表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元サレ妻のヒロインは、ひとりで竜を倒したい~浮気者の攻略対象者には頼りません~  作者: 九重


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/24

サレ妻だった前世を思いだしました

新連載です。

ある程度ストックがあるので、一日二話ほどの更新を目指します。

お付き合いいただけますと嬉しいです。

 ――――ようやく離婚出来たのに。


 今まで経験したことがないほどの痛みと、こみ上げる悔しさで、私の思考は真っ赤に染まる。


「あんたのせいよ! あんたがいるから、彼は私のところに来てくれなくなったのよ!」


 ヒステリックな叫び声が、ガンガンと頭に響いた。

 血の(したた)る包丁を握った女は、いつも綺麗にセットしている髪を振り乱している。

 すかした女のそんな姿が、たまらなく滑稽(こっけい)だ。

 こんな状況じゃなかったら思う存分嘲笑(あざわら)ってやったのに。

 残念なことに、今の私は倒れたままピクリとも動けない。


「キャー! 人殺し!!」

「誰か、救急車を呼んで!」

「いや、警察だ!」

「こいつっ! お前がやったのか!?」


 人通りの多い繁華街で起こった突然の凶行に、通行人は大騒ぎ。私を刺した女は、あっという間に数人の男に囲まれて、アスファルトに頭を押しつけられ動きを封じられた。


「放せっ! 放しなさいよ!! 悪いのはあの女よ! 私は悪くないんだからっ!」




 ハハッ……どの口がそれを言うの?

 そもそも、私の夫――――いえ、もう離婚したから元夫ね。あの()()を寝取ったのはあなたでしょう?

 だから私はあいつを捨てたのよ。

 それを受け入れられなくて「許してくれ」と(すが)ってきたのは、あいつの勝手。

 その過程で、あいつとあなたが別れようと、そんなの私にはなんの関係もないわ。


 それなのに、逆恨みで私を刺すなんて!

 どうせ殺るなら、あのクズと無理心中でもなんでもすればよかったのに!

 私を巻きこまないでよ!!


 怒鳴りつけてやりたいことがいっぱいなのに、もう私にそんな力はない。

 寒くて寒くて仕方ないし……視界も暗くなっていく。

 遠くにサイレンの音が聞こえたけれど……いつになっても大きくならないのは、なんでなの?

 むしろ何も聞こえなくなっていくんだけど。


 ああ、私は死ぬんだ。

 強制された静寂の中で、いやでも理解する。



 そうして私は意識を失った――――たぶん死んだのだと思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ