side-A・やっと始まる異世界冒険
『あ~~テストテスト……本日は晴天なり、本日は晴天なり~~見えてるか~~ファロ~~? 聞こえてるか~~ヤッタルデー?』
「聞こえてるよ。マスター」
オレたちはモニターの画面越しに、マスターである神城真一と会話を始める。
『うわあ! 本当にガイノイドのファロが自分の意思をもって動いてる!! 真一や麻理姉に聞いていたけど、実際に見てみると感慨深いものがあるわね!!』
近況報告と現状確認のために行われるテスト報告のはずなのに、マスター以外の人間も、画面の向こう側にいる――てか、なんで浅科梨乃亜?
『おいおい、梨乃亜――これは、向こうにも見えてるんだぞ! ファロやヤッタルデー以外の連中がいたらどうする!?』
『それだったらまず挨拶ね! ていうか、秘密の任務っていうのなら、学校にこんなもの持ち込まないでよ!』
「………え? 教室で報告業務やってんの?」
『しゃあないだろ!! 家じゃ綾花もいるし――かと言ってアメシストなんてしゃれた喫茶店は俺一人じゃ入りづらいんだよ!』
ちなみに、綾花――神城綾花っていうのはオレ……じゃなくて真一の妹である。
『まあ、東屋部長が行方不明になってから人があまり来なくなったから、この教室は都合がいいと思ったんだ!!』
どうやら向こうはヒューマノイド研究部の部室らしい。
『それに私はまだ異世界人っていうのに会ったことがないからちゃんと自己紹介をしなきゃね! 私が麻理姉や超常自衛隊の特佐さんから日本代表として選ばれた交渉人、浅科梨乃亜だって!』
『いやいやいやいや! 日本代表の交渉人を任されたのは俺、神城真一だ!! 梨乃亜、お前は補佐、だろうが!!』
オレたちが見ている画面の中で仲良くいい争いをする真一と梨乃亜――
「知らん人間が見たらマスターと梨乃亜が、イチャイチャしとるように見えるな……」
ヤッタルデーが、そんな画面の中を見て呆れたように言う。
『『誰がイチャイチャしているか!?』』
「なんか息ピッタリね――」
「仲いいね~~♪」
「あ、レイナ、アニス」
『あの時の異世界人の……どうしてこの場に?』
『はじめまして! 浅科梨乃亜だよっ!』
いつの間にかやってきた魔王と勇者の2人の少女――
「私は勇者アニス、よろしく」
「ここはレイナちゃんの浮遊魔城、下手な隠し事はできないよ♪」
「隠し事をしているつもりはないんだけどね」
―――――そう、ここは日本ではない、地球でもない―――――
異世界にあるダンジョン大陸――そこに存在する魔王レイナを城主とする浮遊魔城――
そこにオレたち――オレ、ファロとヤッタルデーはいる。
そして、オレとヤッタルデーのマスターである神城真一は―――――日本にいる……………
『ったく……本来なら、俺が主役という立ち位置で異世界に転移するってのが普通だろ!? なのになんでダンジョンモンスターを作ったことによる心の分離の影響を調べるため、なんて理由で日本に残ることになるんだ?』
『麻理姉は、何でヤッタルデーを日本に残さなかったんだ~~ってすねてたけどね』
異世界に来るときに、オレたちは日本のとある大学――浅科梨乃亜の姉、浅科麻理沙が教授職に就いているという大学と、超常自衛隊とで共同開発したという、異世界通信機なるもので世界をまたいでの会話が可能になっていた……………
「ヒューマノイドのオレやスーパーロボットのヤッタルデーが言うことじゃないんだろうけど、凄すぎないか? 日本の科学力……」
「オーバーテクノロジーとか深く考えたらあかんで! 深く考えてたらこれから先の物語が進まへん」
『そうそう。麻理姉の大学やかの超常自衛隊を有する日本にとって、針の穴くらいの繋がりあれば通信可能な機材を作り上げるのは可能なのよ!!』
『………………ツッコミの重要性がよくわかる会話だな……………』
「そういえば、その超常自衛隊――ギンガ君や他の人たちはいないの?」
『七瀬さんや他の超常自衛隊の人たちも必死でE国との戦争回避に向けて動いているらしいよ――俺たちみたいな一般市民には情報が回っては来ないけどね』
そういや、E国ってとこが日本に宣戦布告してきた――とか言ってたな……?
『……E国は、建国から50年もたっていないのに、周辺諸国に何十回も宣戦布告をしているなんて国だ――さすがに数年前世界中で巻き起こったパンデミック時はおとなしくしていたらしいけど、最近になって以前の活動を再開したとか何とか……』
『制裁と交渉で戦争回避に動くって言ってたけど、具体的にどうするかなんて、私たち一般市民に教えてくれるわけないのよね』
『それでも、俺たちには逐一ホウレンソウをしっかりとって、言われているけど――』
「……ここ、何で食べ物の法蓮草が出てくるねん!? って言うべきか?」
『それは、浪花大戦ヤッタルデーの第3話でやってるからもやらなくていい!』
ええっと浪花大戦ヤッタルデーの第3話っていうのは……………
『それを説明する必要なんてないだろ』
「それは説明する必要はあらへんやろ」
オレの心の中に突っ込みを入れるマスターとヤッタルデー――というか、元々の心は同じなんだから、それぞれ自分の心の中に突っ込みを入れただけなのかもしれない。
「あ、そういえば、ちょっとした噂があるんだけど、いい?」
アニスが、何か思い出したように言った。
「噂?」
「北にあるファトスっていう海沿いの町で、そこにある灯台がおかしな建物に変わったんだって」
「おかしな建物?」
「うん。ま、伝え聞くだけの情報じゃ新しいダンジョンか何かかと思うんだけど……そこではビューティ・ドールの目撃情報があるんだって!」
『ビューティ・ドール……? ヒューマノイドのことか!?』
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。ま、新しいダンジョンがあって、そこにダンジョンコアがあるっていうならレイナちゃんは取りに行くけどね♪」
レイナが嬉しそうに言う。
「それに、ファトスっておいしいお魚料理があるんだよ♪」
「そしてそのファトスに日本人がいたとしたら――何を日本からもらおうかしら?」
少し怖い笑顔でそう言うレイナとアニス――
『まあ、とりあえずはそこ行ってみるしかないんじゃないか? 取らぬ狸の皮算用なんて話し合っててもしゃあないんだから』
「そうね~~それじゃパレスちゃん♪ 北方に移動お願い!」
『わかったわ。レイナ』
レイナの言葉に浮遊魔城を制御している存在、パレスと呼ばれている――紹介された時に聞いた話だとダンジョンモンスターらしいが、その元々の心の持ち主はレイナやアニスではないらしい――じゃあ誰だ? と質問しても答えてはくれなかった――が、返答してゆっくりと移動し始める。
「さあ、新たなる物語の始まりだよ!!」
そう。これから異世界に連れ去られた日本人を探す旅――それが本格的に始まるのではある!!
☆☆☆☆☆ファロ・オリジン☆☆☆☆☆
~~了~~
『次回予告』
『さ~~て、次回の魔法少女飛翔苺ちゃんは!?』
『よっこです。苺先輩と最近、いい感じの北川さん~~いつも奥手な2人だけど、今回こそはこのよっこの手で初デートを完遂させてあげるんだから!! うん!? あれって邪々魔女イルダ!? なんで苺先輩のデートを妨害しようとするの!? え!? 苺先輩ってもしかして!!?』
『というわけで、次回は、『天に舞い上がる少女』だよ!! マジカルジャンケン♪ ジャンケン、ポン!!』




