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ダンジョン大陸A&J  作者: Zyuka TIME
第3章・
37/43

side-J・リョウリ

 PPPPP―――――


 電子レンジを開け、ホカホカに出来上がったチーズケーキを取り出す――


 シュワア~~―――――


 フライヤーから揚げたてのドーナッツを吸油紙の上に並べる――


 クッキー。チュロス。チョコレート。キャンディ。その他諸々のお菓子たち――


 ガシャ――


 開けられたのは業務用の大きな冷凍庫から氷。アイス。フラッペ。シャーベット。


 氷は飲み物を冷やすのにも使う――


 飲み物はオープンケースに業務用の大型パックがたくさん並んでいる――


 コーヒーは専用の抽出マシンが店内に設置されているのでここにはない――


 予備の豆とラテ用のミルクがある――


 オープンケースの一部には、軽食用の食材が並んでいる――


 コンロは最新のIH、今は動いていない食器洗い洗浄機――――――――





「無理!! レイナちゃんたちじゃこの世界の料理は理解できない!!」

「私も少しは料理の経験はあるんだけど、ここのアイテムを使いこなせそうにないわ……」


 レイナとアニスは疲れたといった感じで席に座る――

 紫鶴はドリンクを座った二人の前に置き、そして旦那である七瀬銀河の前にブラックコーヒーを出す。


「あなたたちは何か飲みたいもの、あるかしら? 食べたいものがあるなら、それは注文してもらうことになるけど」


 そして神城真一と浅科梨乃亜、ファロにそう微笑みかける――


「あ、俺はラテで」

「私は……アッシュリエルブルーベリーフラペチーノ・パンナコッタシェイクリングで」


「うん? それでいいのかしら? あんまりおいしくないわよ、アレ」


「えっと、オレは………」


「ガイノイドの食べ物って? ……ええっと……乾電池?」


「いや、いいです……」


 可愛らしい姿のファロを見て、クスクス笑いながら言う紫鶴――




「ああいうアイテムって、魔法やダンジョンコアで再現できないかな?」

「この世界の料理法を手に入れる、ってだけの話じゃないわね。調理に使う食材からアイテムまで理解できないのばっかりだし……」

「なんか、レイナちゃんたちにもできる簡単な料理法ってのがあればよかったけど……」




「そういえば……異世界で日本の料理を再現して大儲けってアニメなかったっけ?」

「異世界で真に輝くチートは武力じゃない!! 異世界人の腹をつかみ続ける事こそ真のチートだ!! ――『異世界の大衆食堂・BON!!』――だな――」


 レイナとアニスの会話に、真一と梨乃亜が加わる――?――なんか絶妙に、会話がかみ合っていないが……………


「そうそう、異世界転生した少年料理人出来松梵才――通称・BON――が異世界人の腹を料理でつかみ続けていくってやつアニメよね」


 そう言いながらスマホで検索をかけている――


「でもこれって、どう見ても食材や調理場はどう見ても日本の物なんだよね――」


「アニメじゃ丸々カットされた原作漫画の導入部に、出来松梵才に神様が与えられたチートはそういうものだって――ああ、漫画アプリなら第一話を無料で読めるはずだ」


「なにか秘伝とか秘技とかあれば教えてくれたらよかったんだけど……」

「それじゃあさ、やっぱりレイナちゃんたちがよく知る料理人を連れてきて習ってもらった方がいいと思う! フィティシアちゃんとかキュキュちゃんとかリュリュちゃんとか!」

「………フィティシア様は今どこにいるかわかんないし、キュキュとリュリュなら多分べリアにいるだろうど……ベリア王国に行く?」

「だね……べリア王国、か……」


 レイナはちょっと遠い目をする――


「じゃあさ、私が面白いものを教えてあげようか?」


 そう言って、梨乃亜がカバンから小型のケースを取り出す。


「じゃ~~ん、小型マグネットオセロ~~――あ、今はリバーシだっけ?」


 升目の書かれた折り畳み式の金属製ボードと、64個の裏表黒白のコマ――


「他にも、マグネット将棋やチェスも持ってきてるけど、これが一番わかりやすいと思うよ!」


 そう言って、広げたボードの真ん中にコマを並べる梨乃亜。


「これはね、黒白を決めてお互いに相手の色を挟むような感じで……実践して見せた方が速いわね……真一君、一回やってみる?」

「……オセロとリバーシ、どっちでやるんだ?」

「違いってあったっけ?」

「オセロは、最初真ん中に置く4つのコマの位置は固定、リバーシは変えてもいいってルールだったけど?」


 オセロは


  □□□□□□□□

  □□□□□□□□

  □□□□□□□□

  □□□〇●□□□

  □□□●〇□□□

  □□□□□□□□

  □□□□□□□□

  □□□□□□□□


 で始めるが、リバーシは


  □□□□□□□□

  □□□□□□□□

  □□□□□□□□

  □□□〇〇□□□

  □□□●●□□□

  □□□□□□□□

  □□□□□□□□

  □□□□□□□□


 で始めてもいい。

 他にも、自分の番をパスできるかどうかというのもある。


「ま、面倒だから初期配置はオセロと同じでいいよな?」


 ああだこうだ言いつつゲームをやる二人――


「どう?」


 一回目の決着がつく――結果は真一の勝ちだった――そして少し悔しそうな顔をしながら、梨乃亜が異世界の少女たちに聞く――


「……えっと、これって……チャトランガの一種?」


「え?」

「チャトランガ?」


「古代語、だな――地球最古のミトラ文明からあったとかいうくらい古い言葉で――意味は……盤上遊戯……始まりのボードゲーム……?」


 今まで黙っていた七瀬銀河がゆっくりと解説する――


「つまり、オセロやリバーシ、将棋やチェス、そして囲碁や双六なんかの始祖となるのがチャトランガ、だ――」


「……う~ん、アニスからその言葉が出た、ってことは……同じものではないにしろ、似たようなものが既に異世界には存在しているってこと?」


 さすがに乾電池は持ってこなかったが、真一と梨乃亜のドリンクを持ってきた紫鶴が続きを引き継ぐ――


「てことは……もうすでに向こうの世界でも同じようなものがあるってこと!?」


「まったく同じもの、ってわけじゃないだろうけど、な――」


 梨乃亜が注文したアッシュリエルブルーベリーフラペチーノ・パンナコッタシェイクリングを苦戦しながら飲んでるのを眺めながら銀河は説明を続ける――


「確かに……チェスなどの日本のボードゲームを広げるっていうのは、異世界転生物語等じゃ定番だろうけど……それは異世界に同じものがないから成立する――」


「えっと……つまりそれって、チェスとかリバーシとかを異世界に持って行ってもらっても、流行らないってこと?」


「レイナやアニスのいるダンジョン大陸は、そうなるだろう――」


 梨乃亜がアッシュリエルブルーベリーフラペチーノ・パンナコッタシェイクリングを飲み切ったのを見ながら銀河は続ける――


「第一、異世界転移者が一人しかいないならいざ知らず、これまで何人もの日本人があのゴージャスな不審者・ノーヴェル・マシーによってかどわかされているんだ。―――――その中の何人が、チェスやら将棋やらをはやらせようとすると思う?」


「あ……………」

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