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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第176話 魔石を砕く咆哮


「だめっ……槍が弾かれちゃうわっ……!」

 ラピスの突きはゴーレムの胸を正確に捉えた。しかし硬質な音を響かせ、刃先は通らずに弾き返されてしまう。


「くそっ、双剣が欠けていくっす! こんなのじゃまともに戦えないっすよ!」

 ミモルも刃こぼれした剣を見下ろし、歯噛(はが)みする。


「あんたら、無事か!」

 その時、帝国兵がラピスたちの前へ飛び込み、盾を構えた。


「あなたたちは……援軍の!」

 ラピスが驚きと喜びの入り混じった声を上げる。


「魔石を壊そうとしたんすけど、防御が固くて突破できないんッス!」

 ミモルが状況を説明すると、兵士は短く頷く。


「分かった。ゴーレムは俺たちが引き受ける。あんたらは魔石の方を破壊してくれ」


「えっ!? でも、あのゴーレム……すごく強いですよ!」

 ラピスが戸惑いを隠せないでいると、兵士は自信たっぷりに親指を立てた。


「任せろ。ああいうのはやり方があるんだよ!」

 そう言って振り返ると、帝国兵たちへ声を張る。


「三人一組で動け! 直撃は絶対に避けろ!」


「「了解!」」

 兵士たちは素早く三人ごとに散開し、ミスリルゴーレムの周囲を取り囲む。


 数人の兵士でゴーレムの攻撃の囮になりつつ、他のチームがこっそりとゴーレムの背後に回る。


「今だ! 網をかけろ!」

 掛け声と共に、兵士たちが黒い網を投げ、ゴーレムに覆いかぶせた。


「火をつけるぞ!」

 すかさず網に火をつけると、油をたっぷりと染み込ませた縄が、凄まじい勢いで燃え始めた。


「え……なにをしてるの?」

 ラピスは理解できず思わず声を漏らす。


「奴らは熱で敵を見ているらしい。だからこうして全身を炎で覆ってやれば、俺たちの位置を見失うんだ」

 兵士が胸を張って説明すると、ラピスの瞳が驚きで見開かれた。


「そんな戦い方があるなんて……!」


「それより早く、あんたらは急いで魔石を壊せ! 守りの魔法が張られてる可能性があるって話だ。もしそうなら俺たちじゃ破壊は無理なんだ!」

 その必死な声に、ラピスは槍を握りしめた。


「……分かりました!」

 彼女は仲間に振り返り、強い瞳で叫ぶ。


「みんな! 魔石を破壊しに行くわよ!」

 五人はゴーレムの横を駆け抜け、奥の装置へと迫った。そこには赤黒く脈打つ巨大な魔石が、禍々しい光を放ってそびえていた。


「これが……」

 ラピスの胸に冷たい恐怖が広がる。しかしその震えを振り払うように、ミモルが声を張り上げた。


「ビビってる場合じゃないっす! ユークさんたちが待ってるんすから!」


「……うん!」

 ラピスも気合いを入れ直し、槍を構える。


 彼女たちは五人で同時に魔石へ攻撃を叩き込んだ。


 だが――。


「硬い……!」

 切っ先が火花を散らし、手が痺れる。


「EXスキルでも通らないっすか!? どんだけ硬いんスかこれ!」

 必死に斬りつけるミモルも顔を歪める。


 焦りが広がる中、ラピスは兵士の言葉を思い出していた。


(守りの魔法……それなら……!)


「EXスキル――≪テラーバースト≫!」


 ラピスの口から放たれた咆哮が魔石を覆う結界を打ち破る。


「おおおおおおおお!!!!」

 叫びと共に突撃し、渾身の突きを叩き込む。槍は光をまといながら魔石を深々と貫いた。


「やった!」

 魔石が砕け散り、赤黒い光が霧散する。


 ラピスがいる箇所の魔石が破壊されたことで、魔法陣への魔力の供給が滞り、他の三箇所の守りも消失する。


「《ヘビーブレイク》!」

 オライトの大剣が振り下ろされ、


「《ブレイブハート》! はああっ!」

 ルチルの刃が閃き、


「《ブレイクスラッシュ》!」

 ダイアスの巨斧が振り抜かれる。


 それぞれの攻撃が重なり合い、ほぼ同時に四隅の魔石へEXスキルが叩き込まれる。


 次の瞬間――。


 床を覆っていた巨大な魔法陣の光が、音もなく掻き消えた。


「よっし!」

 ラピスは魔石を破壊すると、大きくガッツポーズをするのだった。


 ◆◆◆


 ラピスが魔石を破壊する少し前。


「……こいつ、フレイムゴーレムを取り込んで炎の耐性を得るつもりだ!」

 ユークは息をのむように叫んだ。


『おっと、ばれてしまったか……』

 博士は子供の悪戯が見破られたかのように、楽しげに笑う。


(このままフレイムゴーレムの炎の耐性を完全に取り込まれたら不味い! でも、放っておけば邪魔になる。なら――)


 ユークはわずかに目を細め、決断した。


「セリス! ゴーレムを倒すな、手足だけを斬って動きを止めるんだ!」


「任せて!」

 セリスは迷いなく槍を振るい、フレイムゴーレムを床へと倒し伏せた。


(これで無力化できる……動けなければ大きな脅威にはならないはずだ)


 しかし。


『そんなことをしても無駄さ!』

 博士は腕を振り下ろし、転がるフレイムゴーレムへと止めを刺した。


「……くっ!」

 ユークは奥歯を噛みしめる。


(そうか……! 俺たちが倒さなくても、自分で仕留めればいいのか。くそっ、これじゃ意味がない……! 他に、他に打つ手は……)


 追い詰められながらも、ユークは思考を止めない。


(なら――!)


「ヴィヴィアン! ゴーレムを盾で遠くへ吹き飛ばすんだ!」


『なに……!?』

 博士がわずかに表情を変える。


「了解!」

 ヴィヴィアンが盾で思いっきりフレイムゴーレムたちを突き飛ばす、フレイムゴーレムたちは弾き飛ばされて床の彼方へと転がった。


『ちっ、これでは……!』

 博士の声に焦りが混じる。


 その隙を逃さず、帝国兵のひとりが飛ばされたフレイムゴーレムを斬り伏せた。

 すると、光の粒子となって消滅し、博士に吸収されることはなかった。


(やっぱり……! モンスターを吸収するには近くにいなきゃならないんだ!)


「よし、次はこっちの番だ! もうお前にフレイムゴーレムは渡さない!」

 ユークは博士へ指を突きつけ、力強く叫んだ。


『……できればこの手は使いたく無かったんだけどね。来い、テンタクルロード!』


 床一面に巨大な魔法陣が浮かび上がり、そこからぬらりとした触手が次々と這い出す。


 現れたのは、無数の触手をうねらせる、塊そのものが怪物と化した異形のモンスター。


 戦いはなお、終わりを見せる気配をは無かった。



◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.39)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:ようやくってところで、また新たなモンスターを呼び出されてしまった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.37)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

備考:あのモンスター、結構強い……!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.38)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

備考:あいつも倒したら吸収されちゃうんでしょ? 厳しくないかしら?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.37)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

備考:ちょっと見た目が嫌なモンスターね……

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.10)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:氷威力上昇

備考:自分ならどう魔石を守るかを考えて、彼らに伝えた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ラピス(LV.30)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪テラーバースト≫

備考:トレント狩りにばかり使っていたから、本来の効果を忘れていた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヘリオ(LV.55)

性別:男、女、男……(他多数)

ジョブ:召喚師、剣士、上級剣士……(他多数)

スキル:スキル:≪召喚魔法≫、槍の才、剣の才……(他多数)

備考:結局フレイムゴーレムの耐性を完全に得ることは出来なかった。

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