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吉姫様の戦国サバイバル ベータ版  作者: 夢想する人
第五章 天文十八年 (天文十八年1549)
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第百六十四話 甘味

今回はお菓子作り。





『甘味』



天文十八年五月、すっかり春めいて過ごしやすい季節です。

農村ではこの時期が春の農繁期で田植えなど農作業に忙しく、その年の作物の出来を左右する重要な時期といっても差し支えありません。


尾張ももちろん同じ状況なのですが、そんな時期に伊勢に兵を出しました。しかし尾張の伊勢出兵は常備軍のみの出兵で、農村への動員は全く掛かっていません。今の尾張はそれが出来る国なのです。



今日は梓さんと私、それに千代女さんと女三人が古渡の台所を借りてお菓子を作る事になりました。


お菓子と言えば、お茶請けやおやつにどうぞと頂き物を頂く事が多いのですが、梓さんが出産を控え、産まれて来る子供に何かお菓子を作ってあげたいのですが、と相談されました。


それならばと、簡単に作れるお菓子を作りましょうという事になったのです。


作るのは私達三人ですが、古渡の台所を預かる料理人の人も立ち会っています。

材料などは彼に頼んでおいた方が揃えてもらうのも楽ですしね。




「実は恥ずかしながら私は殆ど料理をしたことが無く、お菓子作りなど初めてなのです」


何となくそんな気がしていましたが、梓さんが恥ずかしそうに話します。


それは前世も含めて、という事だと思うのですが、今生でも国人領主の娘ですし、家での料理は使用人の仕事ですから自ら料理をする機会は殆ど無いでしょう。


多分、今も料理は川田の家から連れて来た料理人が作っているのでしょう。

お茶などは自分で作って淹れたりするみたいですが。


「千代女さんは料理はどうですか?」


「私は実家で仕込まれましたから多少は」


千代女さんは望月家の娘ですから、野外活動での料理の仕方などを学んでいるのでしょうか?


「今日作るのは簡単なお菓子です。

 覚えて帰れば自分で作ることが出来ますよ」

 

二人とも甘い物に目が無いので、お菓子と聞くと目を輝かせます。


とはいえ、梓さんは前世で結構美味しい物を食べてそうですね。



今日用意したのは砂糖代わりの麦芽糖、それに豆乳、片栗粉などです。



「今日は豆乳が手に入ったので、これを使ってお菓子を作りましょう」


作るのはミルク餅です。


「まず鍋に豆乳、麦芽、片栗粉を投入し、お玉で混ぜて良く溶かします」


私がお手本を見せると、他の二人もならって作っていきます。



「良く混ざったら、火にかけてしゃもじで混ぜます。

 すると熱で塊が出来始めますから、火を弱めます。

 そして全体が固まってくるまで混ぜ続けます」

 

これはそこまで難しいお菓子ではないので、二人とも問題無さそうです。



「さて、良い感じに固まってきたら、次は器に移し平らに伸ばします。

 粘り気がありますから、水で濡らしたヘラで伸ばしていきます」


お菓子作りは初めてだという梓さんは、仕事や実験で似たような事をしているせいか、器用なもので手際よく作業を進めて仕上げてしまいました。


千代女さんもそつが無い感じですね。


「はい。では器をこちらの冷水を張ってある盥に浮かべて熱を取ります」


三人で器を盥に浮かべると、盛り付ける皿を準備します。


そして、良い感じに熱が取れたところで声を掛けます。


「そろそろ良いでしょう。

 器で固まった餅にヘラで切れ目を入れ、盛り付け皿に盛り付けていきます」

 

二人共うまい具合に、私のお手本通りに皿に盛り付けられました。


「では最後に、この黄な粉を振りかけて完成です」


待ちきれないと黄な粉を振りかけます。


「出来ました」


「私も出来ました」



「では、早速食べてみましょうか」


「「はい!」」


この餅は冷やしすぎると食べにくくなるので、水で熱が取れた位が丁度いいと思います。


竹で作った楊枝に一切れ刺して口に入れると、前世で食べた懐かしい触感が再現されます。


本当は砂糖の方がしっかり甘味が出るのですが、麦芽糖も悪くないですね。


「美味しいですね」


「美味しいです!

 こんなに簡単に作れるのに」

 

「そうですね。作るのは簡単です。

  豆乳が手に入れば簡単に作れると思います。

 この豆乳は古渡の城下の、城に豆腐を納めている豆腐屋さんに頼んで持って来てもらったものなんですよ」


「そうなんですね。

 なら、うちも頼めば持って来てくれるかもしれませんね」

 

「入り用なら、私からも言っておきますよ」


「ありがとうございます。では宜しくお願い致します。

 今日教えてもらったお菓子は、柔らかくて子供にも食べさせやすそうです」

 

「ええ、でも小さな子供だと喉に詰まらせる可能性があるので十分注意してくださいね」


「それは勿論。小さく切って食べさせます。

 そう言えば、もうそろそろ臨月なのです」

 

梓さんのお腹もすっかり大きくなって、もうすぐ母親になるのですね。


「しっかり栄養を取って、元気な子を産んでくださいね。

 赤ちゃんに会えるのを楽しみにしていますよ」

 

「私も梓さんの赤ちゃんを見るのが楽しみです」


千代女さんもこの時代だとそろそろ輿入れしてもおかしくない年齢で、赤ちゃんを産むというのがもう身近に感じられる年頃なのでしょうね。


望月の家は、薬事奉行で活躍している千代女さんの叔父さんを始めとする様々な人が、いろんな面での貢献を高く評価されています。父も望月の家と縁を結びたいと考えている様ですから、千代女さんの輿入れもそう遠くないでしょう。






梓さんは出産を控え、千代女さんもそろそろ輿入れを考える年になりました。


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