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ダンジョン大陸A&J  作者: Zyuka TIME
第1章・ファロ・オリジン
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side-J・車に乗って

『道をあけてください――車両が通ります――道をあけてください――車両が通ります――』


 事が終わったとみて、早々に立ち去る者たち――または続きがあるのかと残って成り行きを待ってその場に残る者たち――そんなこんなで、ある程度減ってきていた野次馬たち――が道をあけると、大型のジープ? 装甲車? そこまで詳しくはないんでよくわからないが、自衛隊の専用車両らしきものがそんな音声を流しながらゆっくりと、こちらに向かってくる――


 運転席どころか人が乗ってすらいない、自動運転機能がつけられているのだろう……


「なにあれ? モンスター?」

「あ、あれは車――自動車だ。普通の、とは違うみたいだけど」


 近づいてくる車に剣を構えようとしたアニスに対し、オレは思わず声をかけてしまう――


「――車ぐらいはわかるわ。だけど獣車や竜車ならそれを引く動物が――魔動車ならそれを操る術者がいるはずよ」

「誰かがダンジョンコアを使って心をわけ与えたんじゃない? まあそれならダンジョンモンスターってことになるけど」


「心を――わけ与える――?」


 レイナの言葉で、考えてしまう――




 オレ、ファロという存在は……………?




「――ヤッタルデーって、アニメではフライングモード――飛行機の形態に変形ができたな? それができるか?」


「ちょっと待ってや――えっと、アニメやと虎太郎の『ヤッタルデーフライングモードや!!』のかけ声で変形するんやけど……」


「かけ声はいいから、変形ができるならフライングモードでこの車の屋根の上に乗ってくれ」


 オレの葛藤とは関係なく七瀬さんは着々と移動準備を進めていく――


「わ、わかった――やったるで! ……やっぱ、かけ声は必要やな―――――ヤッタルデーフライングモードや!!」


 ガチャンガチャン! シャキーン!! ズン……


 ヤッタルデーが変形してフライングモードになると、ゆっくりと飛行し車両の上に乗る――


「大丈夫か? 固定するぞ?」

「ああ、たのむわ」


 七瀬さんのスマホ操作で、カチャンカチャンと金具が動き、ヤッタルデーを車の上に固定する――


「だ、大丈夫なんか? これ……?」

「災害時に大型重機などを搬送するのに使う特殊車両だ。お前程度の大きさのものを運ぶのには何の問題はない」


 そう言って運転席に乗り込む七瀬さん。


「――真一君、君は前の助手席に乗ってくれ――お嬢さん方は後ろの座席へ――」


「……え、はい! わかりました」


 そう言って素直に助手席に乗りこもうとする真一――


「こういう場合ってさ、敬礼とかした方がいいのかな……?」


 そんなことを言っている真一に、もちろんオレもについていこうとして――


「ダメじゃない! お嬢さん方は、後ろ! でしょ!」


 その言葉と共に、横からのびてきた手にさらわれる!!


「え?」


 オレをつかんだのは、幼い魔王少女――


「あ、ええっと、確かレイナって言っていた――」


「そうだよ! 今は亡き大魔王レオンガルデの愛娘レイナちゃんだよ! よろしくね! ちっちゃなお嬢ちゃん♪」

「私は勇者のアニス――それで、貴女の名前は?」


 オレを捕まえたレイナと、その相方のアニスがオレに肉薄する――


「え? あ、オレ? オレは……」


 よく考えたら、自意識ではオレは真一……なんだけど……


「ファロ」


 ……………そう、答えてしまう……………


「ファロちゃんか!! よろしくね!!」

「よろしく、ファロ」


「ああ、よろしく……」


 というわけで、少女2人と共にオレは後部座席に乗ることとなった――


「うわっ! ふっかふか! すっごく座り心地がいいよ!! これ!!」

「どれどれ? あ、ほんとだ! この座席、貰って帰って私のマジックフライヤー号につけられないかしら?」

「これ、結構鈍重そうだし高速で飛び回るマジフラには合わないんじゃない? どう思うファロちゃん?」

「いや、オレそのマジックフライヤーてのがなんなのか、知らないから……」

「そっか! じゃあ今度見せてあげるね! 結構かっこいいんだよ! まあレイナちゃんの浮遊魔城ほどじゃないけど!」

「ふゆ~まじょ~?」


 なんか、この少女たち――オレに対して距離近くない?




 オレや真一、少女たちを乗せた車は七瀬さんの運転で発進し……………


「あ、あの!! 麿たちもそのアメシストとやらに、同行してよいでごじゃるか!?」

「拙者たちも何が起こっているのか知りたいのでござる!!」


 突然、野次馬の中から飛び出してきた2人の男性が車の前に立ちはだかる!!


「……君たちは?」


「麿は猪名寺秀作でごじゃる!!」

「拙者は福富疾風でござる!!」


「麿は途中からではあるが今回の様子を録画していたでごじゃる!!」

「このままでは拙者、ヤッタルデー行く末が気になって眠れぬでござる!!」

「麿の奥方候補である苺ちゃんに心を持たせたいのでごじゃる!!」

「拙者はダンジョンコアとやらに魅せられているでござる!!」


 2人は、必死になってついて来ようとしていた……………


「……悪いが、安全保障ができない――」


「安全……?」


 よく見ると、前方の座席と後部座席の間に透明な壁がある――

 見た感じ結構薄いものだが、かなりの強度がありそうだ――


「というかオレは、安全保障の対象外!?」


 いやいやいや、オレ自身は本来自分の意志なんかもっていないはずの小さなガイノイドなんだし……当然か……


「悪いが、今回ついてくるのはあきらめてくれ――もしかしたら動画資料の提出を頼むかもしれないから、連絡先等を二曹に教えておいてくれればありがたい――」


 車は七瀬さんの運転で、2人を置いて発進した……

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