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ダンジョン大陸A&J  作者: Zyuka TIME
第1章・ファロ・オリジン
16/43

side-J・パフェ

 パフェ。


 パーフェクト――という言葉を省略して作られた言葉で、デザートにおける一つの頂点――とかいいつつ、結構な種類が存在し、作り手たるパティシエやパティシエールの技量を問われる――


 この喫茶店アメシストのマスターでパティシエールだという女性――七瀬さんの奥さん――七瀬紫鶴さんはかなりの技量の持ち主で、見るからに食欲をそそる美しくて豪勢、それでいてどこかしら気品すら感じられるパフェを二品――作り上げてレイナとアニスの前に置いた――


「これ……本当に食べ物、なの?」

「なんか唯一無比の芸術品のような……でも、二つあるし……」


 素人であるオレから見てもわかる――この七瀬紫鶴さんって人はかなりパティシエールとして、超一流の腕前を持っている――!!


 ……ちなみに、もう一人の……浅科麻理沙さんっていう白衣の女性は、駐車場で人型に変形したヤッタルデーに狂喜乱舞し、そこから離れず店内にはいない……


「梨乃亜との関係を聞きておきたかったんだけど……………」

「ああ、四姉妹の長女と三女だって」


「え?」


 オレのボヤキに、真一が答える――


「間に大学生の次女と中学生の妹がいるんだと――」


 真一は手に持つスマホを見ながら答える――


「いつ、梨乃亜とライン交換してたんだ?」


「いつでもいいだろ――」


 そう言って真一は運ばれてきた紅茶を一口飲む――




 さて、日本の少女たちにはお馴染みのデザートであるパフェ、異世界の少女たちはどんなふうに食べ、感じるのか……………?


「おいしい!! すっごくおいしいよ!! この食べ物!! それに芸術品みたいにきれいだし――全体的ににひんやり~~!! この建物の地下に氷室があるの? それとも氷雪系の魔法?」

「果物にひと手間加えているのかしら? カケラなのに、すっごく濃厚――それに調和させるかのように作られたクリームやこの冷たいの――そして口の中ではじける飲み物――すっごく刺激的♪」


 ものすごく、絶賛されている――幼く見えるレイナはともかく、凛々しい感じのアニスも夢中になってパフェを食べている――


「ねえこれ、シヅルちゃんがつくったの? もしそうなら、パティシエールとして次期魔王レイナちゃんの仲間にならない? 今なら浮遊魔城の厨房統括責任者の地位を約束するわ!!」


「ふふふ……ごめんなさいね。私にはこのアメシストと旦那、そして娘がいるから別の所に就職はできないわ」


「それは残念~~」


 本当に残念そうにものすごく落胆した表情を見せるレイナ――それでも、パフェを食べ続ける。


 ほどなくして、2人の少女のパフェはなくなった――


「ふう~~ご馳走様~~」

「……あなたたちは食べないの? こんなにおいしいのに♪」


「僕は甘いものは苦手でね――」

「ああ、俺はここの注文実費って言われているんで……」


 そういう七瀬さんはブラックコーヒーを飲んでおり、真一の前にはさっきから少しづつ飲んでいた紅茶が置かれている――


「ファロちゃんは?」


 当たり前だけど、オレの前には何もない……


「オレはそもそも作り物のガイノイドだし……」


「え? あれ? ……作り物?」


 オレの言葉に、レイナのなんかこう、複雑そうな視線を向ける――


「ファロちゃんって、元々そ~ゆ~ちっちゃな女の子的生き物じゃなかったの?」


「て、ことは……もしかしてファロちゃんってダンジョンモンスター!?」


「うそ!!?」


 ガシッとオレをつかむレイナ――そして、まじまじと見つめ……


「信じられない――受け答えがきちんとできているから、心をたくさん与えられたザ・ファーストなんでしょうけど……それなのに美術品をモンスター化させたアーティファクトタイプのような完成度――そしてエネルギーの流れに心と形を与えたエレメンタルタイプのように滑らかに動き――それなのに、作り物って……ゴーレムタイプになるの!?」


「もしかして、ビューティ・ドール?」


 オレを捕まえてまじまじと見続けるレイナに、アニスが何かを思い出したようにつぶやく――


「誰が作ったかわからない野良ダンジョンでものすごい完成度の美しい人形モンスターを見たという――」


「それってただの噂でしょ? ……レイナちゃんだって芸術品と呼ばれるようなダンジョンモンスターを生み出そうとして、何度も、何度も失敗してるんだから!!」


「ゴーレムタイプ、美しさを優先すれば動きが阻害され、動きを優先すれば美しさが損なわれる――やっぱりダンジョンコアを使う場合はウェポン精製が一番ね――」


「それはアニスちゃんが勇者とはいえ人間だからでしょ!」


「でも、もしファロちゃんみたいな見目麗しい美しいダンジョンモンスターがいたとしたら――そりゃ噂にもなるでしょうね」


「それどころか、絶対にレイナちゃんが全員見つけ出して仲間にするわよ!!」


 オレの事でだいぶ盛り上がるレイナとアニス――なんかレイナ、口調が少し変わってない?




「あの、いくつか質問してもいい!? ファロちゃんみたいな美しいダンジョンモンスターをどうやって創造したのかとか!?」 


「それと……さっき食べたパフェという食べ物の源材料と……レシピも教えてほしい!」


「あ、それはレイナちゃんも知りたい!! 教えて!!」




「それは構わないが、こちらからの質問にもいくつか答えてもらえるか?」


 詰め寄る2人の少女に対し、七瀬さんが静かにそう言った――


「……何が聞きたいの?」


「あのゴージャスな不審者――ノーヴェル・マシーとは何者なのか――?」


「ノーヴェル・マシーのおじ様? あれはねえ、レイナちゃんのお友達、ヴェルちゃんのお父さんだよ」


「いや、そういうことを聞いてるんじゃなくてだな……」


「……よろしければ……私たちがあのノーヴェル・マシーを追いかけてどうやってこの世界に来たか……簡単に、ですがお話ししましょうか?」


 レイナの言葉に少し頭を抱えた七瀬さんに、アニスがそう言った――


「……………よろしく、頼む……………」

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