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ダンジョン大陸A&J  作者: Zyuka TIME
第2章・天に舞い上がる少女
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side-A・双頭竜

「さぁ! かかってこい!! このまま第一の試練を突破してやる!!」


 パッコ~~ン!!


 ノヴァ――そう名乗った男の子が剣を振ると、石像があっさりとかっ飛ばす!!


「なんだあれ? 我らは、ふざけた茶番でも見せられているのか?」

「兄者、もしかしてあの石像はものすごく軽いのでは?」

「いや、先程我が持ち上げた物は結構な重かったぞ!!」

「そんな事よりも、ここは一体引いて体制を立て直す!!」


 フルカスが別の石像を押さえながらそう叫ぶ!!


「こんなふざけた物体が町の中で暴れたりしたらとんでもない被害になる!! 早急に対策を立てなきゃいけねえ!!」

「いやいや、今のまま次の試練に行くべきだって!」


 ノヴァが、フルカスの抑えていた石像をかっ飛ばし、そう叫ぶ!!


「言っている場合か!!」


 フルカスはそのまま別の石像に向かおうとしたノヴァを持ち上げて止める!!

「――!? ――軽い!?」

「は、離せよ! オッサン!!」


 フルカスは一応鎧を着こんでいるはずのノヴァが、見た目よりもはるかに軽いことに驚く―――――


「それに、ほら! 簡単にはこの舞台から降ろしてもらえそうにないぜ!!」


 ノヴァが、ブンブン振り回す剣の先にはかっ飛ばされた石像たちが舞台の端に並びだしてるのが見える―――――


「ここは、あいつらを全滅させて試練を突破するか、舞台から降りて試練から逃げ出すかしかないんだよ!」


「……舞台から降りればあの石像らは追ってこないのか?」

「町まで追ってきて暴れだす、なんてことはなんだろうな!?」


 ノヴァの言葉にグロービス兄弟が反応する。


「あ~~あいつらは、舞台の上でしか戦わないように命令されているはずだ!」


「……………その言葉、信じて良いのだな。おと者!!」

「わかった! 兄者!!」


 ダッ!!


 グロービス兄弟が共に石像を突き飛ばし、猛ダッシュで駆け寄る!!


 バアン!!


「「“双頭竜グロービス”!!!!!」」


 カカッ!!


「えっ?」


 グロービス兄弟の声と体が重なると共に二人の境界が溶け一体の異形へと変貌する!!!!!


 二つの頭を持ち、四枚の大きな翼と極太の巨椀を持った、鈍色の―――――竜―――――!!!!!


「「フルカス!! その子供をしっかりと捕まえておけ!!」」


「ああ、わかった!!」


 グロービス兄弟改め、双頭竜グロービスの二つの口から出た言葉に、フルカスが応じる――


「え? え? えっと? 何あれ?」


 フルカスに捕まっている状態のノヴァは双頭竜グロービスに圧倒される―――――


 ガシッ!! ブオオオオオン!!


 双頭竜グロービスはそんな二人を掴むと、四枚の翼を大きく羽ばたかせ大きく舞い上がる!!


「っ!!」


「う、うわぁ~~~~~っ!!」


 ズザザザザザ!!


 そのまま石像たちの頭上を越えて舞台の外へ滑落した!!




「試練参加者の逃亡を確認。今回の試練は、不合格とします」


 舞台に上がる前に聞こえたのと、同じ声がそう宣言する。


 ガシャンガシャン!! ギギ~~!! ガガガ!!


 それと同時に石像たちも最初の位置――舞台から降りてその周りに整列しなおす――


「あ、ちょっと! 僕は逃げたわけじゃないぞ!!」

「落ち着け!! 何の対策もなしにあんなのを相手にできるわけないだろ!!」


 フルカスが慌てて舞台に戻ろうとするノヴァを持ち上げて止める!!


「そうだな。我らも武器が必要であろう」

「そうですな、兄者――我はヒゲの手入れもしておきたい」


 双頭竜グロービスから元の二人に戻った、グロービス兄弟がそう言った。


「てか、何なんだ!? あんたら!! あんな変身ができるなんて聞いてないぞ!!」


 ブンブンと、振り回す剣で兄弟を指すノヴァ―――――


「は? 変身? そんなの出来て当たり前だろう? 我らは、魔族だ」

「魔族とは、魔人の姿と魔獣の姿の二つを使い分けることができる種族の事である」


「まあ、この兄弟みたいに二人で一体てのは、珍しいタイプらしいけどな」


 さもそれは当たり前の事柄であるかのように、フルカスが言う。


「一般的な魔族は、体の一部分だけをほんの少しの時間魔獣化させることが多い――今回、我ら兄弟が完全魔獣化の双頭竜を見せたのは、特別だと思いたまえ」

「その通り、まあ我らは下級魔族のように魔獣化で理性を失う――なんてことはないので安心せよ」

 どこからともなく取りだした服を着ながらグロービス兄弟が言う――


「ええっと、つまり魔族ってのは人間の姿とモンスターの姿を使い分けてるって事?」


「……そんなのは当たり前だろ。お前は今まで魔族にあった事はないのか?」


「え……ええっと………僕の住んでた場所に魔族ってのは、いなかったから……」


「魔族がいない? ということは……中央大陸かどこか……別大陸の出身者か?」

「このダンジョン大陸で魔族がいない土地なんてほぼないだろうに」

「いや、中央大陸にも魔族はいるはずだぞ――多分、魔獣化を見せていないからそうだとわからない、ってだけだろう――」


「それにしても、中央大陸ではこんな軽い剣を使っているのかね?」


 グロービス兄弟の弟の方がほんの一瞬でノヴァの剣を奪い、ブンブン振り回しながら言う。


「あ、僕の剣を返して!!」


 ノヴァは手を伸ばし剣を取り戻そうとする。


「我ら兄弟が使うにはちょっと物足りないものだな」


 その時だった―――――


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