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「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


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第175話 共食い


 ユークたちが戦闘をしている大部屋の入口付近。


「しかし、状況が混沌としていて、なにがなんだかわからんのであるな」

 大剣を背負った帝国の騎士オライトが腕を組みながら言った。


「……たしかに。まずは中央で戦うユーク殿に協力してみてはどうでしょう?」

 隣に立つダイアスが、さりげなくユークを助ける方向へと話を向ける。


 その時、新たな人影が彼らのもとへ駆けてくるのが見えた。


「すまんっ! どうかワシの話を聞いてくれ!」

 それは、戦闘が激化したため、ユークたちから距離を取っていたテルルだった。


「む? そなたは……」

 オライトは不思議そうにテルルを見る。戦場に少女の姿があること自体が意外だったのだ。


「あの少女はユーク殿の仲間です。恐らく状況を知っているはずです、話を聞いてみては?」

 咄嗟にダイアスがフォローを入れる。


「ふむ、そうであるか。お前が言うのであれば、話を聞いてみるのである!」

 オライトが頷き、テルルに向き直った。


 テルルは簡潔に状況を説明する。


「なるほど、つまり……あの魔石を壊せばよいのだな!」

 オライトは力強く結論を下すと、すぐに指揮を執り始めた。


「では軍を四つに分けるのである。一つを吾輩が、一つをダイアスに、一つを今も奮戦する彼女(ラピス)らの元へ。そしてもう一つは……ルチル殿、お願いできますかな?」


「ええ、感謝します。私の手勢はこの通り少ないので」

 ルチルは優雅に礼をした。


「よし! 決まったのである。全軍、進撃開始!」


 オライトの銅鑼(どら)のような大声が響き、援軍たちが一斉に動き出した。


 ◆ ◆ ◆


「援軍……!?」

 ユークが驚く。


 ひたすらにヘリオ博士を足止めしていたユークたちにとって、援軍の到着はまさに朗報だった。


「ルチルさんたちが追いついてきたのね!」

 ヴィヴィアンが博士の攻撃からユークを庇いながら嬉しそうに声を上げる。


 チラリとラピスたちの方を見る。彼女たちは三体のミスリルゴーレムに苦戦していたが、あの戦力が加われば魔石の破壊も時間の問題だろう。


 そうなれば博士の魔力は有限となり、勝利への道筋が見えてくる。


「《プロミネンス・ジャベリン》!」

 アウリンの魔法が炸裂し、博士の半身を焼き落とした。


 すぐに再生が始まるだろうが、その間、博士は動けない。足止めには十分だった。


「じゃあ、このまま抑えていれば勝てるのね!」

 アウリンが笑顔を見せる。


「待って! あいつ、何かしようとしてる!」

 セリスが叫ぶ。


 援軍の登場を受け、博士の行動が変わる。


「っ! 下だ!」

 ユークが叫んだ。


 三人が視線を落とすと、複数の魔法陣が描かれている。


「これは召喚の魔法陣! 何か来るわ、警戒して!」

 アウリンが正体を見抜き、咄嗟に警告した。


 魔法陣から、地面を割って新たなモンスターが現れる。


「こいつはっ!」

 ユークが驚愕する。


「フレイムゴーレム!?」

 アウリンの声が上がった。出現したのは焼けた石で出来たようなゴーレムだった。


「まずい! いまここで敵が増えたら足止めができないわ!」

 ヴィヴィアンが困惑を露わにする。


「大丈夫!」

 その声が静かに響いた。セリスだった。


 一閃。


 現れた三体のフレイムゴーレムは瞬時に真っ二つにされる。


「これくらいなら、どうとでもなるから!」

 槍を収めたセリスが何でもないように言った。


「すごい……!」

「さすがね!」

 ユークとヴィヴィアンが感嘆する。


 だが、アウリンだけは表情を曇らせた。


「おかしい……こんな弱いモンスター、出す意味があるとは思えないのに……」


「どういうこと?」

 博士の攻撃を避けながらユークが問う。


「このゴーレムはとても弱いの。せいぜい十五レベル程度……。あとは炎への耐性があるくらいね」


「炎に対する耐性?」

 ユークが聞き返す。


「ええ、私のフレイムランス程度じゃまったく通用しないほどの炎耐性を持つわ」

 アウリンが淡々と説明する。


「それは結構な耐性を……」

 ユークは頷きかけ、ふと顔を上げて絶句した。


「どうしたの?」

 不思議そうにアウリンが問う。


「あ、あれ!」

 ユークは震える指で博士を指差した。


 つられてアウリンが見て、驚愕する。博士の巨体には所々、焼けた石のような部位が浮かび上がっていたのだ。


 博士の攻撃の圧が下がり、余裕を持って会話できている理由もそこにあった。博士は攻撃を控え、別のことに意識を向けていた。


「やあっ!」

 新たに出現したフレイムゴーレムをセリスが一閃する。


「さっきから、やけにゴーレムを召喚してくると思ってたけど……」

 ユークがヘリオ博士のようすを注意して観察する。


 すると博士は、セリスに倒されたゴーレムから散る、光の粒子を吸収していた。


 そのたびに博士の体にフレイムゴーレムの部位が増えていく。


「こいつ……フレイムゴーレムを吸収して炎耐性を得るつもりだ!」

 ユークがようやく博士の狙いに気付いた。


『おっと、ばれてしまったか……』

 博士が子供の悪戯を見抜かれたような声音で笑う。


「っ!」

 ユークはその狡猾な策略に、背筋が凍る思いをした。


 こうして、戦いは新たな局面を迎えるのだった。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.39)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:もっと早く気づいていればと後悔している。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.37)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

備考:もはや、召喚された瞬間にフレイムゴーレムを倒せるため、戦闘への影響はほとんどない。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.38)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

備考:EXスキルまで防がれるほど耐性を積まれると勝ち筋がなくなる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.37)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

備考:いつまで博士の足止めが続くのか不安だったが、援軍が到着して安堵した。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.10)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:氷威力上昇

備考:頑張って走った。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ラピス(LV.30)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪テラーバースト≫

備考:現在ミスリルゴーレム相手に苦戦中。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ルチル(LV.??)

性別:女

ジョブ:上級剣士

スキル:剣の才(剣の基本技術を習得し、剣の才能を向上させる)

EXスキル:《ブレイブハート》

備考:オライトより先に博士へ辿り着こうと急いだが、結局ほぼ同時になった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ダイアス(LV.33)

性別:男

ジョブ:斧士

スキル:斧の才(斧の基本技術を習得し、斧の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪ブレイクスラッシュ≫

備考:傷は完全に癒えていないが、戦闘には参加できる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

オライト(LV.??)

性別:男

ジョブ:上級大剣士

スキル:大剣の才(大剣の才能を向上させる)

EXスキル:??

備考:部下とは無事合流した。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヘリオ(LV.55)

性別:男、女、男……(他多数)

ジョブ:召喚師、剣士、上級剣士……(他多数)

スキル:スキル:≪召喚魔法≫、槍の才、剣の才……(他多数)

備考:負担は増えるが仕方がない。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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