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乙女ゲームの悪役令嬢に転生する…予定でした

掲載日:2026/02/06

悪役令嬢ものが好きだった。特にヒロインがざまぁされる悪役令嬢もの。分不相応な願いを持った女を格上がざまぁするのって気分いいじゃない?

そう思っていたら。


「乙女ゲーム転生成功!」

なんと、人気タイトル「恋する二人には虹がかかる」、通称「恋虹」の美少女キャラ、リーゼに転生できたってわけ!さあざまぁしてやりましょうかね…。と思っていたのだが。


「ヒロイン、王女なんて…、しかも私、攻略対象の誰とも婚約者じゃないじゃん!なに?ストーリーの強制力!?世界が私の邪魔をしているんだわ!」

屋敷の庭でティーパーティーをしながらくだをまく。

「いや、乙女ゲーム関係なくない?攻略対象みんな王族だもん。リーゼの家じゃ無理だよ。」

友人のユーナがつっこみを入れてくる。彼女も転生者で、この乙女ゲームの元プレイヤーらしい。私が好きに行動していたら、「あなた、転生者だよね?」と話しかけてきたのだ。だから始めはヒロインかと思った。だって、悪役令嬢ものではそうやって悪役令嬢に話しかけてくるのって大体ヒロインじゃん?しかも彼女は言うのだ。この乙女ゲームに悪役令嬢は存在しない。そもそも他の乙女ゲームにも期待するような女キャラはいないって!


「浮気相手になりたい女なんていないんだからさ、女の欲望を満たす乙女ゲームコンテンツでそんなポジションにするわけないじゃん。悪役令嬢ものが大体キャラの婚約者設定なのも、自分が略奪する方になりたくなくて、正当性がほしいからでしょ?」

「…なんかトゲがない?」

「私は思ったことを言ってるだけだよ。乙女ゲームも悪役令嬢も、欲望を満たすものっていうのは変わらない」

なかなかひねくれた奴だと思う。

「で、なんだっけ、ヒロインは王女でー」

「攻略対象は別の国の王子たちだね。ヒロインはこの大陸一の伝統と力を持つ国の王女で…攻略対象の男たちはその王家の縁を結びたくて城に訪問してるってわけ」

「…わたし、つけいる隙ないじゃない」

私の家は侯爵だが、王家の縁談を邪魔なんかしたら自分が危ない。

「やってみればいいんじゃない?そんなつもりないのに、お姫様を差し置いて王子さまに迫られる、とても気分がいいと思うよ。そういう小説もあったし」

「無理だって…王女様の方が美人だし」

そう。ヒロインの方が倍美人だったのだ。化粧しても、素材が上だった。ずるくない?男譲る気ないじゃん。悪役令嬢ものではそうじゃなかったのに。ずるい。自分だけそんな恵まれたポジションで、スペックで、こちらを勝たせるつもりがない。

「まーあの様子だとお姫様だいぶ魅力パラ上げてるね。努力したんだね」

「なにそんなのあるの」

「あるよ、そんな簡単に手に入っても面白くないじゃん」

「そういう感じなの乙女ゲームって」

「そうだよ」

そうなのか。努力してるのか。

「じゃあ私この後婚約者と会うから行くね」

「は、何それ聞いてないんだけど」

「リーゼもほどほどの相手捕まえないと、すぐ売り切れるよー」

「薄情者ー!」

去っていくユーナ。だがそれを見送った後、空虚感が押し寄せる。

「…私だってヒロインに産まれたかった」

本当は悪役令嬢じゃなくてもいい。ヒロインでもよかった。誰か素敵な王子様に選ばれて、幸せなハッピーエンド。そういう話に憧れてた。だけど、前世はそんなの無理だった。美人でもなかったし、特別でもなかった。誰かに選んで貰えなかった。だけど、そんな私でも、物語の中でなら特別になれた。ヒロインに感情移入できなくなったら悪役令嬢に。でも、その悪役令嬢が始めからいなくて、ただの都合のいい妄想だっていうなら…。

「私はどう生きればよかったわけ…?」

ざまぁするために生きてきたのだ。でも、それが私の見当外れで、ヒロインは真っ当に生きてるだけ。私には彼女を害するほどの力もない。そもそもただの臣下だ。自分が王女を差し置いて自分の方が魅力的だと攻略対象たちにアタックするようなバカな女になることも許せなかった。

どうせなら誰かに羨まれるような人生を送りたかった。見下されたり憐れまれるような人生はごめんだった。折角貴族に産まれたのだから。

「…そうよ、別に攻略対象にこだわる必要なんかない。攻略対象たちより格上を狙えばいいんだ。そうすれば悪役令嬢になれる。ヒロインより上にいける…」

それなら竜王や精霊王だろうか。別に本気で狙っているわけではない。ただの逃避だ。自分でも分かっている。だけど今だけは馬鹿らしいことを考えさせてほしい。折角いい産まれだったのを自分で棒に振ったなんて思いたくないから。自分の憧れがすべて無駄だったなんて思いたくないのだ。だから、王子様に救われたい。ヒロインより格上で、自慢できる、そんな王子様に選ばれたいのだ。

「あーあ、誰か王子様寄越してくれないかなあ」

私は口を開けて餌が振ってくるのを待つばかり。

それがどんなに分不相応な願いでも捨てきれないのだった。

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