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日本異世界始末記  作者: 能登守
2033年
253/282

大統領(候補)の陰謀

 大陸南部

 高麗民国 任那道

 道庁庁舎ビル


「咸鏡諸島、卵島、琵琶島。

 永興諸島、薪島・大島・小島・熊島・麗島。

 モンスターの存在を確認、住民は避難済みでいません」


 咸鏡諸島や永興諸島は元々は朝鮮民主主義人民共和国の地方自治体や永興湾といった場所にあった島々を転移後に高麗民国が併合、呼称した諸島の名だ。

 ここに呼ばれた石狩貿易CEO乃村利伸は、道知事の白泰英から現状の高麗民国の説明とある計画の支援を求められていた。

 白知事は在日韓国人の財界若手のリーダーだった人物であり、大阪を拠点に在日韓国人を纏め上げて百済市を建設した人物だ。

 半島から仕事や観光で来ていた訪日韓国人を第二都市の新羅市、高句麗市に放り込み、北朝鮮系は伽耶市に棲み分けさせた手腕を持つ。

 その後の増加した人口や本国けらの移民で耽羅市を立ち上げ、高麗民国大統領を越える権力を持っている。


「北朝鮮のことは言えませんが、島に名前が付いてないのが多く、諸島ごとに管理という形になりました」

「島民とは揉めませんでしたか?」

「揉めましたよ。

 北朝鮮の島民はロクなメディアや娯楽もありませんでしたかね。

 異世界転移という概念すらありません。

 朝鮮半島の本国とは連絡がつかなくなってましたが、本国自体の電力事情から通信途絶なんて、よくあることと呑気に暮らしてました。

 そのくせ、軍事力だけはあるんですよ。

 海洋警察の巡視船で行ったら警備艇2隻に潜水艦4隻でお出迎えですからね。

 錆びだらけで修理不可脳なオンボロ艦艇ばかりで、潜水艦は潜水できない有り様でしたが、魚雷発射菅は生きています。

 当時の海洋警察官達は生きた心地がしなかったでしょう」


 それらの北朝鮮艦艇は高麗民国に帰属後、全てスクラップとなった。

 高麗民国の造船ドックは匙を投げ、日本、北サハリンにも協力が打診されたが、返ってきた言葉は、


「ものには限度がある。

 あんな骨董品、どうにか出きるか!!」


 で、ある。


「今なら何とか出来たかもしれませんがね」


 樺太の旧ソ連兵器が保管基地から大量に出土し、資源が確保できて大戦中の戦車や自衛隊の旧航空機を復元してる現在なら確かになんとかしたろうが、転移直後で資源も枯渇していた当時では無理があった。

 せの


「北朝鮮側の諸島はこの通り無人化され、機械による監視機器を置くだけです。

 その間に随分、入り込まれたようですが、いずれは一掃します」


 現在の高麗の軍事力なら可能な筈だ。

 避難した島民はまとめて大陸の北朝鮮系住民が中心の任那道高句麗市の住民となっている。


「続いて旧韓国側ですが、鬱陵島、観音島、竹嶼と複数の岩島からなる鬱陵郡。

 転移後に人口も増え、2万人の島民が暮らしています。

 地球での大陸からの距離もあったことから当分の間は海洋結界の恩恵に預かれる本国諸島唯一の安全地帯です」


 鬱陵郡は地方自治体や警察署ごと転移しているから混乱は少なかった。

 人口の六割が第一次産業に従事していたので、食糧危機は起きていない。

 むしろ島民の親族が、彼等を頼り移住してからの方が問題となっていた。

 これも大陸への移民で解消された。


「影島諸島、旧釜山広域市に属していますが、影島区として12万人の人口を擁し、加徳島、五六島、乙淑島と周辺の島々で構成されています。

 現在は影島市となっています。


 続いて巨済島、我が国の首都で付属の島々を含めて人口25万人。

 この世界最大の造船所があり、我が国経済の要でもあります。

 その西側に閑山島、140の島々で構成される統営諸島は、南海市に合併されて人口約5万人。

 約2000の島々で構成される旧全羅南道は珍島、莞島を中心に珍島特別自治道人口約17万人。


 本国諸島人口約61万人の有権者が遷都反対勢力と推定されます

 」


 白泰英知事が考えているのは、百済市への遷都であり、本国諸島からの大量移民だ。

 本国諸島は自給率も低く、国防警備隊の戦力が割かれている現状に大陸の高麗民国任那道道民は苦言を呈している。


「何より遠く離れた本国のエリート共に色々口を出されるのが気に食わない、ですか。

 内政やら外交、防衛を総督府に丸投げした我が国はまだうまくやってたんですな。

 しかし、人口差から次期大統領選挙の勝利は揺るがない。

 何を懸念しているんです?」

「国防警備隊です。

 本国の首都警備旅団は私が巨済の大統領府に赴けばクーデターの動きがあります。

 大陸の第1軽歩兵師団は私に同調してますが、簡単には移動できない。

 海洋部は艦艇の建造、整備能力を巨済島に抑えられていて、我々の味方をしずらい」


 面倒な話になりそうだったので、乃村は帰りたくなった。


「日本への介入要請なら無理ですよ。

 基本、事なかれ主義なのに面倒な事には途端に一致して牛歩する。

 本格介入が終わる頃には全部終わってます」

「私も日本に長年住んでいたから、その体質はわかっています。

 そこで次のサミットにまでに大統領選は終わるので、遷都令を出す前に首都警備旅団に大陸自衛隊との大規模演習を働き掛けて貰えませんか?」

「それだけなら私を呼ぶ意味はないですよね。

 総督府の補佐官達なら乗りそうな話だ」


 白知事はようやく本題に入れると、満足そうな顔をした。


「奥様の那古野市市長当選おめでとうございます。

 首都警備旅団輸送後の海洋部艦艇の一斉整備を依頼したい」





 大陸東部

 日本国 那古野市

 ホテル 丸岡


 石狩貿易が運営するホテル丸岡において、市長選挙を当選した白戸昭美の就任パーティが行われていた。

 防衛大臣次男の嫁で、大臣の元第1秘書。

 大陸財界の重鎮の妻で、父親は海上自衛隊練習艦隊司令の海将補となれば政官財からの出席者が列をなしている。

 先週行われた中島飛行機、元社長が就任した中島市市長就任パーティを上回る規模だ。

 当初は浦和市の市長選挙に出るか迷った彼女だが、圧倒的支持率が期待出来た那古野市で良かったと思えていた。

 那古野市は大規模な港湾都市だが、移民の受け入れや資源の搬入は稲毛市に任せて造船に特化している。

 姫路市の移民植民も始まり、あちらは盛況だが船舶の発注が無くなれば市の経済が悪くなる。

 だが転移前の船舶の老朽化が叫ばれてる昨今、市の経済は潤っていた。

 何より海上自衛隊や海上保安庁が拠点を置いてる那古野市に取って、彼等は大事な顧客だった。


「奥様、旦那さまからご連絡が」


 使用人から伝えられた報告に盗聴防止の対策が施された部屋に通信用魔道具を携えた女性魔術師が待機していた。,

 魔道具である水晶に手が触れると、念話が脳内に伝わる仕組みで、現状は公安でも盗聴出来ない優れものだ。

 夫から伝えられた白泰英道知事からの提案にかんがえこむ。


『確かに大量受注は助かるけど、それって高麗民国本国を一時的に無防備にするってことじゃない?

 大丈夫なの、これ?』

『陰謀劇だから細部は話せなかったから断られた、と言い訳は出来てるから乗らない手もある。

 リアルタイムでこんな相談が出来るとは知事も思っていない。

 那古野に帰って直接伝えると言ってあるから時間は稼げる。

 陰謀に加担してると、非難されれば君にもマイナスだろ?

 遷都利権は魅力的だが、今回は見送ろう』


 利伸の方にも対となる水晶の魔道具と専属の魔術師がいる。

 彼等彼女等の口は莫大な給与で塞ぎ、いざとなれば消えて貰う算段は脅しも掛けてある。


『いえ、やりましょう』

『えっ?』

『どうせやるなら巻き込むお友達は大勢誘ってね。

 大丈夫よ、国益になるなら総督府は渋い顔をしつつ、協力してくれるわ。

 それに大統領からの正式大統領令なら合法なんだから』


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