side-J・夜の学校で鬼ごっこ
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夜の学校で鬼ごっこ……………
いかにも何かのホラーゲームか映画、または漫画のホラー回のタイトルか何かのようだが、不良になり切れない、まだ子供心が抜け切れていない中学生たちの集団が起こした一夜のお遊びに過ぎなかった――
「おおい! 藤士郎!! おま、いまどこにいる!!」
「ちょいちょいっとかっちゃん! あまり大声を出すと守衛の人に見つかっちゃうよ!!」
お遊び、にハイテクを持ち込むのも子供ならでは―――――
、
「わたし、ポラリス4世はノヴァのいる場所を知りませ~ん」
鬼役の子に対する牽制や守衛さんに対する監視として、ヒューマノイドを使いスマホと連動し、遠隔操作で監視している―――――
だから、そいつがもつヒューマノイドがあれば、電波が届く範囲にいるはず―――――
というわけで、ポラリス4世の近く――トイレの個室いた北川藤士郎もまもなく見つかり、参加者全員――5人の生徒が集まる――窓からの月明かりとスマホの頼りない光源の下で、次なる鬼を決めるじゃんけんをしよう、となった時だった―――――
パチッ!
突然彼らのいる廊下の電気がつく――
「「「「「!?」」」」」
電気をつけたのは、初老の守衛さん、そしてその横に、若い男性の先生がたっていた――もちろん、二人とも険しい顔つきをしている――
それから5人は守衛さんと、若い先生からお説教という長話をされたあげく、家に連絡が入り――そこで全員そろって解散――
とはならなかった……
説教中にたまたま近くに住んでいた家の両親が飛んできて、一人の生徒を引き取っていったからだ――
「裏切り者~~!」
とか、
「明日覚えてろ~~!」
とか言われたが、守衛さんと両親に付き添われ、その一人は一足先に、学校を出る――
その後、守衛さんが残った生徒と先生のいる教室に戻った時―――――そこには誰もいなかったという―――――
原因を調べていて分かったが、迎えに来た生徒の両親の車のドライブレコーダーに、ピンク色の光が、録画されていた――――――
それと、学校の防犯カメラに上記9名の人間の他に、一人、ゴージャスな不審者が映っていた――――――
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「占いの館へようこそ――と言っても私は後輩ちゃんが食事休憩中にここでくつろいでいるだけの女子高生、だけどね―――――」
夜の学校で鬼ごっこをしていた中学生4人と教員、あわせて5人が突然行方不明――
だがそれは、各地で起きているゴージャスな不審者・ノーヴェル・マシーの起こした事件の一つ――
ノーヴェル・マシーによって異世界へ連れ去られる―――――
あきらかな超常現象、異常事態、不可思議案件―――――だからこそ、普段だったら絶対に行かないような占いの館へ出向いてしまった……………
「私は空魅夜子―――――ま、覚えてくれると、うれしいな♪」
「ええっと、後輩さんの店で休んでる、だけの女子高生、さんですか?」
「そ~だよ~♪」
スマホを弄んでいる、自分より少し年上らしい女性を見ながら、安易に占いに頼ったことを後悔する―――――
「で、こんな所に来たってことはなにか占ってほしいことがあるのかな? なにか悩み事? あ、これ私の名刺! よろしく!」
そう言われて渡された名刺を、よく見もせずにポケットに入れる――
「ええっと、あの……異世界に連れ去られた友人が見つかればいいなって思っているんだけど……」
黒を基調としたセーラー服を着た女子高生――空魅夜子――さんに疑いの目を向けながら、探している異世界転移被害者の名を告げる―――――
「ふ~ん……皆、ゴージャスな不審者ノーヴェル・マシーの異世界転移被害者として名前が出てるのね……」
魅夜子は聞いた名前を素早くスマホに打ち込み検索する―――――
まあ、深く浸透していないとはいえ、ゴージャスな不審者による行方不明事件の情報はネットでも検索可能だ。
でもそれだって世間でわかる以上の事が調べられるとは思えない――――――――――
「……この、北川藤士郎って子、動きがあるみたいね……………超常自衛隊が動き出してるわ」
「え?」
どうやってここから離れようかなんて思っていた矢先、魅夜子の言葉で顔をあげる――
「場所は……ここからちょっと距離はあるけど、急げば間に合うかもしれないわね――――――行ってみる?」
そう言って魅夜子は二つのヘルメットを取り出した―――――
ブオン!!
「え……ええっと、場所ってどこ!?」
「しゃべってると舌かむわよっ! それとしっかり捕まってっ!」
「は、はい!!」
魅夜子の駆る大型バイクで移動する事数分―――――とある高校の前に移動する―――――
「ここは……?」
「間に合ったみたいね」
「え………?」
魅夜子が指さした先には高校のグランドがあり、何人かの人だかりができている――その中には、この高校の生徒ではない何人かの大人たちの姿もある――――――
そんな時、空中にピンク色の小さな扉が出現し―――――
「うわああああ!!」
「―――――!!? あいつは!!?」
突然、叫び声がしたと思ったら、空中にできたピンク色の扉から、おかしなコスプレをした少年が、降ってくる―――――
「おいおいおい!! お、お前ら!! 実はアニメ世界!! ヤッタルデーのある世界の住人なんだろ! そうに違いない!! 宇宙海賊はどこにいる!! この勇者ノヴァが相手をしてやる!!」
「そんなのいるわけないだろ!!」
思わず駆け出し、周りの人の制止も聞かず降ってきたおかしなコスプレ少年に駆け寄る!!
「え………? さ、里見……?」
「馬鹿言うな!! ここは紛れもなく日本!! 元々お前……北川藤士郎のいた世界だ!!」
この日、一人の異世界転移者が帰還した――――――
「ふ~~ん……あの男子生徒、そしてあのリターナーの子……心が一部壊れているわね……」
高校のそばに停めたバイクの上に立ち、スマホのあるアプリを使って魅夜子は校庭にいる人間たちを観察する――――――
そこで注目するのはある二人の男子――元々この世界にいる男子高校生と、異世界から帰ってきたおかしな格好の子――この二人の共通点は、目には見えないが、心の一部が壊れている、というものだ―――――
魅夜子のスマホアプリはその状況を確実に映していた――――――
「やっぱり、これが原因なのかな?」
そう言って魅夜子が取り出した物―――それは、ゴージャスな不審者と超常自衛隊特佐が戦った時に飛び散ったダンジョンコアの一欠片、だった―――――
こんこん――
ダンジョンコアで乗っていたバイクを叩く――
すると、バイクは機能はそのままで前衛的なデザインに変化する――!!
ザン!!
突如、白い空間に入ったような感覚がし、魅夜子の体――いや、心に衝撃が走る――が、それによって魅夜子の心が割れる、といったことはなかった………………
「……私の心はこれくらいじゃ割れない――――――さて、これのきちんとした使い方を調べなきゃね――――――」
フト―――――見ると、高校の校門前に魅夜子が渡した名刺が落ちている――どうやらリターナーの少年に駆け寄った時にポケットから落としてしまったらしい……
――――――――――そこには、こう書いてあった―――――――――
『大東亜魔女連盟極東支部支部長 空魅夜子』
風邪ひきました………




