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元サレ妻のヒロインは、ひとりで竜を倒したい~浮気者の攻略対象者には頼りません~  作者: 九重


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想定したことと想定外だったこと

 その後、収納魔法の取得方法を公開したせいで、騎士団は一時大混乱を起こした。


「馬鹿な! こんな簡単に――――」

「私は夢でも見ているのか?」

「兵站が様変わりするぞ!」


 発見者になったエドヴィンと、最初の実践者となったマルクは、ずいぶん大変だったらしい。

 特にエドヴィンの功績を信じられない(信じたくない)王妃陣営は、根掘り葉掘りあら探しにずいぶん熱心だったみたい。

 もっともそれくらい予想していたエドヴィンの対応は完璧で、反対にあまりにしつこく絡んだ王妃が国王から叱責されたみたい。

 これで懲りてくれればいいんだけれど……きっとそうはならないんだろうな。

 ホント。権力者のゴタゴタは、醜いわ。


 まあ、私は魔法の発現もまだの幼年学校一年生だから関係ないんだけど!


 収納魔法の取得者で、特筆すべきはビクトリアだ。

 先日十四歳になったばかりの彼女は、なんと四トントラックほどもある収納魔法を取得した。もちろん、今現在ぶっちぎりの一位の収納量だ。(私は除く)


 ――――検証実験の結果は、魔力量にかかわらず、概ね女性は男性より収納量が多いことが判明した。

 年齢はあまり関係なく、考え方が柔軟な方が取得するのが早く、几帳面な性格の人ほど収納項目が多いらしい。

 明確な理由付けはまだだけど、やはり肝となるのは収納についてどれだけ具体的にイメージ出来るかなのではないかしら?


 こっそりビクトリアに聞いたら、彼女は令嬢らしくドレスや宝飾品を数多く所有している他に、趣味の武器や防具などのコレクションがたくさんあるんだって。娘を溺愛する父のおかげで充実した品々を、日々愛でて整理するのが大好きだって言っていたわ。コレクション用の別邸まで持っているっていうんだから、相当よね?


 彼女みたいに、モノを収納するということを感覚的にわかっている人ほど、有効的な収納魔法を取得したんだと思う。

 まあ、その辺の検証も含めて、収納魔法の研究がどんどん進められているそうだ。




 ――――そうなるだろうってことは、予想の範囲内だったんだけど。

 予想外のことも起こるのが、世の常よね。


「……アレは、いったいなんですか?」


 私は、視界の先の光景から目を反らしながらそう聞いた。


「見てのとおりだ」


「どうしてアノ人たちが、ここにいるんです?」


 こことは、騎士団幼年学校の訓練室。部外者立ち入り禁止の教室内に、見目麗しい美少年がふたり立っている。


「収納魔法の取得のためだ」


「アノ人たち、十三歳ですよね?」


「つい先日、十四歳になったんだよ。かなり大きな誕生パーティーをしたのだけれど、知らなかったのかい?」


 そんなもの、興味ないもの!


「王宮でやればいいじゃないですか! なんでわざわざ王太子さまが、ここまで足を運んでいるんです?」


 そうアノ人とは、オリヴェル・ロザグリア第二王子、乙女ゲームのメイン攻略対象者だ。

 そして彼の隣にはローレン・クロブジャー、攻略対象者その二もついている。


「収納魔法の取得は、騎士団とその付属機関の関係者に限られているからね。取得する場所も、その内のどこかだよ」


 便利な収納魔法だが、悪用されれば問題も多い。

 だから、取得制限がかけられるのは当然なのだけど。


「王族なら別枠でしょう?」


 そしてたぶん、現騎士団長の息子も別枠だと思う。


「……特別扱いは、いやだと言いだしてね」


「いつも特別扱いされまくっていますよね? 何を今さら! 絶対、別の目的があるでしょう!」


 私が睨みつければ、エドヴィンとマルクは顔を見合わせ、ため息をつく。

 どちらが言う? というふうに、目で相談していたけれど、やがてエドヴィンが折れた。


「君だよ」


「え?」


「オリヴェルは君に会いに来たんだ。……ビクトリア嬢の誕生会からずっと、君はオリヴェルにとって、私の魔の手から救わなければならない薄幸の令嬢なんだ」



 …………何それ?


短編公開しました。

「専制君主制における正しいザマァ」

https://book1.adouzi.eu.org/n2159ln/

お読みいただけたなら幸いです。

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 救うなら不憫枠の兄上を迷教官と母君から救いたまえ。
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