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ダンジョン大陸A&J  作者: Zyuka TIME
第3章・
34/43

side-A・ラスボス

「ギャシャァ~~~~~!!!!!!」




 ―――――凶悪な魔獣の帝王バウザー――――――


 ゲーム『ケアルン・アドベンチャー』シリーズの代表的なラスボスである。

 王国の姫君・ライア姫を攫い、救出にやってくる狸の獣戦士ケアルンといつも激しいバトルを繰り広げている。

 そのバトルは古きは良きドット時代のゲーム機から3Ⅾグラフィックを使った最新鋭のゲーム機まで幾度となく行われ――中には本筋とは関係のないスポーツであったり、レースやパズルなんかであっても行われる――ケアルンとのバトルは、ゲームの数だけ、プレイヤーの数だけ存在するという、まさに日本の国民的ゲームの超有名ヴィランである!!




 まあ、そんな日本では超有名ヴィランであったとしても、こと異世界においてはただ、謎の城型ダンジョン内の最奥にいる謎のモンスターにすぎない――

 その城型ダンジョンが、最新作のバウザー城を模しているなど、そのゲームをプレイした事がある人間以外、知る由もない――


 ましてや、そのギミックまみれの城型ダンジョンの攻略法を知っている、などということは……………




「ベリア王国、豪将ナパーラ!! ゆくぞぉ!!!!!」


 自分の身長と同じくらい大きさの巨大戦斧を振り回し、集団で出てくる雑魚モンスターを怒涛の勢いで蹴散らしていく!!


「ベリア王国、宮廷魔術師マジュリッツ!! “ファイヤー”!!」


 ボンボンボン!!


 ナパーラが打ち漏らした雑魚敵を、火炎の魔法で倒していく!!


「さあ、王子!! 道は開けましたぞ!!」

「あとはあの奥にいるでっかい偉そうなやつだけです!!」


「うん!」


 ナパーラとマジュリッツの活躍で、たくさんいたダンジョンの雑魚敵を散々に破壊し、奥にいるバウザーまで道を開ける!!


「ベリア王国、第一王子ジータ・べリアだ! ―――――お前が最近できたこの城型ダンジョンのボス――バウザーとかいうヤツ、だな!! ぶっ倒す!!」

 

 ビュン!! ザン!!


 ジータ王子の弓矢による攻撃がバウザーにヒットし、その体を砕く!!


「ガアアアアアア!!」


 苦しみに満ちた咆哮と共に、バウザーは口からいくつもの火球を吐き出す!!


「“ファイヤーウォール”!!」


 ドンドンドン!!


 マジュリッツが炎の壁を作る魔法で火球を防ぐ!!


「シャオゥ!!」


 その巨体からは想像もできないスピードと体制で突っ込んだナパーラが、バウザーの足を巨大戦斧で粉砕する!!


 ドオン!!


「さあて、この近くの集落を襲い、食料を奪い、さらには人々をさらったという魔獣よ! ベリア王子ジータが命ずる!! 罪を――償え!!」


 倒れ伏したバウザーの頭めがけて剣を振り下ろす!!


 バギン!!


「グウウウオオオオオオ!!」


 ズウン―――――……………


 ジータの剣は途中で折れ、バウザーを両断することはできなかった―――――が、相手はそのまま倒れ伏した!!


 ちなみに、血とか内臓とかいうは一切出ていない――それは、今まで出てきていた他のモンスターたちも同様だ。


 それらはつまり、


「やはりここは、何者かがダンジョンコアを使って作り上げた物で、ここにいるモンスターは皆作り物、という事らしいな」


「そうだよ、ここのモンスターたちは『ケアルンアドベンチャー』のバウザーとその仲間たち――そしてこの城の外観、ギミック、トラップ全てにおいて『8WONDERFUL』のバウザーキャッスルと同じだった――」


 倒したモンスターたちを確認していたジータ、ナパーラ、マジュリッツを追いかけるように、一人の男が現れる――


「ということは、間違いなくこのダンジョンを作ったのは……吾輩、獅子戸大地と同じ、日本人だ」


「大地、お前はこの城の仕組みの解き方を知っていた――そしてこの……バウザーとか呼んでいた魔獣の事も、やっぱり知っているのか?」

「ああ、この魔獣――バウザーは、種族も違うのに一目惚れしたという理由で人間のライア姫をさらって――狸戦士ケアルンに倒されるドジ魔獣だ」


 ジータの問いかけに、異世界の日本からからやってきたという大地がそう答える――


「ちょっとちょっと!! いい加減なことを、言わないで!!」


「「「「――!?」」」」


 そんな4人のもとに、バウザーの奥にあった扉が開き、そこ出てきた少女が抗議に声をあげる!!


 その扉の向こうの部屋はゲームでライア姫が幽閉された場所だ――が、これまではゲーム再現されていたのとはうって変わって、ゲームの再現はされておらず―――――なぜか生活感にあふれた空間があった……


「バウザーはね! ライア姫の事があるからケアルンと敵対してるだけ! ほんとは仲いいの! だよね~~!」


「そ~だよ。ライア姫の事がなかったら、ボクらはいい友人だ」


 少女の肩にチョコンと乗っかっている狸獣人型のアンドロイドが、そう言う――日本人が見れば、そのアンドロイドは『ケアルンアドベンチャー』の主人公・ケアルンの形をしたキャラクターアンドロイドであるとわかるだろう――


「キャラクターアンドロイドか。ま、異世界に著作権などないから問題ないな―――」


 少女の肩に乗るケアルンと同じように、大地の肩の上にも同じような存在がいる。


 リク・ドゥ・リネ――通称リクちゃん――一見するとバニーガールの衣装を着た小さな女の子に見えるが、実は男性型のアンドロイドを魔改造して今の形が作られている美少女アンドロイドである。


「お前は日本人か?」


「そうよ! 野原六花! 花の中学生!」


「大地、知り合いなのか?」


「いいえ、ただ、同郷――同じ国の人間だというだけ――」


「まあ、大地の同郷にせよなんにせよ、モンスターを使って近隣の集落から食べ物を奪い、人々をさらった罪、償ってもらわなければいけないな!」


 ジータは剣を……さっきバウザーに叩きつけた時に折れている……ため、あちこちそこら中探しても代わりになるものが見つからないので結局指を指すだけにとどめてから言う。


「え? 人々をさらった? 何の話?」


 六花はきょとんとした表情でジータに言い返す。


「王子! 奥を調べましたが、さらわれた人たちがいる様子はありません!!」

「食べ物などはある程度ありましたが、これが近隣の村から盗まれたものであるかは判断できません」


 先行して奥に進んでいたナパーラとマジュリッツがそう報告する――


「ちょっと! 人のプライベート空間に立ち入らないで!!」


 六花が思いっきり抗議の声をあげる。


「おいおい、モンスターを使って食料強奪や人攫いをやっていたのはお前だろう!!」


「何それ!? そんなことしてないよ!」


「ジータ、決めつけはよくないと思うが……」


 騒ぐ人間たちの傍らで、リクちゃんがケアルン少しに近づく――




『――ケアルン。お前は電子会話できるか?』


『――ん? ああ、そこのバニーガールか? なんか用?』


 意志を持ったヒューマノイド同志、距離が近ければ声を出さずとも電子通信で会話ができる――


『ケアルン――あの六花って女がこれまで生きていくのに得た食料などは、バウザーたちを使って、お前が用意していたんだろ?』


『そうだよ。ボクはノーヴェル・マシーの旦那からマスターの異世界での冒険と生活を補佐し、それを記録する任務を与えられたサポートヒューマノイドだ――君だってそうだろ?』


『う~~ん、そうだな……じゃあ、ジータたちが騒いでいる、村人たちの失踪事件の原因はなんなんだ……?』




「本当に、人攫いの犯人はお前たちじゃないんだな? 山間部につい最近唐突に出現したという怪しい城――誰だって何かしら事件があれば、それが原因と考えるだろ!?」


「そんなの決めつけじゃない!」


「現に辺境伯の町で情報収集した時は、皆口々にここが怪しいっていっていたぞ! なぁ、マジュリッツ!」


「ええ、確かに酒場の酔っぱらいのおっちゃんたちはそう言っていました」


「お前らどこでどんな情報収集してたんだ?」


「そもそも、あなたたちはなにものよ!?」


「ん? 俺様はこの大陸唯一の人間の国、ベリア王国の第一王子――ジータ・べリアだ」


「は? 王子、様…………?」


 ジータの発した言葉の意味を理解するのに、六花はそれなりの時間を必要とした。


「気持ちはわかる。吾輩は獅子戸大地、こちらはリクちゃん。そちらと同じ、日本からの客人だ」


「豪将ナパーラ――」

「宮廷魔術師マジュリッツだ。よろしく、リトルレディ」


 他の者たちも自己紹介をしているが、王子というイメージから遠く離れたジータを見て思考停止している六花は聞いていないようだった――――――











「「「「「ブロード!!!!! ブロード!!!!! ブロード!!!!!」」」」」


 数多くの魔族が、隠し砦に集結している―――――

 その魔族たちを束ねているのは、大柄で屈強な魔族・ブロード!!


「聞けい者ども!!! この魔族中心のダンジョン大陸でベリア王国などという、人間の国などあっていいものなのか!!?」


「「「「「否!!!!! 否!!!!! 否!!!!!」」」」」


「この地を我らが制圧し、人間共を奴隷とし、大魔王レイナガルデ様に献上する!!!」


「「「「「おお!!!!! ブロード!!!!! ブロード!!!!! ブロード!!!!!」」」」」


 熱気渦巻く魔族の大集会を、情報収集のためにさらわれてきた村人たちは絶望の目で眺めている………

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