二大王子と謎の男子
イライラと組んだ腕の指を動かす錬と、ブックカバーがされた本を読む玲次。対照的な様子の二人は、SNSを頼りに日葵を狙っていると思われる総合商事『道明』の長男を追っている。
二人の王子を乗せた車が、空港から数十分の距離にある海沿いの街にたどり着く。
画像を頼りに街を探索すると、意外なことに目当ての人物はすぐに見つかった。
「……おい、あれだよな。投稿された画像の奴」
「……あぁ、『道明』の長男。道明 昭だ」
頭痛がするとでも言わんばかりに眉間を揉む錬と、怪訝な表情を隠せない玲次。
二人が探してた金髪は、街の商店街で複数人の女性に囲まれながら楽しそうにはしゃいでいたのだ。
女性の肩に手を回し、投稿用の画像だろうか、何枚もスマフォで撮影をしている。
「……まぁ、一応行くか。卜部のこと知っているかもしれねぇし」
「そうだな。頭が痛い」
二人が近づくと、金髪の取り巻きが色めきだつ。
「えっ、ちょ、あん二人、ばりイケメンじゃなかと?」
「方言出ているわよ……」
「アキラ君もかっこいいけど、あの二人も凄い……この街に何が起こってるの!?」
自分の取り巻きの注意がそれたのが気に喰わないのか、やや気分を害した表情で金髪が二人を見るが、すぐに軽薄そうな笑顔に切り替わった。
「あー。何となくわかるわ。君ら二人も龍造寺のお姫様狙い? だよね。こっち側の匂いするっていうか、庶民とはオーラ違うね。IINE交換しとく?」
「遠慮するよ、俺は赤井 錬。龍造寺って、やっぱ卜部はこの街にいるのか?」
「僕は『青柳』だ。説明は不要だろう、悪いが龍造寺の孫娘に手を出すのは遠慮してもらいたい」
「いや、無理でしょ。というかウチより大分儲けている所じゃないか。そこからも跡継ぎが来てるの凄いね。さっきも俺が一番乗りかと思ったら、すでにお姫様、デートしてたし」
錬と玲次の顔色が変わる。錬が女性を警戒しながら金髪に詰め寄った。
「卜部が他の男とデートしていただと!? どんな奴だ? どこの御曹司だよ」
「知らないね。でもオーラが無かったっていうか。相手の男、多分こっち側じゃない。何の変哲も無い庶民だね、お姫様もなんであんな冴えない男といるのか……だから、金でエスコート役を変わってもらおうとしたら逃げられちゃって、今は部下にお姫様を探してもらってんの。小さな街だし、すぐに見つかるでしょ。熱いの嫌だから涼しい所行くよ、一緒に待っててもいいよ。ほら、皆行こう」
そう言って金髪は再び女性陣に向き直り、もう興味は無いと近くの喫茶店に入っていった。
もちろんついていくことなどせず、錬は玲次に話しかける。
「おい、玲次。どう思う?」
「この街に知り合いがいた。とかじゃないか?」
「……終業式の日に卜部が『デート』した相手がいるのかも知れねぇな」
「どちらにせよ。僕は卜部を探す。ここからは別行動にしよう、もし卜部が誰かと一緒にいるとしても行動を起こすのは早い者勝ちだ」
玲次の提案に錬は獰猛な笑みを浮かべた。
「いいね。そういうの好きだぜ。お前もやっと恋敵って奴がわかってきたじゃねぇか。お前と……誰が相手か知らねぇけど、卜部は渡さねぇ」
「バカが。僕はやり方は選ばない。お前と違って余裕がないんでな」
そう言って、二人は別々の道へ日葵を探しに歩き出したのだった。
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ハイファンタジーでも連載しています。よかった読んでいただけたら……(文字数100万字から目を逸らしつつ)嬉しいですっ!下記にリンクあります。
『奴隷に鍛えられる異世界』
https://book1.adouzi.eu.org/n9344ea/




