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日本異世界始末記  作者: 能登守
2033年
269/274

サミットの終わりに

 大陸南部

 ドン・ペドロ市郊外

 在ドン・ペドロ市国際共同駐屯地


 航空ショーは航空自衛隊の出番が終わり、北サハリン共和国空軍の番になった。

 四つのデルタ隊形の編隊が、さらに大きなデルタ隊形を取りながら会場上空に躍り出てくる。

 それぞれの編隊は先頭にSu-25 スホーイ25攻撃機。

 北サハリン空軍第1親衛航空連隊に属し、大陸北部の空を蹂躙するヴェルフネウディンスク市防衛を主任務とする恐怖の翼だ。

 Su-27 スホーイ27戦闘機。

 北サハリン空軍第2親衛航空連隊に属し、北サハリンにて日本との領空に展開するF-15に匹敵する強大な翼だ。

 Su-30 スホーイ30多用途戦闘機、北サハリン空軍第22親衛戦闘機航空連隊に属し、首都オハを守る虎の子の機体。

 MiG-31 ミグ31迎撃戦闘機、Su-30と同様に北サハリン空軍第22親衛戦闘機航空連隊に属する首都防衛の最終防衛ライン。


「よくも本国部隊の機体を派遣してくれたものです」


 チカチローニ市長も感嘆の声を挙げているが、本国の思惑も透けて見えていた。


「ようするに自衛隊に見劣りすることが許せん訳だ。

 見栄っぱりも役に立つことがあるんですな」


 北サハリン共和国は転移当時は極東ロシア軍がそのまま転移した感じになっていた。

 それも日本を威嚇する為に北方領土での演習を繰り返した結果、多数の部隊が異世界転移の対象となってしまったからだ。

 航空機も数だけは多かったが、部隊の基地との整備士や予備部品とも切り離され、共食い整備や日本から部品を購入しての応急処置でこの十数年凌いでいた。

 しかし、さすがに限界を感じたのか、機体を三つの飛行連隊に集約して残りの機体を解体してしまった。

 ロシア空軍の基準で各飛行連隊の機数は24機である。

 同行していた共和国保安庁、通称PSBのヴェルフネウディンスク市局のボリス局長もウォッカ片手に


「ハラショー!!」


 と叫んでいる。

 諜報機関の長がそんな目立つ行為をしていいのか疑問には思うが、誇らしい気持ちはわからないでもない。


「ボリス局長、落ち着きなさい。

 次が本番なんだから叫ぶならそこですよ?」


 戦闘機を並べるだけなら航空自衛隊と変わりはない。

 次に本国の用意した機体に会場、会場の外の観客は唸り声をあげる。

 先程までの機体はジェット機ばかりだったが、今度はプロペラ機で、第71独立輸送航空飛行隊の輸送機の編隊が横一列隊形で飛んできた。

 C-130とほぼ同スペックを誇るが、機体後部にNR-23 23mm機関砲2門を搭載したAn-12輸送機。

 民生品としても使われる使い勝手の良い機体で量産されたAn-24輸送機。

 やや小型だが車両や物資の空中投下を可能とし、爆撃機としての機能も併せ持つAn-26多目的輸送機。

 アントノフ機に続き、3機の大型機が飛行してきた。

 本国の海を護る第289対潜航空連隊に所属し、ロシアン・オライオンとも呼ばれるイリューシン Il-38対潜哨戒機。

 同じく対潜哨戒機ながら大陸に配備された長距離の航続を可能としたTu-142M。

 そして戦略爆撃機のTu-95。

 日本では東京急行の名で転移前は防空識別圏で対時し、皇国との戦争で大陸民に恐怖を与え、ケンタウルス自治領のトルイの乱で再びその恐怖を思い出させた。


「観客の顔を観る限り、我が国の威信は示せたようです」

「徐々に艦艇や作戦機の部品の国産化も進んでいます

 日本への依存度を減らすことが我が国の課題。

 現用機も厳選したとはいえ老朽化はやはり問題です。

 過度な使用は厳に戒めるべきでしょう」


 必殺の武器はいざという時に使えればよかった。

 まずは現状維持が北サハリン側の認識だった。




 そんな北サハリンの貴賓席の横では高麗民国の任那道知事の白泰英が嫌そうな顔をしていた。


「次はうちなんだろ?

 なんかやだなあ、アレと比べられちゃうの」


 前座に日本、北サハリンとまで出て来られ高麗民国だけでは、ショボさが拭えない。


「合同にしといて良かったよ全く」

「まあ、我が国も比較されても困りますし」

「我が市もでな」

「うちの市も航空機なんて少ないから助かるわあ」


 集まってきた華西民国林修哲主席、ブリタニア市長ダリウス・ウィルソン、呂栄市市長ニーナ・タカヤマ市長が賛同の言葉を口にする。

 いずれも航空戦力が微妙な国や市だ。


 先頭を飛ぶのは呂栄市軍警察航空警備隊の哨戒機TC-90 5機だ。

 元は海上自衛隊から供与された練習機だが、呂栄側は哨戒機として運用すべく後部にレーダーなどの機材を積載している。

 ニーナ市長は既に軍警察を陸軍と警察に分離、沿岸警備隊も海軍を分派させる構想を持っているが航空隊に関してはどこに所属させるか迷っていた。


 後に続くのはブリタニア海軍航空隊のAP-3C オライオンだ。

 元はオーストラリア空軍の機体で、対潜哨戒機P-3Cの改修型だ。

 対北朝鮮の瀬取り関し任務の為に来日していたので転移に巻き込まれた。

 ブリタニア海軍に所属してからも虎の子として扱われ、多彩な任務に駆り出されている。


「幸い我が市も呂栄市も日本に部品を発注出来るのは強みですな」


 北サハリンとは別の結論だが小規模航空隊なら依存も割り切れる。


「我が国は北サハリンの在庫次第ですな」


 華西民国空軍のH-6(轟炸六型)爆撃機8機は逆V字隊形の編隊で飛行している。

 元はソ連のツポレフ Tu-16 戦略爆撃機をモデルに中国が国産化した機体だ。

 護衛機が無いのが難点だが、現在の大陸勢力相手にはいらないし、いざとなれば同盟国日本あたりに要請するので問題は無い。

 やはり北サハリンの保管倉庫の在庫や日本の代替え部品に頼っているところがあり、データの提供から日本は両国の機体を造れる疑惑がある。

 華西民国は領土のほとんどが大陸に有り、陽城市に拠点を構える空軍機を全部投入して航空ショーに参加した。

 参加機には日本の整備士によるメンテと部品供与が無料で受けれるのだから整備予定の機体も飛ばせてきたのだ。


「せいぜい恩恵だけは受けとかないと、実戦での稼働に問題がでますからな」


 林主席の言葉に居合わせた首脳陣は頷く。

 白知事も同じ様にメンテの恩恵を受けたかったが、本国の第1戦闘航空団は動員できず、高句麗基地の

 第2戦闘航空団、戦闘爆撃機F-15K 3機、F-4E 3機だと新羅基地のMiG-21戦闘機6機がショーに参加し、大空を飛んでいる。

 本国の第1戦闘航空団は第2戦闘航空団と機体、機数に変わりはない。

 今回大陸に来なかったのは、白知事と本国の関係性が問題だったからだ。

 MiG-21戦闘機は当然のことだが、元は北朝鮮の機体でルーマニアの近代化改修機を参考にし、防空任務により適した仕様となっている

 F-15KやF-4Eは航空自衛隊の機体との部品の互換性もあるし、勿体無い話ではあった。


 そんな航空戦力を有した首脳陣とは裏腹にカルロス市長達は


 「贅沢な悩みだ」


 と溜め息を吐いていた。

 今回の航空ショーに動員された航空機は飛行機ばかりで、ヘリコプターは対象外である。


 「まあ、今回は裏で大きな事件も起きなかったし、良しとしましょう。

 恒例の首脳陣集合写真を撮りますので、皆さん集まって下さい」


 カルロス市長の号令で地球側の首脳陣が集まり、集合写真が撮られていく。

 本来はモルデール国王も撮られる筈だったが、原因不明の体調不良とやらで欠席となり、代わりにタチアナ皇女が写ろうとして一騒動となることになる。


 こうして色々あった2032年も終わりを告げ、2033年になろうとしていた。












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