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ダンジョン大陸A&J  作者: Zyuka TIME
第1章・ファロ・オリジン
15/43

side-J・アメシストに到着

 ブロロロロロロロロロロ……………


「速い――そして、快適――それなのに――人々は、この乗り物をみても、さほど驚いていない――」

「てっいうか~~同じような乗り物も無茶苦茶多く走ってる~~見上げれば、星空が見えるような時間帯なのに、街行く人も多いしその街自体もはなり明るい――不思議な世界――♪」


 走る車の中で、レイナとアニスは窓の外を見ながらきゃいきゃいと騒いでいる――


「もしもこの乗り物が珍しいもので、中にレイナちゃんみたいな超絶かわいい女の子がいるってわかったら、どこでもどこでもむちゃくちゃな大騒ぎ~~になっちゃうはずなのに、ねっ♪」


「それだけ注目されないってことは、やっぱりこの自動車っていう乗り物はそれほど珍しいものじゃないってところかしら? あってる? ファロ――」


「ま、確かにそうだけど……だいたい一家に一台くらいはあると思う。正確な数字はオレも知らないけど……」


 そしてオレは、その2人の少女から質問攻めにあっている……………


 前座席の七瀬さんと真一の声は分厚いガラスの壁にさえぎられていて聞こえてこない……が、こちらの声は向こうに聞こえている気がする――もちろん、録音もしているだろう……


 だからこそ、余計なことは言いたくないんだけど……


「あれ? あの家、さっきもなかった?」

「いえ、さっきのとは建物の形が違うわ――でも、外装は同じ――人が出入りしてるから何かしらの同じ施設があちこちにあるってことかしら?」

「いや、あれはただのコンビニだって……」


「「コンビニ?」」


「コンビニエンスストアって言って、24時間365日開いているお店! 食料とか日用品をいつでも買うことができるんだ」


「――お店? ……それってあんなにたくさん行くもの場所に必要なものなの? なんかすぐ近くに同じようなお店がちょくちょくあるみたいだけど?」

「この自動車って乗り物を使えば、離れた場所に買い物に行くのに時間なんてそんなにかからないんじゃない?」


「少し何かが欲しいって時にいちいち車なんてつかえないって人が家や職場の近くのコンビニを利用するんだ――日本人ってのは、とにかく時間に厳しい人間が多いからね」


「……レイナちゃんも商売はするけど、物販は……店舗でやるとして、物流はどうなっているの? それに、こんなにたくさん店舗があったら、それぞれ警備が大変なんじゃないかしら?」


「――いやいや、そんなに詳しくは知らない――第一、オレだって見るのは初めてなんだし―――――」


「え? そうなの?」



 ―――――!?



 言って、初めて気づく……そういえばオレは……………


 オレ、ファロという存在は……………




「ねえ、もしかしてファロちゃんって希少種族なの?」


「――は? どうしてそう思うんだ?」


 ひとしきり街仲を観察したらしいレイナが、今度はオレに興味を向けてきた――


「時々止まってる時に周りを見ても、ファロちゃんと同じような大きさの人間って、全然見ないからさ」


 確かに、街中でヒューマノイドを持って出歩く人はそういないだろう――


「そうかしら?」


 何かを思い出すようにアニスが口を開く――


「この車に乗り込む時にごじゃごじゃ言っていた人が、ファロによく似た派手な格好の子を持っていたけど?」


「ああ、魔法少女飛翔苺ちゃん、か……」


「服装とかは全然違ったけど、顔立ちは結構似ていたからあの子はファロの同種族だったんじゃない?」


「よく見てるね! さすが魔王探偵レイナちゃんの助手アニスちゃん!!」


 探偵といいながら、観察眼はアニスの方が優れているらしい――


「あ、あれもファロちゃんと同じ種族かな?」


「あれ?」


 車の速度が落ち、ある店の駐車場に入ろうとしている――その店舗の入り口に、人の目の高さより少し下当たり――車の座席に座っていても見えるような位置に透明なケースがあり、その中では小柄なヒューマノイドたちがちょこちょこと動いていた――


 ケースの中は小さな飲食店のようになっていて、お客役のアンドロイドが席に着き、メニュー表を指さしながら注文をするような動作をすると、ウェイトレス役のガイノイドが小さくお辞儀をして厨房の方へ移動し、やがて小さな食品サンプルを持って席に移動する――


 一連の動作が終わると、ケースの中はブラックライトで真っ暗になり、ピンク色の文字で、


『Welcome To Amethyst』


 と言う文字がゆっくりと回転している――


 なんてことはない、街中でよく見かける小型ヒューマノイドを使ったディスプレイ……もし、レイナやアニスに言われなければ特に気にする事もなかっただろう――


 ブラックライトが消えると、再びお客の注文シーンから再開する――お客役のヒューマノイドは別のものに変わっており、母親役らしいガイノイドと、せわしなく動く子供役らしいアンドロイドになっている――

 ――注文を受けたウェイトレス役のガイノイドの後を子供役がついていこうとして、母親役に止められるという光景が見られる――


 これらヒューマノイドたちの行動は、すべてAI制御でそう動くように作らたものだ――電源を落として動作を止めるか、行動プログラムを変更しない限り、このディスプレイヒューマノイドたちは延々と同じ行動を繰り返す――というか、世間一般のヒューマノイドとはこういうもの―――――


 オレはそういったヒューマノイドの運命から、はずれている――!?




 ガチャッ!


 オレの思考とは裏腹に、駐車場に車を駐車した七瀬さんが、後部座席のドアを開ける――


「ついたぞ、アメシストだ」


「え? ここが……?」


 そういえば『Welcome To Amethyst』って、あったっけ?


「でもここ、普通の喫茶店じゃ?」


 車から降りたレイナとアニスが物珍しそうにキョロキョロしている間に、オレは同じように降車した真一のそばへ飛んでいく――


「――臨時休業になっている――?」


「してもらったんだ――大勢に聞かせていい話かどうか、まだわからないからな」


「そのせいで商売あがったりだけどね――銀河から所用でここを使いたいって連絡があったからお客さんに帰ってもらったのよ。ちゃんと補填はしてくれるんでしょうね?」


 駐車と同時に喫茶店アメシストから出てきた二人の女性のうち、エプロンをつけた美人がそう言う――


「そう言うなよ、紫鶴――」


「しづる……………?」


「七瀬紫鶴。このアメシストのオーナーであり――」

「この僕、七瀬銀河の妻だ」


「「え?」」


 思わず、二度見してしまう――


「ねえ、銀兄ぃ! 動くヤッタルデーはどこにいあるの!?」


 もう一人、大きな眼鏡をかけた白衣の女性が七瀬さんに詰め寄る!!


「麻理沙――それはあくまでおまけだ――というか、どうしてお前がここにいる?」


「えっと、誰?」

「大学助教授、浅科麻理沙――アニメヤッタルデーが現実に出現し、そこに超常自衛隊がかかわっていると聞いてシズ姉ぇの所にくると踏んで来てみたの」




「「浅科?」」

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