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日本異世界始末記  作者: 能登守
2034年
274/274

市川百鬼夜行

 日本国

 千葉県松戸市(旧市川市)

 葛飾八幡宮


 周囲100メートルを消滅させた八幡の藪知らずから武者の格好をした土人形が刀槍や弓矢を構えて、クレーターに降りてきた。

 負傷した警官達は八幡宮衛士達の協力で八幡宮内に後送し、八幡宮司代行の中学生大峰司少年に治癒の祝詞を唱えられている。


「体内の銃弾だけはお医者さんに取り除いて貰わないと治癒しても残っちゃいます」


 さすがに中学生に外科的な手術はやらせるわけにはいかない。


「わかった生命維持に必要と判断したらやってくれ。

 責任は署長のわたしがもつ」


 多くの署員が負傷し、殉職者も二人を出した市川警察署署長立花警視正はきっぱりと言いきる。

 町の有力者同士、顔見知りなので話が早い。


「それはそうとあれは何かわかるかな?

 ゴーレムの一種だと見受けらるが?」

「伝承通りなら当地は、平将門公の墓所説があって、その首を守り続け、そのまま泥人形になったと家来6名だと思います」

「平将門?

 祟られそうだな」

「いえ、それはありません。

 平将門公は平将門命タイラノマサカドノミコト、相殿神として、神号が与えられ、鉄身 や除災厄除の祝詞がはつどうしてますから」


 人から神号を与えられ、千年も祀られると術として使えるようになるのが最近、判明した。

 魔術科による研究の賜物として評価された。


「八百万の神に取り込まれたわか。

 じゃあ、アイツらは倒しても問題ないな」

「むしろ現し身、いや写し身から解放してあげて下さい」


 その言葉を拠り所に警官達は拳銃や猟銃を土人形の武者達に向ける。


「成仏して差し上げろ、射て!!」


 十数人の警官達が一斉に弾を射ち尽くす勢いで発砲する。

 小口径の拳銃弾でも数十発も着弾すれば、ボロボロの落武者の土人形の出来上がりだ。


「おいおいそれは反則だろ」


 土人形の落武者達は欠損部を周辺の土に押し付けて、破損箇所をみるみる修復させていく。


「回復の暇を与えるな、射ちまくれ」


 だが銃弾を残している警官は少ない。

 仲間の修復を邪魔させじと、損傷の少ない土人形の武者が二体、クレーターを駆け上がってきた。


「ぐはあっ!?」


 警官の一人が斬られ、もう一人が構えていた防護盾を真っ二つにされて尻餅を着く。

 警棒も何故か土で出来た刀で切り落とされ、クレーター内からも矢が飛んできて警官を貫く。

 矢も土で生産できるのか、次々と浴びせてくる。


「パトカーの陰に隠れろ!!

 増援はまだか」


 修復中の土人形の武者達が加われば手が付けられなくなる。


「県警機動隊の車両が市川インターを降りるとのことです!!」




 京葉道路

 市川インター出口


 千葉県警第1機動隊は、特型遊撃車を先頭に常駐警備車、人員輸送車、現場指揮車が後に続く。

 銃器対策班と三個小隊の人員を乗せて、高速道路の出口を降りようとしていた。


「女?」


 特型遊撃車を運転していた機動隊員が高速道路にあるまじき、巫女のような白い着物に赤旗を持った女が出口真ん中に立っているのを目にし、外部スピーカーのマイクを手に取る。


『高速道路は一般人立ち入り禁止です。

 今すぐ退去するか、後続パトカーの保護を受けて下さい』


 近付いてくる女の手には藁人形が握られていて、その藁人形に釘が刺し込まれると、特型遊撃車を運転していた隊員は心臓に激痛が走り、ハンドルを手放し特型遊撃車を壁にぶつけて、後続の人員輸送車が停まれずに激突した。


「なんだ!!」


 現場指揮車を降りた早瀬警部補は、謎の女の影から巨大なドクロのモンスターが現れるのを目にする。


 その片手には生きている市民四人が吊るされていた。


「総員、降車!!

 あの化け物から市民を救出しろ!!」


 特型遊撃車に乗っていた銃器対策班が車から降りてこない。

 事故った人員輸送車に乗っていた第1小隊隊員もフラフラで負傷しているものもいる。

 陣形も作戦もガタガタだが退くわけには警察としてありえない。

 吊るされた市民もいれば銃も使えない。


「総員吶喊、市民を守る義務を果たせ、後続のSATには対アンデッド装備を用意するよう伝えろ」


 負傷したが動ける隊員に連絡を頼み、早瀬小隊長自らが巨大ドクロに警棒を片手に突撃していった。




 同市内

 行徳警察署


 旧市川市市民の大部分が移民したとはいえ、まだ第一次産業者とその家族などを中心とした住民が残っている。

 そんな市民を守る行徳警察署は、市川警察署への増援派遣の準備をしていたが、そうも言ってられなくなってきた。ふ


「市川港でスケルトンの集団が暴れてるとの通報。

 刑事課が交戦中」

「市川港の移民待機列にスケルトン複数出現、国境保安庁職員が応戦!!」

「宮内省新浜鴨場にスケルトン侵入、皇宮警察隊から増援要請!!」


 既に管轄内の小学校や商業施設、一般宅に侵入したスケルトンに署員総出で対応しており、

 婦警にまで銃を持たせて市街戦となっている。

 行徳警察署の管轄は同じ旧市川市とはいえ、江戸川と東京湾に囲まれた孤島に位置する。

 浦安警察署からも増援は来ているが、完全にキャパを越えていた。


「松戸、松戸東警察署からも増援要請。

 県警本部から小岩、亀有、葛西、小松川、船橋、流山、柏、吉川の各署が出動すると連絡」


 この市内各地に現れたスケルトンは、武器は持っていないが大の大人を投げ飛ばし、車をひっくり返し、婦女子を拐う。

 とにかく警官達を引き付け、分散させることが目的なのは明白だが、放置もできない。

 すでに自警団も総動員だが、人手が足りない。


「署長、市長が自衛隊に防衛出動を命令すると」


 異世界転移後、各自治体知事、市長は地元自衛隊に防衛出動を命令できる。

 松戸市には陸上自衛隊松戸駐屯地があり、第2高射特科連隊がいるが防空専門部隊であり、部隊は他の自治体に点在している。

 それでも火力や隊員数は他の治安機関と比べて群を抜いている。

 事態が始まってまだ三時間しか経っていない。

 政府や県からの支援はまだ期待できそうになかった。


「署長!!」

「今度はなんだ」

「そもそも発端の自衛官を逮捕に来ていた自衛隊の警務隊が葛飾八幡宮の戦闘に参加しました」






 葛飾八幡宮


 第127地区警務隊松戸分隊の山野二等陸尉は、73式小型トラックの警務隊仕様、白色に塗装され、サイレンやブラケット留めにされた赤色灯が着けられた車両で葛飾八幡宮に到着したが、現場はすでに戦場の様相を示していた。

 八幡宮各所に警官の遺体が散乱し、土人形の武者達と警官隊が警棒や警杖でチャンバラを繰り広げている。


 「警官達を援護する」


 降車した六名の班員は転移後に追加装備された9mm機関けん銃をそれぞれの目標に発砲する。

 警官達の銃弾とは比較にならない破壊力だが、やはり欠損部を土に押し付けて修復させてくる。

 しかし、警務隊が警察と違うのは予備の弾装があることだ。

 欠損部が修復する前にさらなる銃弾の雨に晒させる。

 土人形の武者達の四肢を砕かれ、地に伏するとやはり修復が始まるが、ずっと戦っていた警官が一体をパトカーの残骸に乗せると、土を吸収出来ずに修復が止まった。

 八幡宮外のアスファルトに蹴り飛ばした一体もだ。


 「これだ!!

 他の奴も土から引き剥がせ」


 立花署長の指示で五体の土人形の修復は止められる。

 それでも活動は停止せずに胴体部だけでももがいて、土のある方に行こうとするので、パトカーのトランクに押し込んで閉じ込めたりした。


 「署長の立花です。

 助かりました。」

 「自衛隊の山野です。

 元はと言えば身内の不始末です。

 それにまだ一体残ってますよ」


 弓矢を装備した一体が無数に狙撃してるからタチが悪い。


 「矢が無制限とは、ありかそんなの」


 警官と警務隊はクレーターの縁に身を隠しながら射撃するが、距離と無理のある体勢からか銃弾を当てれない。

 逆に矢は高く射たれると放物線を描くように落ちてきて、警官に当ててくる。


 「なら矢には矢を使いましょう」


 御札をパトカーのトランクに貼って封印していたの宮司代行大峰司少年の背後には弓矢を用意した八幡宮衛士達がいた。

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