表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

183/193

第180話 戦いの後に


 戦いを終え、ユークたちは荒い息を整えながら、その場で一息ついていた。


「ユークくーん! みんなー!」

 鎧を揺らしながら駆け寄ってくる影があった。兜を外したヴィヴィアンが、大きく手を振っている。


「ごめんなさい……。私、肝心な時に役に立てなくて……」

 申し訳なさそうに眉を下げる彼女は、小さくうなだれていた。


「そんなことないわ。あなたがいたから、博士の一撃を防げたんじゃない!」

 アウリンが笑顔を向けると、ヴィヴィアンの肩がわずかに震える。


「うん。みんな無事だったんだし、気にすることないと思う!」

 セリスも優しく頷きかける。


「ありがとう、ヴィヴィアン。俺たちを守ってくれて」

 ユークがまっすぐにそう告げると、ヴィヴィアンの目に涙が浮かんだ。


「みんな……」

 その場にしゃがみ込み、彼女は小さく嗚咽をもらした。ユークたちはそっと近寄り、彼女を抱きしめる。仲間としての絆が、確かにそこにあった。


「……それにしても。ヘリオ博士は、どうしてあんなことをしたのかしら……」

 涙を拭ったヴィヴィアンが、残骸を見つめながら小さく呟く。


「英雄になりたいって、言ってたわ」

 アウリンが肩をすくめて答えた。


「英雄? そんなの……やってることが逆じゃない……」

 驚きに目を見開くヴィヴィアン。


「知らないわよ。博士が自分でそう言ってたんだから」

 アウリンは不満げにそっぽを向いた。


「英雄、か……」

 ユークはふと、酔ったカルミアが「俺は将来英雄になる」と豪語していたことを思い出す。


「俺には分からない。なんでそんなもののために、全部を壊してしまうんだろう……」

 悲しげに呟く彼に、思わぬ声が重なった。


「……私は、ちょっと分かる」

 セリスの小さな声だった。


「えっ?」

 ユークが驚いて振り返る。


「大切なもののためなら、他のすべてを捨ててもいいって思う気持ち……。私も、そうだから」

 そう言ってセリスはユークの手を握りしめた。


「セリス……」

「セリスちゃん……」

 アウリンとヴィヴィアンが切なげな目を向ける。


「あっ! でも、私……アウリンとヴィヴィアンのことも大好きだからね!」

 慌てて言い直すセリスに、二人は顔を見合わせて笑った。


「ふふ、ありがとう」

「そうね。私もセリスちゃんのこと、大好きよ」

 仲間の笑顔に、重かった空気が少しずつ晴れていく。


「そういえば……レベルが上がったと思うんだけど、みんなはどう?」

 空気を変えるように、ユークが口を開いた。


「うん! 私、新しいスキルを覚えたよ!」

 セリスが元気よく手を挙げる。


「私も新しいスキルを覚えたわ。詳しくはギルドで鑑定してもらわないと分からないけど……たぶん威力強化系ね」

 アウリンが自信ありげに笑みを浮かべる。


「私はとっても使いやすそうな、防御系のスキルを覚えたわ~」

 ヴィヴィアンも嬉しそうに頷いた。


「ユークは?」

 セリスが期待のこもった瞳で彼を見つめる。


「俺は……新しいスキルは感じられないから、今あるスキルが強化されたか、もしくは常時発動が増えたか。そのどちらかだと思う」


「そうなんだ……」

 セリスは眉を下げてしゅんとする。


「いいんじゃない? ユークのEXスキルは最初から十分に強力だもの。そのどちらにしても、大きな強化になるはずよ」


 アウリンの言葉に、セリスの顔がぱっと明るくなる。


「そっか! やっぱりユークってすごいね!」


「はは……。でも、今はジョブが機能停止してるから、詳しくはギルドに行かないと分からないんだけどね」

 ユークは気恥ずかしそうに笑った。


 そこへテルルが息を切らせて走り込んでくる。


「テルル!? どうしたの、そんなに慌てて!」

 ユークが声を上げると、テルルは肩で息をしながら叫んだ。


「はぁっ、はぁっ……! 今すぐ、奴にとどめを刺すんじゃ!」

 震える指先が博士の残骸を指す。


「え? 博士はもう死んでるでしょ? 実際、私たちのレベルも上がったし」

 アウリンが言うと、テルルは首を振った。


「違う! 奴はワシと同じ存在。死ねば消滅し、死体など残らん!」


「っ!」

 ユークたちは慌てて残骸に目を向ける。そこには黒焦げの塊が残り、数人の帝国兵が近づいて調べていた。


「兵士さん! 危ないから、離れ……!」

 ユークが叫んだ瞬間、残骸を突き破って触手が飛び出し、兵士の身体を絡め取って宙に吊り上げる。


「なっ……何だ!?」

 兵士が必死にもがく。やがて残骸の中から肉があふれ出し、無数の触手を伸ばしていった。


「生き返った……!?」

 ユークの目が見開かれる。


「うわっ! 気持ち悪っ!」

 アウリンが嫌悪を隠さず顔を歪める。


 グロテスクな肉塊はどろどろと形を変え、まるでスライムのように震えていた。


「あれ……人なの……?」

 ヴィヴィアンが呆然と呟く。


「ううん。アレからは意思が感じられない……」

 彼女は直感にまかせて、静かに口を開いた。


 肉塊はぱっくりと割れ、内側から牙をのぞかせる。その口へ、触手で縛られた兵士を引き寄せていく。


「まずい! 奴はあの兵士を喰うつもりじゃぞ!」

 テルルが声を張り上げた。


「う、うわああああああ!!!」

 兵士が恐怖に絶叫する。だが、必死に暴れても触手はびくともしない。


「セリス!」

 ユークの声に、セリスが即座に反応した。


「任せて!」

 彼女は立ち上がり、力強く宣言する。


「EXスキル――《ブーステッドギア》!」

 光がセリスの体を包み込み、瞬く間に魔力の鎧が形成される。それは着る者の身体能力を飛躍的に高める魔法の装甲だった。


「はぁっ!」

 跳躍したセリスが触手を一閃し、兵士を絡め取っていた束を切り裂く。そのまま兵士を抱き上げ、安全な場所へと飛び退いた。


「っ! あれは……!」

 ユークが息を呑む。


「恐らく、博士が抑えていた多くの魂が、博士が死んだことで暴走を始めたんじゃろう……」

 テルルが真剣な表情で答えた。


「なら、今度は私の番ね!」

 アウリンが笑みを浮かべた。


「アウリン……?」

 ユークが驚くと、彼女は力強く頷く。


「私の新しい力を見せてあげる。――EXスキル、《コンセントレイション》!」

 足元に魔法陣が浮かび、空気が震える。アウリンの魔力が時間と共に膨れ上がり、ユークの肌が粟立つほど、圧力が強まっていく。


「すごい……。魔力がどんどん高まっていく……!」

 ユークは息を呑んだ。


 やがて詠唱を終えたアウリンが、前を見据える。


「――《ライトニングランス》!!」

 轟音と共に雷鳴の槍が大気を裂いた。稲光の槍は眩く輝き、周囲を白く染め上げた。


「な……大きい……!」

 ヴィヴィアンが声を上げる。


「信じられん……。なんじゃこの威力は……」

 テルルが震えながら呟く。


 その威力は、通常の『ライトニングランス』を遥かに超えていた。ユークは直感する――これは、彼女のかつての最強魔法『プロミネンス・ジャベリン』すら凌ぐかもしれないと。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.42)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:実は次はどんなEXスキルが手に入るかわくわくしてたので、少しがっかりしてる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.40)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

EXスキル2:≪ブーステッドギア≫

備考:直前に使っていた疑似EXスキルの影響か、体に負担のない強化系のスキルを獲得した。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.41)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

EXスキル2:≪コンセントレイション≫

備考:実は『コンセントレイション』はユークの『リインフォース』の効果も乗るので、結構な壊れスキル。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.40)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

EXスキル2:≪インヴィンシブルシールド≫

備考:セリスが気軽にEXスキルを使っているのを見て、羨ましかったので、自分も扱いやすいスキルを得られて少しうれしい。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.19)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:氷威力上昇

備考:人間の魂を吸収する危険性は理解していたが、想像以上に危険度がヤバかった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

肉スライム(LV.??)

性別:??

ジョブ:??

スキル:??

備考:かつて、ヘリオ博士だったもの。すでに意思はなく、本能のみで活動している。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ