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伯爵子息様に婚約破棄されて農夫の嫁に出されました。え、旦那さまは10歳!?  作者: 羽黒楓


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第10話 告白

 ルパートはふっと私から目をそらすと、


「ええと、僕は、ミントさんといい夫婦になれればいいと思ってるよ」

「そうじゃなくて。たとえばさ、ルパート、村で好きな女の子とかいなかったの? 同じくらいの子もいたみたいだよ」

「うーん……僕、好きとか、よくわかんない」


 困ったような顔で言うルパート。

 そっか、まだ十歳だもんね。

 まだ、なにも知らないんだ。

 そんなこと言っても、私だってまだ16歳。

 何にも知らない。

 恋も人生もまだなんにも知らないよ。

 そう思うと、なんだかだんだん悔しくなっちゃった。

 人生の大事なこと、ぜーんぶ他人に決められちゃってさ。

 そりゃ、我が国の現代の風習だったら、貴族の娘なんて結婚の自由なんてほとんどないようなもんだけど。

 でも、16歳と、10歳。

 あんまりといえばあんまりじゃないかな。


「ね、ルパート、私で、がっかりしなかった?」

「してないよ!」


 即答するルパート。


「すごくきれいな人だと思ったし、こんな貴族の血筋の人が僕の奥さんになってくれるなんて……。なんか、実感がわかない感じ。今でも。夢の中にいるみたい」

「あはは、私もだ。子供の頃はお父様もお母様も生きていてさ。いつのまにかひとりぼっちになって……夢の中にいるみたい。ルパート、きれいな人って言ってくれてありがとうね。嬉しい。私も、ルパートを初めてみたとき、やったー! って思ったんだよ」

「そうなの? ありがとう。でも、まだこどもだし。だけどさ、すぐに大きくなって大人になったら絶対ミントさんを守るから。さっき、僕がギーアルさんに甘噛みされたとき、かばってくれたよね? この人は、信頼できる人だって思った。ミントさんはちゃんと他人のために動ける人だって。僕はミントさんは尊敬できる人だと思う。だから。僕は立派な夫となって、生涯ミントさんを……」

「あはは、わかってるよ」


 ルパートって10歳にしてはおとなびているところもある。

 普通の10歳の男の子って虫飼って喜んでいる年頃じゃないの?

 かなりしっかりしてるよね、ちゃんと他人の気持ちも考えられる子だし。


「肩の力を抜こうよ」


 私は言った。

 権力者たちにおしつけられておままごとみたいな結婚生活送るのもなんだか癪だし。


「結婚式のとき、ほら、誓いのキスは省略されたじゃない? ブレア村長がまだ早いとかいってさ。私も最初のキスは好きな人としたいと思ってる」

「うん」


 ルパートは私をまっすぐ見てる。


「私はルパートをきっと好きになるよ。そんな予感がする。だから、えーと、だから」

「ミントさん」

「はい?」

「僕は、ミントさんに好きになってもらえるように努力するよ。必ず、僕のことを好きにさせてみせる」


 少女みたいに整った顔の少年は、顔を真赤にしてそう言った。


「だから、あのね、女神様の前で夫婦の誓いをしたあとでこんなこと言うのもなんだけど……。ミントさん、僕と、本当の夫婦になることを前提に、恋人として、お付き合いしてください!」


 青く輝く大きな目で、私をまっすぐ見つめてそういうルパート。白い肌に血色のいい唇の色が映えていて、絵画みたいに綺麗だと思った。


 こんな年下の旦那様に、告白させちゃった。


 偶然の運命に導かれて私達は夫婦にさせられたけど。

 お互いを愛し慈しむのは、私達自身の意思でできることだ。


 私は、私の意思で、私の好きな人と添い遂げたい。


 そして、今私の前で勇気をふりしぼって告白してくれた男の子は、絶対に私の好きな人になるだろう、そんな確信があった。

 だって、私の魂の奥底が今こんなにも震えている。


「ええ、喜んで。いいよ、ルパート、私をあなたの彼女にしてください」


 妻となってから彼女になるとか、順番がどうにかしているけれど、人生なんてどうにかしているのが普通なんだ。


「ミントさん」


 ルパートがそのすべすべの肌の手を私に差し出す。

 紅い唇をきっと引き結んで、碧い瞳を私から一瞬もそらさずに。

 私もそっと手を伸ばし。

 人生始めての彼氏と手と手を触れ合わせた。


 ルパートは安心したかのようにかわいい笑顔で笑って、


「ミントさん、僕頑張るからこれからもぎゃふ」


 ドラゴンのギーアルがぱっくりとルパートに噛みついていた。

 

「もがもがもがもが」


 上半身を咥えられたまま手足をじたばたさせるルパート。


「え、ちょっと待って、やめてやめたげて! せっかく今いいとこだったのに!」


 まあ、ギーアルの気持ちわからなくはないけどさ。

 ……ドラゴンフルートで呼びつけられたと思ったら自分を無視されて目の前で告白とか始めたんだもんね。


「ごめんごめんやめたげてー! 私の初カレなのー!」


 しばらくしてやっと解放されたルパートは窒息寸前だったみたいで青い顔をしていた。


「ギーアルさん……僕の顔を舐めるの、やめてもらっていいかな……」


 見るとルパートの顔がギーアルの唾液でつやつやと光っている。


 ……あれ?

 これ、私、彼氏のファーストキスを奪われちゃってない?

 口に頭を咥えて舌でベロベロするのをキスと呼ぶのかどうかは知らないけどさ。

 ドラゴン相手ならノーカンでいいだろうか……うん、ノーカンだ!

 犬に顔を舐められるのをファーストキスとは言わないもんね!



 さて、次はドラゴンの話だ。

 ルパートは、ドラゴンのお乳を飲んで育ったって、マジ?















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