第162話 カルミアとの再戦
「はっ! どいてほしいなら……どかせてみろよ!」
骨が軋む不快な音を立てて、カルミアの肉体が異様に膨張する。
皮膚が裂け、隆起した背骨を覆うように漆黒の鱗が生まれ、あっという間に全身を包み込んでいく。
頭部からは螺旋を描く黄金の角が生え、その眼は灼熱のマグマのような赤へと変化した。
「……ドラゴン、じゃと……!?」
テルルが息を呑んだ時には、すでに変化は終わっていた。
そこに立つのは漆黒の巨体。翼を広げれば30メートルにも及ぶだろう。
全身を覆う黒い鱗は光さえも呑み込み、その存在そのものが“暴力”の化身のようだった。
カルミアは雷鳴のような笑い声を響かせ、空気を震わせる。
『お前ら程度、束になってかかってきても俺に傷ひとつ付けられやしないだろうけどな!!!』
「みんな! カルミ…ドラゴン以外の連中を頼む! こいつは、俺たちが相手をする!」
ユークがダイアスやラピスのパーティーに指示を出す。
「わかった、任せろ!」
ダイアスが斧を構えて走り出した。
「ユークさんたちも、ご武運を!」
ラピスたちも、一礼してからカルミアを迂回するように駆け出す。
「ワシはどうすればいい?」
ユークの隣に来たテルルが尋ねる。
「予定通り、テルルもあっちのサポートに行ってくれ!」
ユークの言葉に、テルルは「わかった!」と答え、カルミアを迂回して走り去っていく。
『…ふん、てめぇら全員でかかってきてもいいんだぜ?』
カルミアは嘲笑し、黄金の角を揺らした。その視線はユークたちをしっかりと捉えている。
「笑わせないでくれよ、カルミア。お前ごとき俺たちだけで十分だ」
ユークが挑発的に言い放つと、カルミアの目が細められる。
『あ゛?』
ドラゴンの表情は変わらなかったが、その灼熱の瞳は、まるで人間のように怒りの感情に支配されていた。
『は、ははは……俺を、俺を舐めるなよクソがっ!!!』
その言葉を合図に、カルミアが動いた。巨体が大広間の床を砕きながら、ユークたちへと突進する。
「来るぞ!」
(よしっ! これであっちは安全なはずだ……)
「任せてっ!」
ユークの声が響き、ヴィヴィアンが前に出る。全身を覆う鎧が軋み、内部の機構が作動する。
足裏からアンカーが地面に突き刺さり、全身のシリンダーへ空気が送り込まれていく。
彼女は突進してくるカルミアを正面から受け止めるべく、渾身の力を込めて盾を構えた。
「はぁああああっ!」
ヴィヴィアンの咆哮とともに、カルミアの突進が彼女の盾に激突する。
凄まじい衝撃音が広間に轟いた。ヴィヴィアンの足元の床が粉砕され、アンカーが悲鳴を上げる。
しかし、彼女は一歩も引かず、その巨体を食い止めてみせた。
『受け止めた? 俺の一撃を!?』
攻撃を受け止められ、カルミアは驚きを露わにする。
「その程度……どうってことないわ!」
ヴィヴィアンが強がりながら笑う。
『ちぃっ!』
カルミア苛立った様子で爪を振り下ろす。
「今よっ! セリスちゃん!」
その瞬間、ヴィヴィアンがセリスの名を叫ぶ。
「やあああああっ!」
走り込んできたセリスが、ヴィヴィアンを攻撃中のカルミアの腕を斬りつけた。
『ぐあっ!! な、斬られただと!?』
斬りつけられ、慌てて腕を引っ込めるカルミア。
「だめっ! 浅い!」
セリスが短く叫ぶ。
続いて、詠唱を終えたアウリンが魔法を発動する。
「――《ライトニングランス》!」
『なにぃっ!?』
雷撃の槍がカルミアに直撃し、雷鳴を轟かせた。
しかし、それはカルミアの鱗に弾かれ、軽く火花を散らすだけで終わってしまう。
『あ? 今、何かしたか?』
アウリンの方を向き、わざとらしく哄笑するカルミア。
「そんな……私の魔法が弾かれた!?」
アウリンが驚きを隠せない。
『はっ! 何をしても無駄だ! 俺の鱗は炎も氷も弾く! つまりはユーク! テメェの攻撃も効かねえってことだよ!!』
セリスの攻撃を警戒しながら、カルミアは嘲るように笑う。
ユークの詠唱は終わっていた。彼の眼前にある魔法陣から、圧縮された石の槍が浮かび上がる。
「《ストーンブレイカー》!」
それは、ストーンランスの密度と発射速度を極限まで高めた、彼のオリジナル魔法だった。
ユークが超圧縮された石の砲弾を高速でカルミアへと射出する。
弾丸は閃光と化し、カルミアを撃ち抜いた。漆黒の鱗を貫き、肉を裂き、鮮血が宙に舞う。
『ぐぎゃぁああああああ!!!』
カルミアの絶叫が響き渡った。
『な、何で魔法が俺に効くんだよ!? おかしいだろ!?』
巨大なドラゴンが慌てふためく姿は、その威容からは想像もつかないほど、無様でみっともなかった。
『こうなったらすべて、ブレスで灰にしてやる……!』
カルミアは大きく顎を開き、肺の奥から灼熱の奔流を引きずり出す。空気が焼け、金属が軋むような音が響く。
「……っ!」
これから起こるであろう事態を想像し、仲間たちの誰もが息を飲んだ。
だが、ユークだけは冷静にカルミアを見据えていた。その口が、感情の欠片もない平坦な声で詠唱を紡ぎ出す。
ユークの口が詠唱を刻むと同時に、彼の指先から放たれた魔力が空中に輝く線を描き出した。
それは、未だ紡がれていない詠唱の部分を補うかのように、未完成だった魔法陣に直接、術式を組み込んでいく。
二つの術式が火花を散らすように重なり合い、一瞬にして完璧な魔法陣が完成する。
喉の奥から湧き上がる灼熱の奔流が、ドラゴンの口内で嵐のように渦巻きはじめた、その時――
(今だ!)
「――《ストーンウォール》!」
巨大な石壁が、カルミアの顎のすぐ下から垂直にせり上がった。それは、ブレスを吐き出そうと大きく開いた顎を、無慈悲に閉じさせる。
『――――!?』
カルミアのブレスが爆ぜ、顎の内側で轟音が鳴り響く。炎と爆風が逆流し、カルミアの顔面を焼く。
『――――――――っ!!』
戦場にカルミアの音のない絶叫が響き渡った。
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ユーク(LV.35)
性別:男
ジョブ:強化術士
スキル:リインフォース(パーティーメンバー全員の全能力を10%アップ)
EXスキル:≪リミット・ブレイカー≫
備考:なんとか間に合って良かった……
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セリス(LV.33)
性別:女
ジョブ:槍術士
スキル:槍の才(槍の基本技術を習得し、槍の才能をわずかに向上させる)
EXスキル:≪タクティカルサイト≫
備考:すごい……ユーク、あんなことが出来るんだ……
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アウリン(LV.34)
性別:女
ジョブ:炎術士
スキル:炎威力上昇(炎熱系魔法の威力をわずかに向上させる)
EXスキル:≪イグニス・レギス・ソリス≫
備考:嘘でしょ……あんなの、師匠でもやってる所を見たことないわよ……
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ヴィヴィアン(LV.33)
性別:女
ジョブ:騎士
スキル:騎士の才(剣と盾の才能を向上させる)
EXスキル:≪ドミネイトアーマー≫
備考:あのブレスを盾で受ける未来を想像して、正直背筋が凍っちゃったわ……
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カルミア(LV.13)
性別:男
ジョブ:荳顔エ壼殴螢ォ
スキル:蜑」縺ョ謇(蜑」縺ョ蝓コ譛ャ謚?陦薙r鄙貞セ励@縲∝殴縺ョ謇崎?繧貞髄荳翫&縺帙k)
備考:!?!?!?!?!?
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