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異世界生活の日常  作者: テンコ
第5章 彼女の帰郷
72/99

5-02

5-01と5-02の間に、プロローグの0-01が入ります。

 翌朝、朝食後に泊まっていた宿を出る。

 長寿種なので成長が遅いと言っても、成長期はある。今が丁度その時なのだろう、王都を出る時アリエルさんと選んだ靴のサイズがきつくなってきた。

 激しい運動や遠出用の服飾関係は防具屋に併設されているので、まずはそこへ向かう事に。


『烏丸、お願いしますね』

『ハッ……』


 何時も通り寡黙なのか返事が面倒なのか、心すら読めない彼の返答。それを聞きながら、宿のおば様に場所を伺ったお勧めの防具屋を目指す事にする。


 朝方や夕方の人通りが多い時間帯は、流石にシロクロ他を呼び出すと面倒になりやすい。烏丸やタマ、ソラ辺りを呼ぶのがここ半年近くの習慣になっていた。


 そう、王都を出てすでにそれだけの期間が経つ。

 イヴァラさんから貰った地図だと、すでに予定している3/4程の距離は稼いでいる。当初1年近くと思っていたけれど、やはり身体能力と獣化の恩恵は凄まじいらしい。

 超長距離の移動でも苦も無く踏破できた。


 ちなみに獣化する際は服等は全部装備欄から外す。一度そのまま変わって真っ裸になってしまった事があった為だ。

 あの時は本当に驚いた。


 アリエルさんの護衛を受けている時期に、1人泊まっている宿で試した時の事。

 お気に入り……とは言っても定番なエプロンドレスなのだが、細切れになってしまった。哀しくて泣きそうになってしまったのも思い出だ。この身体になって、涙腺が驚くほど緩いのを気が付かせてくれた事件でもある。


『じゃ、行きます』


 返答は無いが了承する様な感情が流れ込んできたので、そのまま歩き出した。





「いらっしゃーい」


 平屋で大き目の防具屋に入る。

 すると元気の良い女性店員の声が耳に入り、狐耳が動くのを感じた。声のした方向に無意識なのだろう向いてしまった様だ。


「何かお探しですかー?」


 孤児院の妹分、リンディさんに似た年頃の娘さん。その彼女に声を掛けられ、靴が合わなくなった事と、新調したい旨を伝える。

 同時に私の身分と、どんな依頼を受けているかを大雑把に説明しておくのも忘れない。


 防具屋。

 この様な店を利用する人種は決まっているからだろう、その説明を聞いた店員に案内され該当の商品棚に案内された。

 腿裏まで覆う、足裏と爪先を補強したブーツ。それを適当に見繕いながら、試着の許可を貰った。

 一応暴力で解決する案件や、危ない場所にいく仕事なのだ。その辺の妥協は出来ない。靴が合わないと動きも鈍くなる、と言うのは姉さまに習った事だし、実感はしてきた。


 椅子を借り受け、ブーツを試着していく。

 男だった時はまぁ運動不足なのか身体が硬く、履く為に苦労したものだ。しかしこの身体になってからは運動を欠かしてはいない。そのせいか楽に履き替える事が出来る。

 小さい事だが嬉しいモノだ。


 店内には男性店員もいたのだが、私が片足を上げて履き替えている瞬間にこちらを見ようとしたので、無駄な動体視力を活用してそっと位置をずらす。

 昔ならそのままだったが、今は羞恥心が強く出てしまっている。同棲を開始したばかりの頃、アリエルさんに散々注意されたのを少しばかり懐かしく感じる程。


 だってスカートとか布じゃん……そんな考えを矯正され今の私がある。いや別に関係無いか。


 男性店員は、それでもプロなのか何食わぬ顔で仕事に戻って行った。そのまま幾つか試着を繰り返して、合うモノを選んでいく。


「お客さーん、店の奥にも幾つかありましたので、お持ちしますね」

「ありがとうございます」


 初めに案内された店員に、丁寧にお礼を言って受け取った靴も試した。

 結局受け取った靴の中に合うモノがあったので、それに決めてお会計を済ませる。値段は可もなく不可もなく、妥当な金額を払い、店を後に。


 流石に生死に関わる為、服の様にさらっと選ぶ訳にはいかず。

 店を出る時には正午頃になってしまっていた。そのままお昼を食べず昨日訪れたばかりのギルドを向かい、イヴァラさんから預かった手紙を渡す。


 内容は知らないが、それを受け取って中を確認した職員さんが慌てていた。関わり合いになりませんようにと願いながら、他のカウンターに話を聞きにいく。

 最近の依頼や、噂話。ギルドの動きなどの情報を仕入れておかないと対処できない事があるかもしれないし。


「最近ですか……そうですね。ああ、最近入った噂ですけれど、何でも向こうの大陸に送った冒険者から、通信が送られてきたそうです」

「へぇ、もうかなり経ってますよね。何かあったのかな……」

「詳しい事は分からないそうです。何でも通信障害がひどい様なので」

「そりゃあ距離がありますからね」


 御昼時で手が空いていたのだろう、中年の男性職員さんに色々伺っているとそんな話題が出た。


「魔物を指揮していたモノがいた、とか」

「……それは、また」


 衝撃の事実をいきなり突きつけられる。

 いや事実かどうかは分からないが、この大陸の魔物には統率者は居ないらしいのだ。過去の文献等を王都で見ても、そんな記述は特になかったし。


 それが本当なら一大事でこんな所で言わないのでは……それを職員さんに言うと、笑って答えられてしまう。


「はは。良くある噂にもそんな話は出てきますからね。魔物は一番上の指示で動く、とか。魔物はヒトの成れの果て、だとか」

「はぁ……」

「良くある噂の一つとして処理されたようですよ。それに、何処の誰が通信を受けたのかも知られてませんし」

「噂、の可能性が高いという事ですか」

「その様ですね。昔からある、そんな話ですよ。今になってそんな話しが出てきた理由は分かりませんがね」


 他にも幾つか身になる情報と怪しい噂を聞いて、お喋りな職員さんを後にする。

 結局手紙を渡した職員さんは奥に行ったままだし、その職員さんの席に置手紙を残してギルドを後にする。別に指示受けてないし。





 ギルドを出た後は、靴の均しをする為に街を見て回る事に。買ったばかりの硬いままでは動き難いから。


 それにしても王都から離れていても結構賑わっている。

 これは各街が半ば孤立した状態で発展したのだろう、王都や私が生まれた街も雰囲気が違ったし、ここもかなり違う。境界の外は魔物や言い方はアレだが野盗が跋扈する世界。

 塩や人員、他必要な物意外は閉じた世界なのだろうか。


 そう考えると今私がやっている仕事は、そんな状況を打破する為の布石なのだろう。

 そんな都合の良い事を考えながら、大通りをぷらぷらと歩く。手に持つのは先ほど


 露店で買ったジュース。柑橘系らしき味を香りを楽しめる一品だ。

 若干量を多めに入れて貰ったが、やはり見た目が良いと得をする。これは何処に行っても変わらないな。


 生活が安定してきたらこの世界の食事情を一度見て回るのも面白いかもしれない。


 その日は夕方までゆっくりと街を見て周り、久々の休日を楽しむ事が出来た。

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