表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】学園の二大王子がクラスの天然女子に興味を持ったようです。ってそれ俺の彼女っ!!  作者: 路地裏の茶屋


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/88

クールシスターとおもてなし

 『夏休みの初日』つまりはゆっくり眠り、学業の疲れをいやす最高のひと時……。


 バァン! と扉が開かれる。


「おはよー、イックン。お迎えに来たよっ! へぶっ」


「だと思ったよっ!」

 

 とりあえず枕を投げておいた。今年の夏は……熱くなりそうだ。

 日葵が作った朝ごはんを食べて、家を出る。肩にかけた鞄にはズッシリと夏休みの宿題が入っており、全然休みと言う感じがしない。


「今日は、サッキーも一緒にお勉強するからね」


「咲月ちゃん、今年受験か。日葵はともかく、俺が横にいたら邪魔じゃないか?」


 横を歩く日葵は白いフリル付きのワンピースである。腰にゆるくベルト巻いて、黒いニーソックスというちょっとゴスロリチックな服装だ。多分、葉香さんの趣味だと思うけど、涼し気でとても似合っている。


「サッキーが一緒にお勉強したいって言ったのでっす。皆で集まった方がきっと楽しいよ」


「それならいいけどな」


 俺や日葵と違って、咲月ちゃんは繊細な所がありそうだし、注意しよう。

 日葵にデリカシーとかは期待しない方が良いしな。坂道を登り、日葵の家に着く。

 

「あっ、お姉ちゃんに樹さんっ。おはようございます」


 縁側に座り、風鈴の音の下。心配になるほど線の細い少女が控えめに手を振ってくる。

 白いブラウスに、水色のスカートといった夏らしい恰好をした咲月ちゃんだ。丸みを帯びたショートカットがふわりと風に乗る。


「……」


「やっほー、ただいまー。どしたのイックン?」


「いや、ちょっとな」


 ドラマかなんかのワンシーンのような、完成度の高い美少女然とした雰囲気に絶句してしまった。


「日葵、ちょっと。咲月ちゃんの横に立って、こっちを向いて手を振ってくれ」


「へっ? わかったよ」


「あれ? どうしたのお姉ちゃん」


「イックンが、並んで欲しいって。やっほーイックン」


「や、やっほー」


 背の低い元気っ娘が並び、ブンブンと手を振る。控えめな咲月ちゃんとの対比が良き。朝ドラの主人公にでもなった気分だ。可愛い女子が並ぶと、ちょっとした日常のワンシーンでも絵になるらしい。

 ……夏っていいな。晴彦さんではないが、カメラを持ってないのが悔やまれる。

 満足したので、二人の元に近寄る。


「何だったのイックン?」


「夏を見ていた。気にしないでくれ」


「?……えと、ここは熱いですし、中は冷房が効いているので入りましょう」


 玄関に回り、土間で靴を脱ぐ。リビングに入ると、程よい冷気が心地よい。

 中に入ると椅子を勧められ、日葵と座るとそっと紙が差し出される。


「樹さん。飲み物は何がいいですか? こちらメニューです」


「メニューあんのっ!?」


「さっすがサッキー」


 手書きのメニューが渡される。麦茶、サイダー、カルピス、牛乳、特製野菜ジュース、その下にはスナック菓子の種類が並んでいた。


「待っている間に、作っておいたんです。お姉ちゃんはカルピスだよね」


「うん、ありがとっ」


 僕らの前にコースターが置かれ、日葵のコースターにはグラスに氷が入ったカルピスが置かれる。


「この特製野菜ジュースってのは?」


「夏バテ防止用に私が作った特製野菜ジュースです。リンゴ果汁ベースなので飲みやすいですよ」


「……じゃあ、それで」


「はい、少々お待ちください」


 コースターの上にカットしたレモンを飾ったグラスが置かれる。色は黄緑でストローが刺さっていた。野菜ジュースは水っぽくならないように、氷は入っていないが……。手に持ってみると、グラスが冷凍庫で冷やされていたことがわかる。一口飲むと、ほのかな甘みと酸味、少しだけ青臭さはあるが気にならないくらいで、飲みやすく美味しい。なんだこれ。彼女の家に行ったら、その妹にちょっとした飲食店並みにもてなされているでござる。後でお金とか請求されない? 大丈夫? 驚愕していると、コトリと静かに木皿が置かれる。


「ドライフルーツです。どうぞ」


「気遣いがプロなんよっ!」


 ツッコまざるをえなかった。ビクリと咲月ちゃんが反応する。驚かせてごめんね。


「ふぇ。何か不手際がありましたか?」


「その逆、メニュー出されたと思ったら。氷を入れた方が美味しいカルピス、野菜ジュースは味に気を使った冷やしたグラス、少し飲んだタイミングで口が寂しいなぁと思わせてのツマミ、手順がプロのそれなんだがっ。咲月ちゃん本当に中学生!?」


「きょ、恐縮です」


「ムフー。自慢の妹なんだよっ」


 こんな妹がいたら自慢もしたくなるだろう。日葵も大概だが、咲月ちゃんまでハイスペックとかこの姉妹どうなってんだ。

ブックマークと評価ありがとうございます。

感想も嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓ハイファンタジーでも連載しています↓

奴隷に鍛えられる異世界生活

― 新着の感想 ―
[一言] 日葵ちゃんの妹の咲月ちゃんホントしっかりしてるなー。 実際こんな出来た妹いたら自分も自慢したくなっちゃうね。 次回も楽しみにしています。
[気になる点] 咲月ちゃんはイックンに恋愛感情的なものを抱いてるんですか? [一言] 今後の展開に関係したり、作者様の考えに背くのなら答えなくても結構です。 不埒な質問をすいません。
[一言] >日葵にデリカシーとかは期待しない方が良いしな。 きっと、日葵もやれば出来るはず…はず。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ