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日本異世界始末記  作者: 能登守
2033年
264/274

ドン・ペドロサミット『ウラジオストク問題』

 大陸南部

 独立都市 ドン・ペドロ市沖


 ドン・ペドロ市から離れた海上で、複数の艦艇が睨み合っていた。

 片や大陸沿岸部にエウローペ都市憲兵隊沿岸警備隊フロレアル級フリゲート『ヴァンデミエール』に率いられたというか、付き合わされたブリタニア市海軍アンザック級フリゲート『スチュアート』。

 スコータイ市のフリゲート『プミポン・アドゥンヤデート』。

 ガンダーラ市のシヴァリク級フリゲート『サヒャディ』。

 アル・キヤーマ市のG級フリゲート『ゲティス』。

 ようするに南部独立都市群同盟艦隊といったところだ。

 巡視船まで展開させなかったところはさすがに無理があったのだろう。

 呂宋市長、ニーナ・タカヤマ市長の反対が大きかった。


「『ヴァンデミエール』はともかく、他は義理で来た感が出てるな。

 当該艦だけには警戒を厳にしろ」


 対峙するのは、北サハリン海軍第36水上艦艇師師団。

 スラヴァ級ミサイル巡洋艦『ヴァリャーク』、ソヴレメンヌイ級駆逐艦『ブールヌイ』、『ブィーストルイ』の3隻が陣形も構えず遊弋していた。


『ヴァリヤーグ』の艦長のキリール・イグナチェフ大佐は、百済サミットでは肩を並べて戦った軍艦達がこちらを敵視している光景にため息を吐く。

 先程から同盟艦隊はこちらに急接近やレーダー照射等を行い、こちらを挑発していた。

 それでもイグナチェフ大佐が焦らないのは挑発行為を遮るように日本の海上自衛隊第10護衛隊、むらさめ型護衛艦『いなづま』、『さみだれ』、『 いかづち』の3隻が間に入ってるからだ。


「こっちは譲歩する気満々なのだが、まだ伝わっていないのかな?」




 ドン・ペドロ市

 市長官邸リベルダーデ宮殿


 ドン・ペドロ市市長の官邸であるリベルダーデ宮殿には、高貴室と呼ばれる1000人収容できる大型のホールがある。

 大規模な公式行事で使用する場所であり、今回のサミットの会場でもある。

 カルロス・リマ市長が開会の挨拶を行うと、エウロパ市長ペドロ・ガンダルが早速、北サハリン共和国ヴェルフネウディンスク市のチカチローニ市長への弾劾を語りだした。


「議長、エウローペ市としては、北サハリン共和国に不当に奪取されたミストラル級強襲揚陸艦『ディクスミュード』の返還を求めるものであり、転移前の各国財産の保護を取り決めた

 鴨川条約の精神に反する行為として、抗議と謝罪を要求させて頂く」


 鴨川条約は異世界転移後に日本国に残留していた外国籍の航空機や船舶を含む資産、財産を保護する条約だ。

 調印場所の名を取り鴨川条約と呼称される。


「今、思えばなんで鴨川市だったんですか?」


 佐々木総督の後ろの席に控える川田次席補佐官の呟きに秋山首席補佐官が答えてくれる。


「当時はどの国も本国と連絡が取れなくなり、改めて国際条約の結び直しが急務だった。

 各都市で同時に交渉の場が設けられたんだが、大都市には食料付属で交渉団を歓迎できる状態じゃなくて、地方都市で調印された一環で鴨川市になった」


 佐々木総督は参加国、都市の代表団の顔を見渡し、その心情に探りを入れる。

 公安調査庁の調査官だったころに培われた技術だが、そこから推し測れるチカチローニ市長の心情は


『何か、変態的なエロい事を考えてる』


 だったが、国際的な会議の場でそんなことは有るまいと首を横にふり、秋山首席補佐官と川田次席補佐官を困惑させる。


「チカチローニ市長、今のガンダル市長の申し立てはありますか?」


 議長役のカルロス市長に促されて、チカチローニ市長が立ち上がる。

 会場参加者を猟奇殺人鬼、変態性犯罪者とも呼ばれる容姿で見渡すと、幾人かが椅子に座ったまま後退りしたり、小さく悲鳴をあげているのに気がついてしまい悲しくなる。

 北サハリン軍がテロリストが運用していた『ディクスミュード』を奪取し、『ウラジオストク』として運用していたのは事実だ。

 元々の『ウラジオストク』は、転移前の2014年にフランスからロシアに引き渡される予定だった。

 しかし、、クリミア併合やウクライナ東部ドンバス地域における州庁舎占拠等のウクライナ情勢の悪化で、引渡しの延期から中止と交渉が行われていた。

 しかし、転移の影響からか交渉の関係者がいないことや記憶の混濁で、交渉結果がわからないまま18年の歳月が流れてしまった。

 そんな中に『ディクスミュード』を発見、奪取出来てしまったのだからロシアの権利を引き継ぐ北サハリン首脳部の張り切り具合が事態を悪化させた。


「些かの不幸な記憶違いと誤解があったようで、本件に関しては深く陳謝し、改めて我々が『ウラジオストク』と呼ぶ艦を返還することも吝かでは無い。

 しかし、どうだろう?

 我々の心情的には、本来の『ウラジオストク』に対する違約金は支払われてない」


 その点を追求されると、スイス系のガンダル市長は苦しくなる。

 実際に違約金が支払われたかは確認のしようが無く、フランス系住民の圧があるだけで、他のヨーロッパ系市民のからすれば、比較的新品の軍艦が入手出来ればラッキーくらいにしか考えていない。

 それでも市民の二割を超える最大派閥フランス系の顔は立てねばならない。


「違約金問題は地球で支払われたかもしれないし、支払われなかったもしれない。

 今となって確認のしようが無いが、チカチローニ市長はそれを議論しようというのか?」

「決着は永遠に着きませんな。

 そこで、私としては第三案として、対象艦を共同名義で第3者に貸与するのはどうかとの話で

 す」


 実際問題、『ディクスミュード』が返還されたとして、人口8万人程度のエウローペでは運用が難しい。


「南部独立都市同盟の共同運用艦、或いは国際連隊の運用母艦として北サハリン、エウローペが共同名義で提供する。

 いかがでしょう?」


 チカチローニ市長の提案は賛成多数で受諾された。

 なお、謝罪についてはチカチローニ市長が北サハリン共和国を代表する形で実施することとなった。

 本国の北サハリン共和国大統領は大陸での表舞台に出さないのは一致した意見であり、チカチローニ市長が謝罪を代理する案も受け入れられた。

 そして、これがチカチローニ市長が市長としての最後の仕事となった。


 サミット初日を終わり、チカチローニ市長一行は、入港する『ウラジオストク』を出迎える。


「もうすぐ名前は代わるが、新たな建造ドックを持たない我々は日本に警戒されてはならない。

 共同部隊として支援を引き出し、大陸での技術的アドバンテージを長期に維持する。

 属国根性丸出しだが、船が無くなれば我々は分断されジリ貧だ。

 本拠地が大陸の華西や艦船を新造できる高麗とはそこが違う。

 大佐、君は自分の艦が十年後も海に浮かんでると信じられるかね?」


 北サハリン共和国海軍艦艇は、いずれもソ連時代に進水したオンボロ艦ばかりだ。

 代替え艦は無い。

 イグナチェフ大佐は港に上陸したばかりで、答えづらい事を聞かれて困惑する。


「その頃までには我が国も新造艦を造れるよになっていたいですね」


 曖昧に応えるしかない。

『ウラジオストク』から搬出された航空機が国際共同駐屯地に運ばれていく。


「あんまり大規模に持ってくると、航空戦力の無いドン・ペドロ市の立場が無くなるから一機種

 に付き3機までと懇願されたんだよね」

「我々の後の時代は航空機が国を守っててくれます」


 Tu-95戦略爆撃機、MiG-31迎撃戦闘機、Su-24戦術爆撃機、Su-27戦闘機、Su-30複座多用途戦闘機、Su-35長距離多用途戦闘機。


「航空祭、本当に楽しみですね」

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