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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第181話 唯一の希望


「――《ライトニングランス》!」

 轟音(ごうおん)と共に雷鳴の槍が大気を裂いた。(いかづち)の槍は(まぶし)く輝き、瞬く間に周囲を白く染め上げる。


「なっ!……すごい大きい……!」

 傍らで見ていたヴィヴィアンが、思わず声を上げた。


 雷鳴の槍は肉スライムへ直撃し、そこから奔流のように雷撃が四方へ広がる。

 雷を浴びた肉体は黒く焦げ、()けただれて崩れ落ちていった。


「信じられん……。なんという破壊力じゃ……」

 テルルが肩を震わせながら呟く。


 やがて雷光が消え、視界が戻る。そこには全身を炭化させ、崩壊していく肉スライムの残骸が横たわっていた。


「どう? この威力、すごいでしょ?」

 胸を張り、自慢げにアウリンが振り返る。


 だが――。


「まだじゃ! 奴は死んでおらん!」

 テルルが鋭い声で叫んだ。


 崩れ落ちた灰の中から、ごく小さな肉片が(うごめ)いている。指先ほどの大きさしかないそれが、不気味に跳ねた。


「ちょっと待ってよ! 完全に焼き尽くしたはずよ!?」

 アウリンが焦り、灰の山に目を凝らす。


 次の瞬間、その肉片は小動物ほどの大きさにまで膨れ上がり、ずるりと動き出した。


「なんで……どういうことなの……!」

 アウリンが叫ぶ。


 テルルは深く息を吐き、仲間に向かって説明を始めた。


「ヘリオ博士は無数の魂を取り込み、その魔力を己のものとしておった。だが博士が死んだことで抑えが外れ、魂が暴走を始めたのじゃ。その結果、肉体は意思なき肉塊となり、多数の魂が生み出す魔力が、奴の命を繋ぎとめておるのじゃろう」

 テルルの目が鋭く細められる。


「……え~っと一体、どういうこと?」

 ヴィヴィアンが不安げに尋ねる。


「奴は魔力が尽きぬ限り死なぬ。そして複数の魂が生み出す魔力は尽きることがない。つまり――不滅じゃ」


「不滅……」

 アウリンの顔が青ざめる。


「さらに魔力がある限り、肉体は増殖を続ける。このままでは無限に巨大化していくかもしれん」

 テルルの言葉に、場の空気が重く沈む。


 見る間に、肉スライムはさらに肥大し、小動物から獣に近い大きさへと成長していた。


「そんな……!」

 ユークとヴィヴィアンが同時に息を呑む。


「対処法はあるの?」

 アウリンが端的に問う。


「魂は肉体あってこそ魔力を生む。完全に肉体を消し去るか、絶えず攻撃を加えて肉体を減らし続けるしかないじゃろうな……」

 テルルが答える。


「消滅なんて無理よ! 私のEXスキルイグニス・レギス・ソリスでも無理だったのよ? そんな強力な魔法、存在するわけないじゃない!」

 アウリンが声を荒げる。


「ならば、対処療法しかあるまい」

 テルルは苦々しく答えた。


「アウリン、とりあえず『ライトニングアロー』で攻撃してみてくれ。どれほど削れるか確かめたい」

 ユークが指示を出す。


「分かったわ。――《コンセントレイション》」

 アウリンがEXスキルを発動し、詠唱を始めた。


「《ライトニングアロー》!」


 放たれた雷の矢が肉スライムを撃ち抜く。眩い光と共に焼き尽くされた――ように見えた。


「なっ……どうして!?」

 アウリンの目が見開かれる。


 肉スライムは傷一つ負っていない。彼女の強化された魔法を受けても、まるで何もなかったかのように蠢いている。


「どうして……? EXスキル(コンセントレイション)で強化した魔法よ? 中級魔法以上の威力はあったはずなのに……!」

 アウリンは悔しさに奥歯を噛みしめる。


「……やつめ、受けた攻撃の耐性を身につけておるのかもしれん」

 テルルが低く呟く。


「それじゃ……テルルが言った『攻撃し続けて減らす』方法は……」

 ユークが不安げに視線を向ける。


「無理……じゃな」

 テルルは苦々しく首を振った。


「でも待って。魂の魔力で体を大きくするなら、中にある魂の数以上には成長できないんじゃないかしら?」

 アウリンが食い下がる。


「わしもそう思ったが……奴は人間を喰おうとした。肉体を維持するのに食事など不要のはずじゃ。それでも狙ったのは――人間の魂を取り込むためじゃろう」

 テルルが目を伏せる。


「……つまり?」

 ユークが問いかける。


「奴は人間の魂を取り込み、際限なく巨大化を続ける。新種のモンスターとなってしまったのじゃ」

 テルルの言葉に、仲間たちは息を呑み、言葉を失った。


 ユークの脳裏に、街を覆い尽くすほどに巨大化した肉スライムの姿がよぎる。

(何とかしなきゃ……あいつを止めなきゃ、世界が飲み込まれる……!)


 必死に頭を回転させるユークの視線が、仲間たちを捉える。アウリン、ヴィヴィアン、助けた兵士を抱えて駆け寄ってくるセリス、そして腕を組むテルル。


(……そうだ。アレなら……! ヴィヴィアンのアレなら、あの怪物を何とか出来るかもしれない……!)


 ユークは顔を上げ、決意を込めて声を放った。


「みんな、俺に考えがあるんだ! どうか聞いてほしい!」


 その声には、この絶望を打ち破る唯一の希望が宿っていた。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.42)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:私にいい考えがある!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.40)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

EXスキル2:≪ブーステッドギア≫

備考:置いていくのもアレなので、助けた兵士を連れて移動中。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.41)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

EXスキル2:≪コンセントレイション≫

備考:さすがにこれは、どうにもならないと思うわ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.40)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫

備考:何とかしたいと思うがなにも思いつかない。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.19)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:氷威力上昇

備考:何をするにしても、耐性を得てしまう性質が邪魔すぎる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

肉スライム(LV.??)

性別:??

ジョブ:??

スキル:??

備考:HPを0にしても自動的に「食いしばり」が発動し、さらに倒してもまた別の「食いしばり」が起こる。無限に蘇生し続けるため、事実上不死。

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