side-A・コウリン
「ね、知ってる? 浪花大戦のヤッタルデーのコックピットと浪花決戦のコックピットは、実はちょっと違ってるって!」
「ああ、大戦と激戦の作画監督の違いから、多少変化してたって話だろ?」
『行っとくけど、ワイは浪花激戦――第3期の仕様やから嬢ちゃんの知っとるモンとは違っとるかも知れんな』
「え? そうなの?」
「そういえば……勇者の軍にいたナパーラ君、ジータ君のお目付け役になってるって、聞いたんけど?」
「騎士団にいなかったからどこへ行ってたのかと思ったら……ジータ王子のおもり、か……災難だねあの人も……どう思う? タリアン?」
飛行形態のヤッタルデーのコックピットは、だいたい4人乗りである。
小柄なガイノイドやアニマロイドであるファロやケアルンは1人分とはカウントされないが、それでも狭い空間に4人の人間が乗っている状況―――――しかも、そのうち3人は女の子という状況に、男たった一人の男というのは……
(気まずい、ものすごく気まずい!!)
感じ方は人それぞれ。
ベリア王国の第二王子タリアンにとっては狭い空間に女の子たちといるというのはものすご~~く、神経を使うものようだ。
アニスの質問に答えず一点を凝視し、ただひたすらこの空間から脱出できる時を待ちわびている―――――
『もうそろそろ何かしらの信号が発信されとる場所や! ――!? あれは!!』
全方位モニターの一部に、地上の様子を映し出される――山間に作られた簡素な砦の前に何人かの人と、よくわからないモンスターたちの姿――
「アレらって……ケアルンアドベンチャーに出てくるバウザーの配下たちか? ってことは、六花――君のダンジョンモンスターたちか?」
ズームモードで確認する――
「そうね、あの王子君たちだわ……じゃあ、向かい合ってる相手がこのあたりで起きてて、私が疑われた誘拐事件の真犯人……あっ!!」
六花がモニター画面に映ったある場所を指差す!
「これ! 何か建物の屋上みたいな所に、人がたくさんいる!!」
「本当だ!」
「これが行方不明になってた人たちなのかな!? すぐに助けなきゃ!」
『そやけど、降りられそうな場所があらへんな……山間やし、人も多い……せめてもうちょっと開けた場所があればええんやけど……』
「あ、そう? じゃあレイナちゃんがどうにかしてあげよう!」
バン!
『ちょ! ちょい待ち!! 勝手に開けんなや!!』
「うわわ!!」
「きゃあ!」
ビュオオオオオ!!
「あ、ゴメンゴメン」
バタン!!
背中に翼を出現させたレイナがヤッタルデーの外へ飛び出すとハッチを閉める――
「あ、あの子!! 人間じゃないの!?」
「レイナは魔王だ!」
「魔王!? え? あんなかわいい女の子が!?」
ビュ~~~~ン、トン!
ヤッタルデーのコックピットから飛び出したレイナが地上に降り立つ!
「い、いきなり空から羽の生えた女の子が落ちてきた!? つまり天使!?」
「違う。あの娘――間違いない!!」
「大魔王レイナガルデ―――――!!」
大魔王というものを直接知らない獅子戸大地が、素っ頓狂な声を上げるが、他の者たちは真剣に空から降りてきた脅威に戦慄する!!
「なんでいきなり大魔王が降臨するんだ!? 普通で考えたらありえないだろ!!」
「殿下、我々ってそんなに日頃の行いが悪いのでしょうか? でなければ、突然魔王が降ってくるなんてことはないでしょう!!」
「え? え? つまりは吾輩が勇者としてこの世界に来ていればあの女の子と戦わなければいけなかったという事なのか?」
「いやいや、マスター、そんな事はないですから!」
「だが、吾輩の野望を考えればこれは好都合なのかも知れない。魔王の力と知識を手に入れることができれば……」
魔王降臨に混乱する人間陣営――対して魔族陣営は――
「おお!! 見よ!! 俺様たちは今、最大の奇跡に立ちあえた!! 大魔王レイナガルデ様が御降臨なされたのだ!!」
ドン♪ ドン♪ ドドド♪ ドン♪ ドン♪ ドドド♪ ドン♪ ドン♪ ドドド♪
「偉大なる♪ 偉大なる♪ 大魔王♪ 大魔王レオンガルデ様の後継者♪ 後継者♪」
その言葉を合図に、砦に残っていた他の魔族たちも飛び出してくる。その誰かがブロードに楽器を手渡す!!
「「「「レイナガルデ♪ レイナガルデ♪ レイッナガルデッさ~ま♪」」」」」
そして、魔族たちは歌いだす!!
「勇者さえも配下にできるそのカリスマ♪ その者こそまさに大陸の王♪ 絶対王者♪ その名はう・る・わ・し・き~~♪」
「「「「レイナガルデ♪ レイナガルデ♪ レイッナガルデッさ~ま♪」」」」」
「ああ~~♪ レイナガルデ様、今♪今♪今♪ 御降臨~~♪」
砦にいるいかつい感じの魔族たちからは考えられないほど統制の取れた音楽を奏で始める!!
「「「おおおおおお!!!!!」」」
それに、レイナが片手を挙げて答えるとすさまじい歓声が起こる!!
「ちょっとごめんね~~レイナちゃんの仲間たちを下ろしたいから、少し場所を空けてもらえるかな?」
「はい!! 喜んで!!」
「おらおら! お前らも場所を開けろ!!」
レイナの言葉を受け、砦前のスペースを開け始める魔族たち。
人間たちに対してもスペースを空けるように強要する!!
「あの、レイナガルデ様――お仲間たち様というのは、もしかして高名な浮遊魔城でこられるのでしょうか? でしたらこのスペースでは、ちょっと狭すぎます」
ブロードが、代表して意見する。
「あ、違うよ。浮遊魔城をこんな山中に下ろせるわけないでしょ? ヤッタルデー君っていう空飛ぶ戦士に皆を載せてるの!」
「ヤッタルデー!?」
大地が聞き覚えのある単語に反応するが、魔族に押されて後ろに下がるしかなくなる。
「これくらいなら……………う~~ん、もうちょっと必要かな? じゃあ、“隆起”!!」
ドゴン!!
レイナが、軽く使った魔法で地面が少し盛り上がり、ある程度のスペースが砦の前にでき上がる!!
「いいよ~~ヤッタルデー君、降りてきて!」
ゴオオオオオオオオオオ!!
レイナが上空に手を振って合図を送ると上空で旋回待機していたヤッタルデーが、降下してくる。
「マジで浪花大戦ヤッタルデー飛行形態だ。そうか、アニメの世界というものもまた、異世界だというのかもしれない―――――」
ズン――――――バン!
「ジータ兄上~~!!」
着陸し、開いたヤッタルデーのコックピットから、真っ先に飛び出したのはタリアンだった……………




