天然カップルとほどけない手
色々あったなぁ。今日一日で幹久おっさんの茶番劇、日葵のお爺ちゃんに会って、最後は赤井から頼まれてしまった。どうにも頭がごちゃごちゃする。ため息をついて、屋敷のドアを開けると。
「わわ、もう帰って来た」
「私は、着替えました」
「遅いわねー。早着替えはショーでは必須よ」
なんか二階でバタバタしているようだ。こんな日にコスプレでもしているのだろうか?
リビングへ行くと、晴彦さんが青い顔で座っていた。
「……なんかあったんですか?」
「え? あぁ、三人は用事があるって上に言ったよ。僕は……お義父さんに船釣りの約束を取り付けられただけさ……」
「ご愁傷様です」
「うぅ……絶対、家の様子とか仕事のこととか色々聞かれるんだぁ。なんなら先回りで情報を探られるんだぁ。そうだ! 樹君、君も一緒に行けばいいじゃないか」
「ぶっちゃけ、割と楽しそうなのでいいですよ。まぁ、夏休み中ならですけど」
「予定が入ったのは9月なんだよぉ」
「じゃあ、無理ですね」
「そんな~」
崩れ落ちる晴彦さん。そのまま自室へと言ってしまった。入れ替わるように、日葵達が降りてくる。
「何してたんですか?」
「ちょっと、日葵と咲月を誘って女の話をしてたのよ」
葉香さんがウインクをしてくる。でた、女の話。これ言われると男子は突っ込めないよなぁ。
「わかりました。じゃあ、疲れたんで寝ます。おやすみなさい」
「はい、お休みなさい」
「ゆっくり、休んでください」
葉香さんと咲月ちゃんと挨拶をして、部屋を出ると横についてくる日葵。
「ん? 日葵も寝るのか? っていうか、普段ならもう寝てる時間帯か」
「うん……ねむねむでっす」
時計を見れば夜の11:30日葵は普段11時頃に寝ているだろうから、もう眠いのだろう。
二人して階段を昇り、左右に分かれようとすると袖を引っ張られた。
「おっと、どうした?」
「イックン。明日、デートしよっ?」
うつらうつらとしており、半分寝ているようだが。しっかりとこっちを見てそう言った。
「……明々後日にはパーティーだろ? 準備とか色々あると思うが……いや、行こうぜ」
大事なのは日葵との時間だ。もちろん、幹久のこともあるがそれもデートにすればいい。
「うん、ありがと。大好きイックン」
寝ぼけたまんまで腰に抱き着いて、犬のように顔をグリグリとこすりつけてくる。
本格的に眠たくなってんな。
「部屋まで送るよ」
「……うん。ふぁ~」
手をつないで、部屋まで行くとそのまま日葵はベッドに倒れた。
「にゃむ……にゃむ」
「風邪ひくっての、まったく」
盛大にダイブしたので、パジャマがめくれている。成るべく見ないように直して、タオルケットを掛けると眠った日葵に手を柔らかく握られる。振りほどくのは容易いが、なんだかそれができなくて……。
自然に解けるまでいてやるか。片手を握られたまま、ベッドの脇に座る。
つい先程まで、先のことを考えて煮詰まっていたのに、今は穏やかである自分に気づいて苦笑する。
「我ながら、単純というか、馬鹿というか……」
この手を離さないことがだけを俺は考えればいいと、なんの根拠もないくせにそう思う。
慎重に日葵の手を握り返して、背中越しにその寝息を聞いてのだった。
ブックマークと評価ありがとうございます。もしよろしかったら、ポチってくれたらモチベーションが上がります。よろしくお願いします。
感想も嬉しいです。
ハイファンタジーでも連載しています。よかった読んでいただけたら……(文字数100万字から目を逸らしつつ)嬉しいですっ!下記にリンクあります。
『奴隷に鍛えられる異世界』
https://book1.adouzi.eu.org/n9344ea/




