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ダンジョン大陸A&J  作者: Zyuka TIME
第2章・天に舞い上がる少女
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side-A・僕の考えた最強の日本人勇者装備

「これが日本人勇者の武器、秘刀・電光野太刀!!」




「おいおい、自分から日本人だと宣言しちゃってるよ……」


 ファロがいれるツッコミはさておき、塔の最上階から光と共に現れ、ノヴァの手に握られたのはかなり長い日本刀だ!!


「……なんか、見慣れない形状の剣だね♪ ファロちゃん、あれはどんな武器だかわかる?」

「日本刀――日本で昔から使われていたという武器――」

『その中でも平均的な長さを逸脱した長尺刀――所謂、野太刀と呼ばれる武器のようね』


 レイナの質問に答えたファロに補足する感じで梨乃亜がモニターの向こうから言ってくる。


「え? でも、七瀬さんはあんな武器使ってなかったよね?」


 アニスが、モニターに向かって言う。


『ま、今の日本から見たら大昔の骨董品だしね。それに、野太刀は徳川家康っていう昔の将軍が使用を禁止したっていういわくつきの武器だし――』




「そして、日本人勇者の身を守る甲冑は蒼空の北斗七星!!」




 今まで着ていたキラキラ光る鎧が剥がれ、蒼を基調とした和風の鎧が装着される――!! その胸元には北斗七星が刻まれている!!


「うむ、なかなかに独創的な形だが、まだ子供であるノヴァには少々アンバランスな鎧だな」

「うむうむ……やはり、ノヴァに足りないのはヒゲであると思われる!!」


 グロービス兄弟が遠巻きに見ながら感想を言っている横で――


「たりゃ!」


 ガキン!!


 フルカスが飛んできた鎧の一部に剣を振り落としている――

 その結果、剣は鎧の欠片にはじかれた。


「硬い、それに軽い――よくわからない未知の物質でできている――あの青い鎧も同じ物でできているなら―――――かなり厄介だ――」

「……それは特殊硬化プラスチックやな。日本やと、自衛隊の装備とかに使われている素材や」

「なるほど――って!? 誰!!?」

「ワイや!」


 フルカスが慌てて声のする方を見るが、あるのはレイナたちがここにくるのに使った空飛ぶ乗り物だけ……


「ええっと、まだ誰か、ややこしいのがいるのか!?」

「しっかし、どこから特硬プラなんてもん調達しよったんやあいつ……」

「現物と材料があればダンジョンコアによって量産できるわよ」


 キョロキョロと周りを見渡して声の主を探すが、レイナがごくごく自然にその声に対応しているのを見て考えを改める――


「……………なにかしらのダンジョンモンスターでもいるのか? まあ、いくら見た目幼女でも、魔王だもんな……護衛がビューティ・ドールと勇者ってことはないな! うん!!」


 無理やり納得した。




「そして、日いずる国日本の象徴たる日輪の兜!!」


 ビッカ~~~~~!!!!!!


「「うわっ! 眩しい!!」」

「「「うおぅ! 眩しい!!」」」

「きゃあん~~眩しい~~!!」


 最後に頭部に施された丸い装飾品から強烈な光をは照射する兜が、ノヴァにかぶせられる!!


「これこそがこの世界を救うため異世界日本からやってきた――勇者ノヴァの最強の姿!!」


 トン!!


 秘刀・電光野太刀、蒼空の北斗七星、日輪の兜を身に着けた勇者ノヴァが、改めて舞台に降り立つ!!




「…………って、頭についているそれ!! 灯台の光源に使われていた“フラッシュ魔鏡”ではないか!!」

「ぬう! て、事は灯台異変の真犯人はノヴァ、お主だったのか!!」

「フラッシュ魔鏡は適正な管理、適時魔法燃料の補充、何かあった時のメンテナンスを怠らぬことで長く灯台の光源として使用できるものじゃ!! そのようにピカピカ好き勝手に光らせておればすぐにくすんで使い物にならなくなるのじゃぞ!!」


 グロービス兄弟、物知りばあさんが大声でノヴァを非難する!!


「え……この光るアイテムって僕の考えた最強装備にちょうどいいなぁって思って兜の飾りにしたんだけど……」


「許せん!! 港町ファトスにとって、灯台の光は漁師にとって帰還の目印、外来の船にとっては歓迎の証!!」

「それをたかだか兜の飾りだと!? ふざけてんのか!! 本当に、それが勇者のつもりか!?」


 怒りに燃えるグロービス兄弟が、手を取る!!


「「双頭竜グロービス!!!!!」」


 ドン!!


 グロービス兄弟が魔獣体、双頭竜グロービスへと変化する!!


「「ノヴァよ、その罪を、つぐなうがいい!!」」





「へえ、あのおっちゃんたち、なかなかいい魔獣体持ってんのね」


 双頭竜グロービスと勇者ノヴァが対峙している横で、他の者たちは邪魔にならないように舞台から降りて見学することにする――


「……魔族が魔人体と魔獣体の二つの姿を併せ持つ種族って話は聞いていたけど……レイナもああいうことができるのか?」


 ファロの目は日本のコンピュータへ映像を送るカメラになっているので舞台から離すわけにはいかない、だから会話する相手の方を見ることはできないのでちょっと失礼な感じになる……


「今度、カメラ用のドローンでも作ってもらおうかな……」


「そうだよ~~♪ レイナちゃんの魔獣体はおいそれと見せられないけどね♪」

『そういえば……日本で見せた翼は、魔獣化の一部って言っていたな』

「……レイナの完全魔獣化は私ですら見たことがないわ……」

「ふふん! だってレイナちゃんは魔王だし♪」

「シャルロッティってばあさんのサキュバス姿も落差が激しかったな……きっとすさまじいものなんだろう……見たいような、見たくないような……」




「「覚悟せよ、灯台異変の犯人ノヴァよ!!」」


 ――皆が見学に回った舞台上で、双頭竜グロービスと勇者ノヴァの戦いは続く!!


 ゴオオオオオオオオオオン!! ドン!! ドン!! ドドン!!


 双頭竜グロービスがチェーンクロウを振り回し、舞台に何度も叩きつける!!


「うわた! あ、ちょ、とととと……!!」


 それをちょこまかと逃げ回り、どうにか回避するノヴァ!!


「勇者ノヴァよ、これは試練です負けてはなりません」


 ちゃっかりと階段の上の方へ避難したポラリス4世が大声で叫ぶ!


「わかってるっ!! ええい、フラッシュ!!」


 ビカッ!!


 兜の魔鏡が激しい光を放つ!!


「「う、うお!! 眩しい!!」」


 その光が直撃し、顔をそむける双頭竜グロービス――


「今だっ!!」


 ガン!!


 チェーンクロウの迫力には格段に劣る電光野太刀の一撃が舞台に叩きつけられたチェーンクロウにあたる!


「雷撃っ~~~!!」


 バリバリバリバリバリバリ!!!!!!


「「ぬおっ―――――ぐぎゃあ!!!!!!」」


 電光野太刀から目もくらむほどのはげしい電撃がほとばしり、チェーンクロウを伝わり双頭竜グロービスを撃つ!!


 ドオオオン―――――ポンッ!! ドサドサ!!


 双頭竜グロービスの魔獣化が解け、元のグロービス兄弟に戻り舞台に倒れ伏す!!




「ぜ~~は~~ぜ~~は~~……………」


 息を整えふらつく足をどうにか抑え、立ち上がるノヴァ――


「さすがです、勇者ノヴァ――さあ、次の相手は魔王です」


 そんなノヴァに、ポラリス4世がたきつけてくる―――――


「そ、そうだね!! さあ、前座は終わった!! 魔王ちゃん、勇者の僕と戦ってもらう!!」




「しっかたないなぁ……」

「待ってレイナ!」

 名指しされ、舞台に上がろうとするレイナをアニスが止める――

「ノヴァ……でいいかしら? 勇者という名乗りは、私たち勇者の軍に所属していた者への挑戦と受け取っていいかしら?」


「え……? えっと……?」


「最初から魔王と戦うなんてできないでしょう? まずは私、勇者アニスが相手になります」


「……アニスちゃん、なんか怒ってる?」


「ええ、少し……」


 少し怖い笑みを見せ、アニスは胸元から淡く光る宝石を取り出す――


「え? それって僕がノーヴェル・マシーからもらった……」


「ダンジョンコアよ――その力を、ここに示しなさい――だけど、心は砕かない――ダンジョンの材料は―――――私自身―――――!!」


 ヴァン!!


 アニスが持つダンジョンコアから光が放たれ、アニスの全身を包み込む!!


「ま、魔法少女への変身!? 魔法少女飛翔苺ちゃんのような!!?」


 ノヴァが叫ぶ!!


「ま、日本人ならそう言うだろうな」

 ファロがノヴァの様子を見て、あきれたように言う――


「アニスちゃんはね、オリハルコンのコインをいつか所持しているの――それをダンジョンコアの力で武器や防具に変える、それが勇者の戦術――」


「……勇者の軍でも上の方……に所属されていた方々にのみダンジョンコアの所有が許されていた……俺みたいな下っ端……それも脱走兵には夢のまた夢ってやつだな……」


 レイナとフルカスが解説する――


 ザンッ!!


 光が消えたアニスは、シンプルな鎧と剣を身に着けた姿となっていた―――――


「さあ、私というダンジョンを攻略できるかしら!?」

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