表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン大陸A&J  作者: Zyuka TIME
第3章・
35/43

side-J・オキガエ

「まずはこれね♪」


 梨乃亜からそう言われてファロが着せられたのは――アイドルのようなきらびやかな衣装だ。


「やっぱり似合う♪ ファロの為に用意しておいて正解だった!!」


 そう言って、スマホで動画撮影を続ける梨乃亜――

 カバンの中から様々な衣装を取り出し……手作りだろうか? 小柄なヒューマノイド用の試着室に入って着替えるよう、促される――


「ここ、隠しカメラとかついてないよ、な……」


 ファロより少し大きな鏡と共に四方をカーテンで仕切られた試着室――本来、ヒューマノイドの着替え……っていうか換装などは人の手によってなされるのが普通だ。

 だが、人の心を分け与えられた物とはいえ自分の意志を持つファロにはこういったものが必要なのだろう――


「着替えたぞ!」


 渡されたまるでお姫様が着るようなドレスに着替え終わりカーテンを開ける。


「うんうん、いいよ! ファロ!!」


 よく見れば、周りにある小物の位置が変わっている――人間の手で小物の位置を入れ替えていくところとファロが試着室から出てくるところを途切れることなく撮影することで、ファロが自分の意志を持って行動しているのがよくわかる、とか言っていた――


「ま、安心して! この梨乃亜特性ファロちゃんファッションショーは、限定動画で真一とか事情を知っている人以外に見せる気はないから――」


「当たり前だ!! こんなもの全世界にアップされてたまるか!!」


「というわけで、次はコレ、ちょっとシックな大人のお姉さん的衣装、その次はコレ、某有名アニメの学校制服、その次にはテニスウェア!! あ、そうだ! 魔法少女飛翔苺ちゃんの衣装もあるわよ!!」


「やっぱりあの時買っていたのか!!」


 衣装をファロに渡す時に映る手も、ファロが小柄なガイノイドだということを魅せるのにちょうどいいとか何とか――

 その過程で梨乃亜の顔と声もちょくちょく動画に映ってしまっているので、実際ネット上にアップなんてしたら、梨乃亜自身のプライバシーが危なくなるかもしれない……


「わかってるって! だから次はコレ!! パレオ、スクール水着、ビキニ、競泳水着!!」


「なんで精密機械のガイノイド用水着がこんなにたくさんあるんだよ!!」






 ここは日本、そこにある喫茶店アメシスト――今日は定休日。


 駐車場にごつい自衛隊の車両とロボットアニメ・ヤッタルデーシリーズに出てくる主役ロボに変形する飛行機が停まっている以外、外からは特に変わった様子は見えない。

 ヒューマノイドを使った演劇看板も、今は停止している。


 だが、店舗には明かりがついている。




「この映像に映っているのを見る限り、ダンジョンコアを使うなら、材料と設計図そして魔力が必要なようだな……」


「魔力………?」


 神城真一と七瀬銀河の二人は、異世界の光景を映したモニターを見ながらそう言っている。

 そこに映っているは、ばあさんがダンジョンコアを手に持ち何かをつぶやく――すると、がれきや土くれなんかがゆっくりと浮かび上がり、一つの構築していく――


「壊れた灯台の修復、だと言っていたな」


「災害で建物が倒壊していくのを逆再生していく感じかと思っていましたが……そんなんじゃないんですね……」


 アメシストの店内では、浅科梨乃亜によるファロのファッションショーの他に超常自衛隊特佐・七瀬銀河と異世界転移物で異世界に行かない系主人公・神城真一が異世界の映像を見ながら話しをしている。

 ファッションショーから解放されたいファロがちらちらと見ているのには、気づいていないようだ。


「君は自衛隊の戦闘機がアニメロボット・ヤッタルデーになる瞬間を見ているんだろ? その時はどう思った?」


「あの時は俺自身がアニメの登場人物になっちゃったのかと思いました――転生したらアニメの中だった、とか?」


「よくアニメや漫画で使われている、死んで別世界に生まれ変わる――輪廻転生、というやつか」


 真一の言葉に、銀河は少し笑いながら言う。


「この問題が輪廻転生だったら、僕たちは動く必要性はないんだけどね」


「そうなんですか?」


「死んで生まれ変わるというのなら…………悲しい出来事ではあるが、そこでこの世界での区切りはついている――だが、ゴージャスな不審者ノーヴェル・マシーによる異世界転移事件の被害者は――まだ生きている――だから救出するために使えるものは全て使わなきゃならない」


「……そう言えば、あの北川藤士郎って中学生はいまどうしてます?」


「スメラギに――スメラギ総合病院に検査入院させている――異世界でどんな生活をしていたかわからないし、ヘタしたらなんかの病原体を持っているかもしれないからな」


「……病原体……………」


「3年程前だから……君たちはまだ小学生か中学生か? だとしても、D国――Dkkai国の地方都市ロロナから発生したと言われている伝染病――通称、ロロナウィルス感染症世界的パンデミックの事は、覚えているだろう?」


「え!?」


 ロロナウィルス感染症世界的パンデミックとは……ここで書くのもはばかれるほどの悲劇を巻き起こした、世界的大事件である――――――


「確かに……あの時は……………」


「答えなくていい。だがあれに匹敵するかもしれない悲劇を、ここ――日本で起こすわけにはいかないんだ」


「超常自衛隊の人たちって、かなり色々やっているんですね……」


「E国――Enemie国による突然の宣戦布告もそうだが――平和な日本っていうのを絶対に守らなくてはいけない――もし、異世界転移者を日本に戻せたとしても……その日本が平和でない、なんてのを見せるわけにはいかないからな」


 ガチャッ!


 話し合いとファッションショーが続く中、店の厨房の扉が開き、3人の女性が出てくる――

 厨房から出てきたのは異世界の魔王レイナと勇者アニス、そしてこの喫茶店アメシストのパティシエール、七瀬紫鶴だった―――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ