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日本異世界始末記  作者: 能登守
2034年
279/282

指定武装団体

 大陸東部

 日本国 那古野市

 海上自衛隊那古野基地


 日本国における大陸の海上戦力の要であるこの基地で、わりとしょうもなくも深刻な問題が立ち上がっていた。

 例年と違い那古野基地の港には、陸上自衛隊の二つ目の連隊が上陸しようとしていた。

 戦車を主戦力とする第3戦車旅団の基幹連隊の第3戦車連隊の90式戦車を百両以上を大陸に持ち込んだのだが、その輸送は苦労の連続だった。


「桟橋の耐久力は90式の走行に耐えれるのか?」

「10式には耐えましたが、今回は数も4倍です。

 陸自の施設科に支援の要請をお願いします」


 幕僚の返答に基地司令兼那古野地方隊司令の猪狩三等海将は、苦虫を潰した顔をする。

 一応は軍港として機能する為に整備した桟橋だが、急造した都市同様、突貫工事で造らせた不安の残る代物だった。


「いつかはちゃんと整備した物を造ろうという計画だけはあったんだが、その為の資材や予算、労働力が全部新都市建設に持っていかれて手を付けれなかったんだよなあ」


 幸い桟橋には線路も敷設されており、輸送された90式戦車は桟橋のコンクリートを削らない様に慎重に前進し、列車に積載されていが、何十両も進んで行くと、ガリガリと猪狩三将の精神とともに削られていく。

 ここまでは海自の仕事で、あとは陸自の鉄道連隊に引き継ぐだけだったが、ここでも問題が起きた。

 列車は蒸気機関の装甲列車で、鉄道連隊所属である。


「いや、2両が限界ですからね。

 1500馬力程度の蒸気機関車では、50トン戦車はそれしか積めません!!」


 鉄道連隊の車長である杉崎一等陸尉の言葉に関係者一同が唖然とする。

 日本国新京道は沿岸部の路線は電気機関車が走り出していたが、内陸部へはいまだに蒸気機関車が主流だ。

 機関車自体も本国で保存されていた車両を復元したものなので、酷使していることも含めて老朽化も著しい。

 ましてや第3戦車旅団の目的地は、新京道外の最前線丹南市でとにかく遠い。


「輸送用に割り当てれたのこの列車だけだよな?」

「その通りです。

 往復18時間、降車作業と点検、石炭や水の補充まで考えると、一日一便です」

「つまり一日二両だけ?

 百両以上いるのに……」


 すでに輸送してきた艦船からは大半の90式戦車が下ろされ、海自の基地が90式戦車に埋め尽くされていく。

 さすがに基地の外に駐車するわけにいかなく、困り果てた猪狩海将にさらなる追撃が襲う。


「来週には旅団直轄部隊の車両も届きますので」


 第3戦車旅団団長吉岡陸将補が申し訳なさそうに言ってくる。


「戦車自身で現地に向かってもらうのは?」

「燃料が補給出来ないので無理です。

 100両以上の戦車が現地まで300キロ走るんですよね?

 12㎘なんてガソリンスタンドの貯存タンク12個分ですよ、無理無理」


 第3戦車旅団の車両はその後も増え続けて、地道な輸送が連日続けられることになる。





 日本国

 東京都 九段第3合同庁舎


 都民の大半が移民し、空き家だらけの都内で公安調査庁は旧千代田区役所が入っていた九段第3合同庁舎を丸ごと手に入れて移転していた。

 元々、下部組織の関東公安調査局が九段合同庁舎に入居していたこともあり、公安調査庁の人間には馴染み深い地でもある。

 また、警視庁公安部や各道府県警察の警備部公安課・外事課を吸収し、表に出せない実働部隊などの増員もあり、手狭になった永田町からの移転はちょうど良かった。

 自衛隊の北の丸分屯地や警視庁第1機動隊が隣接してることからも皇居北側の守りも期待されている。

 そんな庁舎内の電気も着けない暗い会議室に調査部や外事部の幹部達が集まり情報の共有が行われていた。

 また、会議の内容は内閣への提言として提出される予定だ。


「近年増加傾向にある宗教団体による術者、武装組織ですが、その組織を移民による削減をさせない為に地方議員や自警団等への浸透が行われていました。

 副業に農家や漁師等、移民対象免除行為を信者には以前から確認されてきましたが、地元の有力な豪農、網元への介入も積極的に行われています。

 まあ、冠婚葬祭は寺社仏閣の専売状態で、大事な資金源でもありますから当然ではあります。

 第1次産業従事者の増加は国策にも沿っていましたから特に目を掛けることはありませんでした」


 まずは食糧増産、衣食足りてから細かいことを考えるのが政府方針の一環であり、移民本部もノルマの消化と一定数の人口は本国に残す方針から多めに見ていた。


「寺社は法力や神力が使える世代を住職や神主に据える方針ですが、まだまだ数が少なく未成年しかいなので、代理の非術者が就任して移民免除を求めています」

「寺社の施設管理を考えれば仕方なくないか?

 文化財保護の名目もある。

 転移前は無住の寺も多かった」


 日本全国に約7万7000の寺院があり、そのうち無住寺院と呼ばれる住職が不在の寺院は無くなっている。


「お寺さんはそれでいいんですが、神社の場合は移民で人がいなくなった事をいいことに末社と呼ばれる小さな祠周辺の土地を買い上げ、本殿や拝殿、社務所を造って拡張してまで神社に仕立ててます」


 神社の数は約8万社で、小さな祠を含めると20〜30万社とも言われている。

 国有地やビルの屋上、果ては私邸の庭先にまでフリーダムに存在するので把握が難しい。

 さすがに神社側も人材確保が難しいので、移民が行われた地の神社や祠が優先的に改修されている。


「標高1600メートルにあるとか、無人島にある神社まで手を付けようとしてるな」

「バイクの神様ってなんだ?

 天狗が祭神のようだが」

「平成になってから空気が神様として建立されてるぞ?」

「一応、神社で葬式したら神様に列せられる。

 靖国とか軍神、戦国武将が祀られてるのはその理屈だ」


 お手元の資料を見ながら幹部達が駄弁り出す。


「ではそろそろ本題に入りたいと思います。

 日本本国における僧兵や衛士の規模を示したページをご覧ください。

 日本の仏教宗派は大きく分けて、13宗派に分かれています。

 現在は日本仏教連合なる互助組織を置いてますが僧兵数約8万人。

 大半は各寺院の警備ですが、山中に修験道で修行してたり、京都、奈良、大阪、神奈川、福井、滋賀、山梨に中隊規模の『兵団』を置いています」


 独立系の新興宗教に属する宗派もいたが、転移後は概ね系列の親宗派に帰属している。

 実態活動が不明の団体は宗教法人の登録を取り消しているので大幅に整理された。


「面倒なのが神道系でこちらは祭神ごとに衛士を置き総数約9万人。

 こちらも大半が神社の警備が主任務ですが、命令系統が別々で、主だったところが八幡、稲荷、天神が師団規模。

 神明、諏訪、熊野、春日が旅団規模。

 八坂、白山、住吉、日吉、金比羅、恵比寿が連隊規模。

 愛宕、鹿島、日枝、香取、荒、大隊規模の衛士隊を置いてます。

 何れも祭神による術式が判明した神社です。

 今年は貴船神社も例の彼女の影響で衛士隊を創れると息巻いてました」


 政府系ではない武装団体の規模に一同愕然としている。

 これらが強訴や一揆などを起こされては堪らない。

 幸いに銃火器は持っていないが、各自治体の自警団にまで食い込んでいるのが問題だ。


「これらの団体は『指定武装団体』として、我々の監視対象となります。

 また、神では無く妖怪が祀られてる神社は監視の対象として衛士達が常駐してます」


 移民せずに本国に残ると政府か、宗教団体の紐付きしか残らなそうなのが問題だ。


「そもそも移民っていつまで続ける気なんですか?」

「本国の食糧自給率が100%になるまでさ」



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