表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「お前は用済み」と追放されたけど、俺のことが大好きな幼馴染も一緒に抜けたせいで元パーティの戦力が崩壊した件  作者: 荒火鬼 勝利


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

173/192

第170話 巨人化カルミアとの激突


「そろそろ行こうか」

 ユークの言葉に、仲間たちがうなずいた。


 短い休憩ではあったが、用意していた甘い菓子のおかげもあり、イスカとの戦いの疲れはかなり癒えていた。


 ただ、一つだけ心残りがあった。


 ユークは床に座り込むダイアスへと視線を向ける。


「俺は大丈夫だ。もらった薬もよく効いてる。動けるようになったら追いつくさ」

 ダイアスはそう言って微笑む。


 ユークは一度目を閉じ、仲間たちを見回した。

 頷く者、手を振る者、笑顔を向ける者――それぞれが力強い反応を返してくれる。


「行こう! 博士のもとへ!」

 ユークの声に続き、仲間たちは一斉に駆け出した。


 一本道の通路を走り抜ける。テルルの案内は必要なかったが、彼女の銀の虫は索敵を続けている。


「通路に敵はいない。どうやら全員、奥の部屋に集まっておるようじゃ!」

 テルルが走りながら報告する。


「わかった! ありがとう!」

 ユークが礼を返した。


「見えてきた!」

 通路の先に大きな扉が立ちはだかる。


「あれが……」

 ユークはごくりと唾を飲む。イスカの変貌した姿を思い出し、この先でどれほど凄惨な実験が行われているのか、想像せずにはいられなかった。


「頼む、セリス!」

 その想像を振り払うように、ユークは勘の鋭い彼女に先行を頼む。


「わかった! いくよっ!」

 セリスは駆け出し、両開きの扉を思いきり蹴破った。


 仲間たち全員が部屋の中へ飛び込む。


「……っ!」

 目の前に広がった光景に、誰もが息を呑んだ。


 そこはまるで巨大な実験施設だった。

 天井は果てしなく高く、無数の実験装置が並び、壁一面に不可解な紋様と管が走っている。

 床には巨大な魔法陣が描かれ、その中心に立つ者の姿があった。


「カルミアっ!」

「ヘリオ博士……」

 ユークとテルルがほぼ同時に名を呼ぶ。


 そこにいたのは、このアジトの主であるヘリオ博士。そして――黒いドラゴンに変じ、ユークたちに敗れたはずのカルミアだった。


「ギリギリで間に合ってよかったよ。さあ、見せてあげなさい……君の新たな力を」

 博士が促す。


「ああ! これでユーク、お前より俺の才能が上だってことを分からせてやるよ!」

 カルミアが吼えるように叫ぶ。


「カルミア……」

 ユークは悲しげな瞳を向けた。


 次の瞬間、カルミアの体が急激に膨れ上がっていく。


『はははははっ! 見ろっ! これが俺の力だ! この力で俺は……!』

 完全に変貌したカルミアは、まるで小山のようにそびえ立つ巨人――タイタンとなっていた。


「……でかい」

 ユークは思わず見上げて呟く。


「あれはタイタンじゃな。巨人族の中でも特に巨大な怪物で、確かレベルは四十五だったはずじゃ!」

 テルルが解説する。


「ヴィヴィアン、あれを!」

 ユークが指示を飛ばす。


「わかったわ!」

 ヴィヴィアンが“転移封じの天蓋(てんがい)”を発動させた。

 魔道具を中心に半透明の結界が展開し、広大な部屋も、巨大化したカルミアさえも覆い尽くす。


「よし、これでもう、博士は転移で逃げられないはずだ!」

 ユークが小さく笑う。


『何をごちゃごちゃと話してんだ! 俺を無視するんじゃねえええ!』

 怒号とともに、巨人となったカルミアが足を振り下ろした。


「っ……でかい!」

 ユークが叫ぶ。


「攻撃範囲が広すぎる……これじゃ避けきれないわ!」

 アウリンが声を上げた。


「私に任せて!」

 ヴィヴィアンが立ちふさがり、巨大な足を受け止める。鎧から圧縮された空気が漏れ出すほどの重圧。


「おおおおおっ!」

 気合いと共にヴィヴィアンが押し返し、カルミアの巨体がよろめいた。


『なっ! 俺の攻撃を防いだ!?』

 驚愕の声を上げるカルミア。


「はあああああっ!」

 セリスが飛び込み、タイタンとなったカルミアの足首を切り裂いた。


「ぐあああああああっ!」

 足を失ったカルミアは地に倒れ込み、苦悶の叫びをあげる。


「うーん、でかいだけじゃない?」

 セリスが肩をすくめた。


 黒竜と化した彼を倒したユークたちにとって、巨体だけのタイタンはもはや脅威とはならなくなっていた。


「……やはり、こうなったか」

 博士がため息を漏らす。


『博士!? 違うんだ、これは!』

 カルミアが必死に叫ぶ。


「いいさ、もともと無理だとは思っていた。それに、これ以上続けて君のタイタンまで失ったら元も子もないからね……」

 そう言う博士の身体が、ゆっくりと溶け崩れていく。


「なにっ!?」

 アウリンが目を見開く。


「ひっ……!」

 ヴィヴィアンが声を上げる。


「人……じゃない……?」

 ユークが息をのむ。


「あれは……マッドマンか……」

 テルルが低く告げた。


「そうさ。僕は実験を終え、ヴォルフ君……君と同じになったのさ」

 完全に人型の泥と化した博士が、歪んだ笑みを浮かべる。


「さあ、ここからは選手交代だ」

 その合図と共に、部屋の周囲に潜んでいた博士の部下たちが次々と姿を現し、怪物へと変貌していく。


「……囲まれたか」

 ユークが低く呟く。


「ユーク、博士はワシに任せてくれんか?」

 テルルが口を開く。


「テルル……?」

 ユークが彼女を見た。


 その瞳には、悲壮な決意が宿っていた。


◆◆◆


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ユーク(LV.39)

性別:男

ジョブ:強化術士

スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)

EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫

備考:今さらどうするつもりだ? まわりを見ても大したモンスターはいないみたいだけど。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

セリス(LV.37)

性別:女

ジョブ:槍術士

スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)

EXスキル:≪タクティカルサイト≫

備考:カルミアったら、あんな姿になってまで何がしたかったんだろう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

アウリン(LV.38)

性別:女

ジョブ:炎術士

スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)

EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫

備考:すごいわね……まるで最初から、あの巨体が動けるように部屋を設計していたみたい。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヴィヴィアン(LV.37)

性別:女

ジョブ:騎士

スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)

EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫

備考:転移封じの天蓋(てんがい)は触れた魔法を魔力に戻す効果を持った半透明の壁をドーム状に展開する魔道具よ。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

テルル(LV.40)

性別:男(女)

ジョブ:氷術士

スキル:≪アイスアロー≫(使用不能)

EXスキル:氷威力上昇

備考:もう手遅れじゃったか……せめてワシが引導を渡してやろう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ヘリオ(LV.??)

性別:男

ジョブ:召喚師

スキル:??

備考:マッドマンというのは、人間の姿に擬態し、さらに自らの魔力を用いて肉体を再生する性質を持つ魔物だ。


ただし野生に見られる個体は、その擬態も粗雑で、魔力もごくわずかしか持っていない。つまり再生能力もすぐに限界を迎えてしまうんだ。


結論としては、レベル十ほどの実力があれば十分に討伐可能な、さほど脅威ではないモンスターということだね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

カルミア(LV.13)

性別:男

ジョブ:荳顔エ壼殴螢ォ

スキル:蜑」縺ョ謇(蜑」縺ョ蝓コ譛ャ謚?陦薙r鄙貞セ励@縲∝殴縺ョ謇崎?繧貞髄荳翫&縺帙k)

備考:何でだ! 何で俺はユークに勝てねぇんだ!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ