎に手を添え、確認するように視線を向けてきた。


「はい、確かに俺たちが倒したやつですけど」

 ユークは姿勢を正し、落ち着いた声で答える。


「あれを帝国で買い取りたいのである。価格はギルド査定の二割増しでどうか」

 オライトは一歩前に出て、堂々と提案を告げた。


「えっと……」

 ユークは隣に目をやる。アウリンが小さく頷いた。


「……分かりました それで大丈夫です」

 オライトの言葉に頷くユーク。


「そうか! うむ、感謝するのである!」

 オライトは満足げに頷くと、部下と共に去っていった。


 ユークはホッと息をつく。


 しかし、安堵したのもつかの間だった。新たな人影が、ユークたちのいる場所へと向かってくるのが見えた。


「ユーク殿。ヘリオ博士を始末してくれたようだな、まずは感謝させてくれ」


 姿を現したのは王国の女騎士ルチルだった。彼女の言葉に、ユークは思わず顔をこわばらせた。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.44)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:ヴィヴィアンの想いを友情や仲間意識だと勘違いしている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.42)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

EXスキル2:≪ブーステッドギア≫

備考:ヴィヴィアンがユークを好きなのではと感じているが、自分がユークと過ごす時間が減るのは嫌なので黙っている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.43)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

EXスキル2:≪コンセントレイション≫

備考:ヴィヴィアンがユークを気にしていることに気づいているが、本人が何も言わない以上、勝手に何かやるのも違うと思い、黙っている。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.42)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫

備考:彼女がうだうだと悩んでいるだけで、実際には「恋人にしてほしい」と伝えれば大体解決する。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.23)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:氷威力上昇

備考:色々とこっそり探し回っているうちに、うっかり天蓋の壁に触れてしまい、手首から先が消えてしまって、すごい焦った。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ