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日本異世界始末記  作者: 能登守
2032年
238/274

独立戦車旅団と大使公邸パーティー

 日本国

 北海道

 北海道大演習場

 島松地区


 本国第二位の広さを誇る北海道大演習場は、札幌市、北広島市、恵庭市、千歳市にまたがる地域に点在する陸上自衛隊の演習場地区の総称である。

 そのうちの一つの島松地区は、特科や迫撃砲の射撃訓練や戦車や航空自衛隊の航空機による実弾訓練まで行える広大な敷地である。

 その島松地区において、アウストラリス王国や高麗民国、北サハリン共和国、エルフ大公国、シュモク伯邦国といった各国の大使や観戦武官を招いて、第7師団並びに第11師団による師団戦車射撃競技会が行われていた。

 戦車小隊による戦闘射撃を科目として実施されたが、異様なのはその数である。


「これが日本国最強の第7軍団か」

「第7戦車旅団です。

 そこは大事なのでお間違いなく」


 アウストラリス王国大使アルトハン伯爵が呻いていて、女性自衛官の訂正が聞こえていない。

 戦車砲の轟音と衝撃波、鋼鉄の装甲車両が大挙して移動する圧倒されてるのだ。

 第7軍団はもちろん俗称だ。

 自衛隊は建前上軍隊では無いので、『軍』という漢字を使った部隊は存在しない。

 しかし、なぜわざわざ軍団と大使が呼んだのかというと、その規模が他の師団に比べて大きいからと、第7師団と第7戦車旅団が北部方面隊で隣あって駐屯、配備されているからだ。

 この世界に転移後、日本は北サハリン共和国から千島列島と南樺太を返還された。

 南樺太には第2師団が、千島列島には第5旅団が師団に格上げ、拡充して駐屯することとなった。

 そうなるとその穴埋めの北海道防衛はどうなるかと問題になった。

 答えは第7師団への普通科2個連隊の追加と第11旅団の師団への格上げである。

 旅団司令部は東千歳駐屯地にそのまま、第7戦車旅団として独立させた。

 これは西方大陸アガリアレプトに交代で戦車連隊を派遣する必要があった為に司令部を分ける必要があったのと、隊員数が膨大に増えた為に師団司令部では賄いきれなくなったのが大きい。

 現在の各師団は概ね九千人規模だが、第7師団がそのままだと一万三千人規模となる。


「ゆえに防衛省は戦車連隊を独立旅団とする決定わを下しました。

 同時に第7師団が防衛的に空白地となっていた道東や道北の駐屯地の移転です」


 第7師団司令部と第7即応機動連隊が旭川に駐屯し、普通科連隊はそれぞれ稚内、釧路の駐屯地に移動した。

 ちなみに師団付きの戦車大隊や旅団付きの高射特科大隊を初めとする特科、後方支援大隊も新設された。

 第1空挺旅団や第1特科旅団、中央即応旅団、富士教導旅団と違い、3個も独立戦車連隊を抱え隊員数は六千人なので師団とはならなかった。


「90式戦車は大陸で観られる10式戦車より上と聞いてますが、なぜ旧型の90式より劣っている評価なのでしょうか?」


 アルトハン伯爵は、身分を笠に着ず、丁寧に聞いてくるのだが

 大使一行の世話係を命じられた旭香織二等陸尉は、


『またこの質問かあ』


 といううんざりした気分を顔にも声にも出さずに答える。

 彼女は第7戦車旅団司令部総務課広報係長という役職だが、若く容姿が優れていると、マニアからはアイドル的扱いを受けており、イベントにおけるMCや広報番組のパーソナリティーによく抜擢される。


「大陸といいますか、各師団の戦車大隊で観られる10式戦車は標準型ではなく、着脱式装甲、戦術情報処理装置システムなどを搭載していない廉価版のE型だからになります。

 標準型のA型は南樺太の第2戦車連隊に集中配備されています」


 標準型とは要するに転移前に生産されたり、生産中だった車両のことだ。

 E型もカンタンク等と蔑称で呼ばれたりするが、90式と比べても劣るところは少ない良い戦車ななのだ。

 第3世代主力戦車としては完成された強さを持っている。

 転移後も少数生産していたので、連隊司令部付き予備車以外はこの型だ。


「逆に90式は第7戦車旅団にほとんどを集めました。

 各戦車連隊指揮下の五個戦車中隊を六個戦車中隊に増強、三個の大隊司令部付き戦車小隊、各連隊司令部付き戦車小隊、旅団司令部付き戦車中隊、述べ306両。

 ここ以外には富士教導旅団第2戦車大隊に30両が配備されています」


 事故による廃棄や展示品となっている車両もあるがそこまで詳しくは説明しない。


「現在の各師団には、10式戦車E型30両による戦車大隊が配備されていますが、それらはあくまで防衛用であり基本任地から離れることはありません。

 しかし、第7戦車旅団は有事における剣的役割を重視し、戦端を切り開く、斬り込み隊となっる訓練を日夜続けていくことでしょう」


 転移前は戦車の定数削減や16式機動戦闘車への置き換えが検討された。

 しかし、転移の影響による混乱と物資不足で肝心の16式機動戦闘車の開発と配備が遅延した。

 また、実際に海洋からのモンスターの脅威が現実化し、高い火力と機動力を誇る16式機動戦闘車が即応できる即応機動連隊に求められたのが大きい。

 同時に戦車の強力な火力もだ。

 また、失業対策の隊員数増加も使える兵器があるのにわざわざ廃棄させる必要がなくさせた。

 皇国との戦争で、日本のカーフェリーを総動員して行われた南方大陸あアウストラリスへの上陸作戦とその後の戦いで、戦車部隊の存在意義を示せたのも大きい。


「なお、将来的に大陸において機甲師団設立も我が国は視野にいれております」


 その言葉に大陸に領土を有している各国の代表は慄いていた。


『16年後くらいにね』


 肝心の時期については、言葉を濁しておいた。

 その頃まで現状の移民政策が続いていないなら廃案になる可能性もあるが、勝手にビビってくれるなら口撃を訂正する必要もなかった。




 大陸東部

 新京特別行政区

 駐日エルフ大公国大使館


 この日は大使公邸にてパーティーが行われていた。

 エルフ達からすれば、パーティーは、深夜の二次会要員やハニートラップ対象の確保の場なのだが、日本側はガードが高く、必ずパートナーとお付きの者が同行することが義務付けられた。


「手強いわね。

 逆に貴族達なら多妻や妾なんて当たり前だから気にしなさすぎて困るんだけど」


 エルフ大公国大使のベルタ・ダンディオケは、大使就任にあたり、ピロシュカ大公より子爵位を賜った。

 これはピロシュカ大公が複数持つ爵位の一つで初代皇帝から賜った物ので王国も文句が付けがたい。

 また、爵位には領邦が付随するので、長年代官だけ存在していた領邦にいきなり領主が誕生して領民と近隣領主を騒然とさせた。


「あそこ、天領じゃなかったんだ?」

「今まで妙に税が低いと思ってましたが、領主さまがいるとなると高くなるんで?」

「うちの村の若者から搾り取るのは勘弁してください。

 あいつ、領主様の兵隊になるんだって両親や恋人をほっぽりだして領都に逃げて困ってるんです」


 ベルタや東京の駐日大使は、太公国と日本の外交に携わる責任者として、性的に節度ある人物として選ばれた。

 現に六本木五丁目の南半分を租借されたマヌエル大使は、赴任以来まだ日本人女性一人と六本木五丁目北半分を租借された呂宋大使の娘しか、孕ませていない。

 ベルタも今夜くらいはとお相手を探していたが、顔見知りを見付けて声を掛ける。


「吉田三佐がパーティーに参加してくれるとは珍しいですね。

 いつもの制服姿ではなく、ドレス姿も美しくて、嬉しいですわ」


 総督警護室長吉田香織三等陸佐は、今日はラメ入りレース袖シフォンスカートロング丈のパーティードレス だ。

 総督のお付きでパーティーに来ることはあるが、制服姿で参加者としては珍しい。


「今日は旦那様と?」


 吉田三佐は既婚女性だが、今日は目立たない中年の付き添いだ。

 恐らくは総督府の高官だが、ベルタの記憶には無い顔だった。


「本日は付き添いなんですよ。

 こちらの方が独身なのでパートナー役を頼まれまして」

「大使閣下にはお初にお目に掛かります。

 公安調査庁新京支局局長の波多野と申します。

 大使閣下には是非とも人払いの出来るお部屋をご用意願いたいのですが」



 執務室に移動したベルタ、波多野、吉田の三人だが、パーティーを抜け出た不満をベルタは隠そうともしなかった。


「手短にお願いね。

 ホストがパーティーを抜け出したままでは、様になら無いから」

「まあまあ、今日はお伺いしたいことがありまして、自衛隊とも情報は共有した方がよいと吉田三佐にも来ていただいたのですが………」


 吉田の手からダークエルフがエルフに変わる動画の入った携帯端末を見せられ、ベルタの顔色は蒼くなる。


「ダークエルフはエルフ大公国による捏造。

 我々はそう断定しました。

 我が国は被害を被っていないはずなので……

 ちょっと、いきなり脱ぎ出さないで下さい」

「秘密を守る代わりに身体を差し出せ、ということじゃないの?」


 ベルタのドレス脱ぎやすく、下着も扇情的なものだが、吉田三佐がすぐに鞄から出したバスタオルを掛けてしまう。


「あなた方との交渉は常に複数人で行うべし。

 私が同行して正解でしたね」

「いや、全く。

 まあ、その反応からしてこちらの断定は間違ってなかったのですな。

 さあ、ダークエルフについての真相を聞かせてもらいましょうか大使」

 

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― 新着の感想 ―
言い訳とか説明じゃ無くて、初手脱ぐと言うのがひどい笑
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