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ダンジョン大陸A&J  作者: Zyuka TIME
第2章・天に舞い上がる少女
25/43

side-A・大活躍! グロービス兄弟

 ―――――次の日―――――




「何だろう? 僕、凄く疲れてる……」


「ああ、あのばあさんの家に泊まるといつもこうなんだ……生の魚料理は最初は面食らうが絶品、他の料理もうまいのでそのことには文句ないんだけどなぁ」


 フルカスとノヴァが少しフラフラになりながら灯台に向かう。


「なんか、今ならゴブリンと戦っても負けそう……」

「こんな北方にゴブリンはいね~よ……ゴブリンの生息範囲は大陸南方だ」

「あっそうなんだ……南の方にはいるんだ、ゴブリン……」


「何をやっておるのだ?」

「灯台の問題は、この町の死活問題なんだぞ」


 対称的に元気なグロービス兄弟は、巨大な鉤爪がついた大きな盾を、それぞれが持っている――


「……………それって、なんて武器? どうやって使う物なの? ……それで戦う姿が想像できないんだけど……」


 グロービス兄弟は、それぞれがっしりした体格なので苦もなくその大きな盾を持ち運んでいる――


「これはチェーンクロウ、我らの専用武器だ」

「使い方は簡単――ま、見てるがいい――」






「「ぐおおおおおおおおお!!!!!」」


 ドガ!! バギ!! ドゴン!!


 双頭竜グロービスになった兄弟が鎖に繋がれた巨大な盾をブンブンと振りまわしていく。


「ぼ……僕の出番が、ない………」


 舞台に上がった双頭竜グロービスは瞬く間に動く石像を吹き飛ばしていく!!


「体調が悪いならば、無理するのはよくないぞ……それにしても……」


 フルカスが双頭竜グロービスによって舞台の上から吹き飛ばされた石像を調べながら言う。


「フムフム~~よくよく見ると、これは~~ゴーレムタイプのダンジョンモンスター。じゃな?」

「うわっ!? ば、ばあさん!?」

「――!? ……いたのか? 物知りばあさん……」

「灯台の復旧はこの町の最優先事項じゃお主らからエナジーはもらったし、ワシも微力ながら手を貸そうと思っての」


「エナジーをもらう?」


「ほほほっ……子供は知らなくて良いのじゃ」


 物知りばあさんは半壊しながらも舞台に戻ろうとする石像を見ながら言う。


「「昨日は、準備もないままの不意打ちであったため、撤退するほかなかったが、今日はこの双頭竜グロービスの専用武器さえあればこの通りよ!!」」




 ドゴオン!!!!!




 強烈な一撃でほとんどの石像を舞台から弾き出す!!


「というか、これってどこまでやれば合格になるんだ?」

「ええっと……多分、全部の石像を舞台から落とせばいいかと…………」

「ふむ……」


「「ガ~~ハッハッハァ!!!! そんな簡単なことでいいならこの双頭竜グロービスの独壇場よ!!!!」」


 ポンッ!!


 最後の一体を吹き飛ばそうとした瞬間――軽い音と共に、双頭竜グロービスから元の二人、グロービス兄弟に戻ってしまう!!


「あ……」

「げ……」


 パッコ~~ン!!


 残った最後の一体を、ノヴァが剣の一振りで吹き飛ばす!!


「―――――おい! これで第一の試練は突破でいいだろ! 第二の試練を教えてくれ! ……できれば、簡単なヤツ、……を……」


「……わかりました――それでは階段を上ってきてください――次の試練は、私に私が納得する……芸術を見せてくれるものとします――」


「は? 芸術?」

「何? 芸術?」

「ふ~~むぅ……芸術とな!?」


 聞こえた言葉に対して、腑に落ちないという表情で、一行―――――ノヴァ、フルカス、グロービス兄弟、そして物知りばあさんは舞台からのびる階段を上る―――――


 そこには、大きな扉があり――小さな美しい少女が、その前に立っていた―――――

 その存在こそが、正に芸術と呼べるような完成度で―――――

 

「芸術……?」


「そう。この勇者の塔の扉を開けるにはこの私、ポラリス4世に芸術をささげる必要があるの」


 そう言うのは作り物としか思えない小さな美しい人間、ポラリス4世――噂に聞くビューティ・ドールというヤツだろうか?


「なんで勇者になるために何で芸術が必要なんだ?」


 フルカスが、当然の疑問をそのビューティ・ドールにぶつける。

 が、ポラリス4世はその整った表情を変えることなく淡々と言ってくる。


「芸術をささげることができないのであればこの塔の扉を開ける事はできません。お引取りください」


「ふざける――」


「まあいいじゃねえかフルカスの旦那よぉ!」

「つまりは何かしらの芸術ってヤツを見せてやればいいんだろ?」


「そうだな。おと者よ」

「ここは我らグロービス兄弟の出番ですな。兄者」


「その通り! かつて魔国の大貴族まで昇りつめたものの、没落してしまった我がグロービス家……」

「だがそんな中でも守り通してきた芸術があるのだ……」

「今こそ見せよう――かつて大魔王レオンガルデ様さえも魅了したという」


「「グロービス家最高の芸術を!!」」


 先ほど活躍した舞台での戦いでテンションが上がっているのだろうか? グロービス兄弟は率先して前に出る――


「ちょっとこのチェーンクロウを持っていてくれ――」


 そう言ってノヴァとフルカスに持っていた巨大な鉤爪のついた盾を渡す――


「て、重っ!!!!!」


 フルカスが苦も無く受け取っているのに対し、ノヴァは支えることにすら苦労している――




「「では始めよう―――――我らグロービス兄弟の芸術、ヒゲ・ダンディ・ダンスを!!」」


「はぁ?」


 グロービス兄弟は疑問の叫びを無視し、ダンスを始める!!




 ヒゲ・ダンディ♪ ヒゲ・ダンディ♪


 ヒゲヒゲ・ダンディ♪ ヒゲ・ダンディ♪


 ヒゲヒゲ・ダンディ♪ ダンディ・ダンディ♪


 ヒゲ~~ダンディ~~ダンディ・ダンディ♪


 ヒゲ・ヒゲ・ヒゲ・ヒゲ・ヒゲ・ヒゲ・ヒゲ・ヒゲ♪


 ダンディ・ダンディ♪ グロービス兄弟♪


 ヒゲ・ダンディ♪ ヒゲ・ダンディ♪


 ヒゲヒゲ・ダンディ♪ ヒゲ・ダンディ♪


 ヒゲヒゲ・ダンディ♪ ダンディ・ダンディ♪


 ヒゲ~~ダンディ~~ダンディ・ダンディ♪


 ヒゲ・ヒゲ・ヒゲ・ヒゲ・ヒゲ・ヒゲ・ヒゲ・ヒゲ♪


 ダンディ・ダンディ♪ グロービス家相伝♪


 ヒゲ・ダンディ・ダンス!!!!!





「それのどこが芸術なのですか?」


 一連のヒゲ・ダンディ・ダンスが終わると、ポラリス4世があきれたように言う――


「何を言う!! このヒゲ・ダンディ・ダンスはグロービス家の誇り!!」

「魔界貴族から没落しても守り続けた伝統ぞ!!」


「そんなダンスを伝統にしてたから、没落したんじゃないの?」

「そうか? 俺はそれ以外にも原因があるような気がするぞ」


 ノヴァもフルカスもあきれて言う――


「いや、そうではないの!! 今回のヒゲ・ダンディ・ダンスには、大~~きな、減点対象があるのじゃ!!」


「――何っ!! どういうことだ!? 物知りばあさん!?」


 ヒゲ・ダンディ・ダンスが芸術たり得ないと言われ、憤慨したグロービス兄弟が物知りばあさんに詰め寄る――


「気づいておらなかったのか? 弟の方よ――そなたのヒゲが、半分がなくなっておることに!!」


「―――――!!!!! ああ、そういえば!!!!! 昨日の試練の時!!!!!」


 弟の方がハッと思いだしたように顔に手を当てる――

 そこの顔にたくわえれていたはずのヒゲの半分は――昨日石像との戦いで、無残にもむしり取られていた――


「す、すまない兄者!! 昨日我が油断したせいでヒゲ・ダンディ・ダンスの完成度を著しく下げるという大失態をおかしてしまった!!!!!」

「――案ずるな、おと者よ――素晴らしきヒゲが再び再臨した暁には完成したヒゲ・ダンディ・ダンスを魅せつけてやろうではないか!!」


「おいおい、そんな時間はないだろ!!」

「そうじゃな――完璧なヒゲ・ダンディ・ダンスならば、あのビューティ・ドールに認めさせることは可能じゃが、今はいち早く灯台を取り戻せねばならぬ――」


「いや、あのダンスじゃ無理だと思う……ここは僕の……」


「仕方ないの~~あまり人に見せるものではないが、ここはワシが何とかしてやろうかの」


 何か言いたげなノヴァを尻目に、今度は物知りばあさんが前に出る。


「――今度は何をするつもりですか? 先程のダンスのような物であればこの扉を開けることはできませんよ」


 ポラリス4世はその美しい顔を少し歪ませながら言う――


「それは――ワシの魔獣体を見てから言うのじゃな――」


 ――カツン――


 物知りばあさんの手から飾り気のない杖が離れる――




「え? あのばあさんも魔獣体が、あるの!?」

「まあ、ない方がおかしいだろ? あのばあさんも一応は魔族らしいからな」


 その時、辺り一面に影が落ちる―――――


「うん――? これは?」


 一瞬、ばあさんの魔獣体の影響かと思った、が―――――違う――――!!


 今自分たちがいる塔よりも高い場所に、何かがやってきたのだ――!!




「「「「「「――!?」」」」」




 それは、空に浮かぶ巨大な城―――――!!!!!

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