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日本異世界始末記  作者: 能登守
2032年
237/274

自作自演疑惑

 大陸北部

 ウンゲルン子爵領 山間部


 領都を占領されたウンゲルン子爵は、旗印の皇女タチアナを伴い、討伐軍の山狩りを回避する為に幾つかある洞窟に皇国軍を潜ませていた。

 だから寄りによってタチアナを隠そうとしていた洞窟がいつの間にか、闇の妖精族と言われるダークエルフのアジトとなっていた。

 すでに供廻りの騎士や兵士達がダークエルフ達と斬り結んでいる。

 エルフよりは豊満で筋肉のあるダークエルフだが、人間の戦士に比べれば華奢もいいところだ。

 暗殺術に長けた俊敏性はあるが、戦支度をしていた騎士の鎧と盾には、その長所も生かせていない。

 そして、ダークエルフ達が身に纏う衣服や黒い刀身の剣は貧相な物が多かった


「このまま押し切れ!!」


 騎士隊長が叫ぶが、次の瞬間、洞窟に生えた蔦が彼と兵士達に纏わりつき、縛り上げて動きを止める。


「精霊魔術だ!!

 心を強くもち、周囲に気を配れ!!」


 自らも剣を持ち、タチアナを守るべく、子爵がダークエルフ達の前に家宝の魔法剣を構える。

 子爵家が保有する前に剣は、さほど上等な物では無いが、実体化してない精霊を傷付けるくらいは出来る。


「ウンゲルン子爵よ。

 この山はダークエルフ達の縄張りなのか?」

「申し訳ありませんが殿下。

 今の今まで我が領はおろか、大陸北部に奴等がいること事態信じてませんでしたよ」


 タチアナへの返答は嘘ではなく、大陸北部にいる者達の共通認識である。

 エルフ達はダークエルフ達を迫害の対象としており、エルフ大公国のある大陸北部には近寄らない。

 活動領域は、大陸中央、南部、西部と知られており、冒険者として活躍するエルフがたまにダークエルフと戦いになることがある。

 ちなみに大陸東部は日本が来るまでほとんどが未開拓地だったので詳細はわからない。

 不思議と死人がでない膠着状態となる。

 洞窟の中からなのか、派手な精霊魔術を使ってこない。


「閣下、騒ぎを聞きつけ山狩りが」


 前後を挟まれれば万事休すだが、ダークエルフ達が徐々に洞窟出口に移動を始めていた。


「最早ここまでだ!!

 奥の武器や食糧を諦めて山から離れろ!!」


 ダークエルフの頭領らしき者が叫び、洞窟の出口に殺到し、集まってきた王国軍の討伐隊に焔の雨を降らし、土の槍で兵士達を貫き、風の刃が首をはねる。


 その光景を見てタチアナ皇女は呟く。


「さっきと全然違うじゃないか。

 なんだあの強さは?」

「ど、洞窟の中だから加減してたんじゃないですかね?」


 ウンゲルン子爵も些か自信無く呟く。


「殿下!!

 奥に凄いものが隠されてましたぞ」

「あ、ああ、ヴィアゼムスキー子爵いたのか……」


 微妙にヴィアゼムスキー子爵と距離を取りたいタチアナだが、彼の発見した戦果を確認する為に奥に進む。

 それは膨大な食糧と無数の銃火器、弾薬が梱包された木箱だった。


「これは……

 エルフ大公国で使われてる後装式小銃。

 我々や賊軍のより射程距離や連続射撃に長じた銃です。

 それがこんなに……」

「これだけあれば、皇国軍は建て直せるな。

 ウンゲルン、ヴィアゼムスキー兵達に銃を配れ!!

 まずは領都を奪還する」


 山狩りをしていた王国の討伐軍は、ダークエルフ達に蹴散らされ敗走している。

 分散した味方を集め、小銃を配る時間は有りそうだった。


 兵達に銃を配るヴィアゼムスキー子爵は、洞窟内を歩いて気が付いた。


「ダークエルフの死体が一つもないな」






 一連の戦いを監視していた日本国自衛隊第11先遣隊偵察分隊は、遠く離れたデルモント男爵領から偵察用UAV スキャンイーグルを発進させて、状況を監視していた。


「精霊の力を使えば、エルフ達の索敵範囲は数百メートルの生物を把握できる者もいるそうだが、機械による監視は精霊も探知できないようだな」


 第11先遣隊隊長の蒲生三等陸佐、分屯地の庁舎のモニターから監視映像を眺めていた。

 精霊達は生命体や魔力を帯びた器物、霊体が動かしているアンデッドは感知するが、ただの器物であるスカイイーグルにはそれが何なのかわわからずに反応しない。

 日本本国や各植民都市の魔術科学生の数少ない精霊使いの夏休みの自由研究で発見された事象で、大陸の知識人、エルフも知らない話だった。


「ダークエルフの目的が気になる。

 そちらに機体をまわせ」


 リアルタイムで伝送される映像は、分屯地を経由し、新京の大陸方面総監部や海上プラットフォーム『孝昭』を経由し、本国の市ヶ谷防衛省情報本部にも共有されている。

 そもそもが皇国軍をエルフ大公国に支援させるように遠回しに商社、ヤクザを経由して持ち掛けたのは大陸総督府だ。

 エルフ達がどう皇国と接触するか、そこに興味を持ち、最初から監視下にあったのだ。

 そして、まだ日本と未接触の種族がいたばかりに興味の対象が移ってしまった。

 森の中をダークエルフ達が駆け抜けるが、赤外線による監視と最大速度148km/hからは逃げられない。

 日本側としては皇国軍の同行も気になるが、新しく接触した種族が気になるのか、大臣達から総督、高級官僚、学者まで興味津々で集まっていた。

 散り散りになっていたダークエルフ達は、集結地点が決まっていたのか、隣の領邦までその日のうちに到着していた。

 その間にスキャンイーグルも2機目に交代している。

 スキャンイーグルの航続時間は24時間が限界だから仕方がない。

 ちなみに回収の仕方は、スカイフックと呼ばれるロープを張った装置に、機体翼端のフックを引っ掛けるやり方だ。


「間に合って良かった。

 さて、続き続き」


 集まっていたダークエルフ達は女性の集団だった。

 誰もが固唾を飲んで、映像に釘付けになっているのは、ダークエルフの女性達が、エルフの名を関するだけに美女、美少女揃いだったからなのは、間違いなかっただろう。

 そんな彼女達がおもむろに服を脱ぎはじめた。


「お、おお?」


 蒲生三佐が気まずそうに唸る。

 まわりにはオペレーターの女性自衛官もいるのだ。

 同様の高級機材による出刃亀行為は、総監部や情報本部でも偉い人達を女性自衛官や女性学者達が白い目で見る地獄の惨状を起こしていた。


「ま、待て何か呪文を唱えはじめたぞ!!」


 市ヶ谷でも学者やオペレーター、副官に白い目で見られていた情報本部本部長の指摘にモニターから目を剃らしていた男性陣が再び注目する。

 モニターの中のダークエルフの褐色の肌がみるみる白い肌に変わっていく。

 ナイスバディなスタイルは、スレンダーな肢体に代わり、美形であることは代わらないが、別人のようだ。

 すぐにダークエルフ的な黒い衣装を燃やし、エルフらしい草木色のチュニックやワンピースに着替えていく。


「隊長、これは?」

「連中が用意していたのは、エルフ大公国の制式小銃、リーエンフィールドだったな?

 あれだけの数をどう集めたか、気になっていたが、ダークエルフはエルフの汚れ仕事用のカモフラージュだったんじゃないのか」

「だとすると、これまでのダークエルフの悪行は……、私掠と偽装工作……」

「だとするなら、連中との付き合いを少し考えなくてわな」


 ダークエルフという種族の実在から疑うところから始めた方が良さそうだった。

 その後、皇国軍がウンゲルン子爵領領都を奪還するのだが日本側はこれっぽっちも興味を示さなかった。

 ただし、日本側も偵察隊や情報本部に女性自衛官の採用を多数進言され、些かの信頼関係にヒビが入る被害が生じていたのだった。

 特にエルフの監視には女性自衛官専門の分室も創られたが、やってることが性別逆になっただけとすぐに解散されることになる。


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