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ダンジョン大陸A&J  作者: Zyuka TIME
第3章・
39/43

side-A・シャドウ

 ゴオオオオオオオオオオ~~~~~!!!!!


 浮遊魔城より降り立った行形態のヤッタルデーが町の近くの空き地に着陸する――!!


「着陸成功や! もう降りてええで!」


 スタッ!


 トンッ!


 プルルルルル~~~………


 ヤッタルデーからレイナとアニスが軽く飛び降り、プロペラを展開したファロが続いて降りてくる―――――


「……危険やから、ちゃんと安全に配慮して降りてくれへんかな……」




「ベリア王国王都にと~ちゃく~~!」


「空飛ぶ乗り物が二つあると便利だね。前にここに来た時は東都から歩いて山脈地帯を越えなきゃいけなかったもの♪」

「この王都からのびる街道は東都から離れているし、街道には魔族防衛用の魔法がま機能しているから、浮遊魔城の着陸ができないのよね」

「そうだよね~~ここってさあ、アニスちゃんの故郷なのに、なっかなか来れないんだよね~~」


「へえ――アニスの故郷?」


 何度かここにきているらしいレイナとアニスの会話に、ファロが応える――


「そやったら、なんか名物料理なんかを教えてもらいたいな」

「ヤッタルデー、オレたちは機械だぞ?」


 ヤッタルデーも、飛行形態で会話に加わる――


「ま、マスターにお土産ぐらいは選んでもいいのかしれないな」


 と、その時――


 バアン!!


 勢いよく王都の城門が開かれ、


 ドドドドドドドドド………!!


「「「?」」」


 指さした街の入り口から武装した騎馬の一団が出てくる――


 ドドドドドドドドド………!!


「あの旗印は……ベリア王国の騎士団? あれ?」


 アニスが騎士団を見て言う――


「でも……先頭に……団長のナパーラさんがいない? ………あの指揮をとっているのは…………誰!?」


 ドドドドドドドドド………ダン!!


 少し離れたところで騎士団は停止し、団の代表と思える男が下馬して一人近づいてくる――


「誰かな? あれ?」

「知らない――」


 アニスは半眼で男を見る。


「その巨大なモンスターはお前たちの物か!?」


 朗々とした声で男が叫び、近づいてくる――


「あなた誰!? 確か騎士団の団長はナパーラさんだったはずだけど!?」


 男の叫びにアニスが叫び返す!!


「……!? 豪将ナパーラ殿を知っているのか!? ――俺はベリア王国第二王子タリアン!! 兄、ジータ付きとなったナパーラ殿に代わりこの騎士団の団長を務めている!!」


「は? タリアン?」


 タリアン――そう名乗った男に対し、アニスは訝しげな目を向ける―――――


「ベリアの王子兄弟の弟、タリアン君? あれ、前に会った時と全然違うような――」


 レイナも疑問符を浮かべながら、王子タリアンを名乗った男を見る――


「知り合い?」


 ファロの問いに、アニスは半眼でタリアンと名乗った男をにらみつける。


「………違う!! ――あいつは違う!! タリアンじゃない!!」


 ヴン!! ビシ!!


 アニスは近づいてきたタリアンを名乗る男にダンジョンコアで出現させた槍を突きつける!!


「な、何をする!? 俺はこの国の第二王子タリアンだぞ!!」


「王族の偽証は即刻処刑されても文句を言えないわよ!! 何者なのかしら? 少なくとも、本物のならファロやヤッタルデーはともかく、私――アニス――どころかレイナガルデの事だって知ってるはずよ!!」


「レイナ……ガルデ!? まさか大魔王の娘……!!? それに、アニスって……」


 スッ――っとアニスの目が細まる――


「ま、まま待って!! 勇者アニス!!」


「――!!」


 タリアンに槍を向けていたアニスに対し、その様子を遠巻きに見ていた騎士団の一人が慌てて飛び出してくる――


 その騎士がフルフェイスの兜を脱ぐと、気弱そうな青年の顔が出てきた。


「貴方は……タリアン――!? 本物?」


 アニスが気弱そうな青年をにらみつけながら言う。

 槍はまだタリアンを名乗った男に向けた、ままで―――――


「どういう事?」


「紹介するわ――そっちの後から出てきた方が、この国の第二王子――タリアン・ベリア――」


 槍をピクリとも動かさず、視線だけを


「で、こっちの偽物の事わからない」


「彼はキュレイ……シャドウ・タリアンとしてぼ、僕の……影になってくれている人だ!!」


 王子タリアンはシャドウ・タリアンと呼ばれた男の前に行きアニスの槍をどけるように促す―――――


「…………で、タリアン……シャドウ・タリアン……キュレイ……だっけ? ……そいつ何なの?」


 アニスはダンジョンコアの力で槍を戻し改めて二人の男を見る――


 並べてみると顔立ち、髪型、背格好はよく似ている。

 いや、シャドウ・タリアンはタリアンに似るように作られているという感じがする―――――




「なんか、アニスって……王子にかなり辛辣な物言いをしてないか?」

「そやな、王子様に対する敬意ってのはまったく感じられへん」


「当たり前じゃない。大陸唯一とはいえ人間の国の第2王子と、大陸を支配する大魔王レイナちゃんの仲間、勇者アニスちゃんとじゃどっちが偉いかわかりきっているじゃない!」


 ファロやヤッタルデーの疑問にレイナが答える――――――


「え? そこのちっちゃなお嬢ちゃんと……もう一人、誰かいるの?」


「話題をそらさないでタリアン! あなた、そのシャドウタリアンなんてものを使って何をやっているの?」


 ファロたちに興味を示したタリアンの胸ぐらを、アニスがつかむ!! 


「……あ、あの~~……それが……言いにくい事なんだけど……」

「発言を、お許しいただけるか? 勇者アニス殿!!」


 何かを言いたそうなタリアンを遮るようにキュレイが、割って入る。


「今、現国王が重い病におかされており、余命いくばくもない状態なのです! それゆえ、次期国王をジータ殿下かタリアン殿下のどちらかから選ばなくてはいけなくなりました!!」


「……――国王陛下が?」


 それを聞いて、タリアンから手を放すアニス――


「それで、ご兄弟どちらがこの国の次期王となるかを決めるため、国民の総意を求めよ! という、話になり2人の王子殿下の人となりを、国民に広く認知してもらうよう、活動してるところなのです!!」


「は?」


「つまり、次の王様を決める選挙のために、王子の顔売ってる――って事か?」

「まあ王族なんてもん、一般人が目にする機会なんてそうそうないわな――」


「でもなんでそれで、そんなシャドウタリアンなんてものを使ってるの? タリアン君本人が頑張って顔を覚えてもらえばいいじゃない?」


「ジータ王子を次期国王にしないためです! 我々としてはあの傍若無人でわがまま気質のジータ王子よりもタリアン王子の方に国王になって欲しいのです!!」


「でも、僕自身は……よく言われるんだ――直接会ったらなんか覇気がないって……」


 少し落ち込むタリアンを見て、なぜかその場にいた皆が納得してしまう――

 中には遠巻きにこの様子をうかがっている騎士団の中にも、顔を縦に振る者さえいる――


「それで? 姿のよく似たキュレイ君を使って、タリアン君はこんな立派な人ですよ~~ってアピールしてるの? 次の王様は、タリアン君を選んでね~~って、やってるわけ?」

「ま、タリアンは昔から臆病で気弱なところがあったからね。目立つ人間――印象に残りやすいって言うならジータに勝てるわけないか……」


 アニスは呆れた目でタリアンとキュレイを見る――


「――その兄のジータ王子ってのが自分が王様になるために暗殺者でも送り込んでくる危険性があるから身代わりなる人間でも使ってのかと思った」

「影武者ってやつやな」


「ジータがそんなことするとは思えないけど?」

「アニスちゃんはそのジータ君ッて王子のこと知ってるの?」

「ええ、よ~~く、ね……一応、ジータとタリアンは私の幼馴染だし」

 少し投げやりな感じでそう言うアニス――


「そういえば……勇者アニス殿は宰相リドアス殿の娘さんの一人ですよね……貴女からもリドアス殿にタリアン王子を次期国王に支持してもらえるよう頼んでくれませんか?」


 キュレイがアニスにそう語り掛ける。


「もちろん、貴女もタリアン王子を支持していただけると嬉しいんですが!」

「それ、本気で言ってる?」

「ええ、本気です。かの聖帝国でも名高き勇者グレイド様が認めていた、勇者アニス殿の支持があれば、タリアン王子が次期国王なるのは確実でしょう!!」


 そう言って笑顔を向けるキュレイ――


「そうすればこのキュレイもシャドウタリアン辞めらます!!」


「……タリアン、実はこいつ、あなたの影でいるのを嫌がってない?」

「ハハハ……シャドウタリアンの事も含めて秘密にしておいてね……」


 薄く笑うタリアンと見比べると、笑い方は全然違う――


「残念だけど――」


 アニスは冷めた目で笑い方の違うよく似せた二人を見ながら言う――


「パパがどっちを支持するかなんてわからないし、私もその時になったら決めることにするわ。だから今は何も言うことはない――」




「っま、とりあえず、ベリア王国の次期国王問題はメインじゃないんで置いといてくれる? レイナちゃんたちはキュキュちゃんとリュリュちゃんに頼みがあってきたんだけど……」


 会話が一段落したのを見て、レイナがやっとここに来た目的を話し始める――


「え? 大陸一料理大会で並み居る強豪を屈服させ、魔物たちも多数参加していた中で勇者の軍の料理主任だったフィティシア様とまさかの人間vs人間の決勝戦をくりひろげた、あのメイドのキュキュとリュリュ?」


「そ、その料理上手なキュキュちゃんとリュリュちゃん」


「……あ~~あの二人なら、兄、ジータがナパーラ将軍やマジュリッツと一緒に連れて行きました」


「え? ジータが? どこへ?」


「ジータ王子は辺境に暮らす国民からの支持を得ようと、幾人かの側近を連れて旅に出たんですよ――」


「……ジータらしいわね……で、どこへ?」


「王宮の方に入ってる定期連絡だと、今は山脈地帯にいるとかどうとか――だれか、よく聞いていた人いなかった?」


 タリアンが騎士団に声をかけると、その中の一人が地図を持ってくる――


「地方で行方不明者が続出していて、それと関係してそうな謎の城を見つけた、とか何とか――」


「謎の城、ねえ――」


「最近兄の側近になったダイチって男が言うには、その城はバウザー城っていうらしいよ」


「――――――は!! 今、なんて言った!?」


 タリアンの言葉に、ファロが詰め寄る――!!


「いや、謎の城はバウザー城っていうらしい――城の名前なのか、そういう作りなのかはわからないけれど……」


「いやその前!! 側近の――大地、獅子戸大地って言わなかったか!?」


「まあ――そう言えば、君は噂に名高いビューティードールなのかな? 確か、ダイチもリクっていうビューティードールをもっていたっけ――」


「――リク――リク・ドゥ・リネ、か………!!」

「どうやら、行っている必要があるみたいやな……」


 ファロもヤッタルデーも今すぐ飛び出したい衝動に駆られる―――――

 それを察したのはレイナだった――


「とりあえず、その城に行ってみましょう! タリアン君、その場所が地図のどの辺かわかる?」


「え? まあ、一応……」


 タリアンは岸から受け取った地図を広げてその城があるとされる場所を指さそうとし……


「じゃ、案内してもらえる?」


 バサッ!!


「え?」


 レイナがタリアンをつかみ、翼を広げて舞い上がる!!


「アニスちゃん!!」


 ガシッ!


 片手でタリアンをつかみ、もう片方の手でアニスをつかむと、ヤッタルデーの上へ――!!


 プルルルルル~~~………


 ファロも飛び上がり、皆でヤッタルデーに乗り込む!!


「ちょっとぉ!!」

「ヤッタルデー、スクランブル!!」


 ゴオオオオオオオオオオ~~~~~!!!!!


 タリアンの抗議の声を無視して、ヤッタルデーは発進する!!




 こうして、タリアンを巻き込んだファロたちは、ベリア王国の辺境、山脈地帯に向かうのだった――






「……キュレイさん、ど~します?」


 事の成り成り行きを見ていた騎士団の一人が、取り残されたキュレイに声をかけてくる……


「……………………と、とりあえずフルフェイスの兜をくれ! タリアン王子がいない状況でシャドウタリアンはする必要がない!」

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