お節介と天然少女の通学路
まだ眠い、あくびを噛み殺しながら、商店街の入り口まで歩くと、見覚えのあるポニテが揺れている。
日葵が自販機に持たれていた。こちらを見て手をブンブンと振って、走り寄ってくる。
「おっはよー。イックン」
「……早いな」
登校時間まではまだかなりある。今日は色々あるので先に学校へ行くつもりだったんだけどな。
「料理と早起きは私の特技だからねっ。エヘヘッ、絶対早くに学校へ行くと思ったよ」
日葵がスマフォを突き出してくる。表示されているのは、昨日俺が送ったメッセージ。
『明日の部長会、ガンバレ』
「ただの応援だろ?」
「お付き合いする前ならともかく、今の私達なら顔を合わせて言うはずでっす。何かあるんだよね? 時間的に帰り道でメッセージを打ったんだよね? ね、ね?」
してやったりと、まとわりついてくる日葵の頭をポンポンと撫でる。
本当に、凄い彼女だよ。
「学校に行くか」
「うん。よっし、がんばりまっす!」
登校中に別に特別な会話があるわけではない。日葵も特に質問してくることはない。
下手すれば、俺がすることなんてわかっている可能性すらあるのだ。恐るべし。
「咲月と一緒に写真を撮ってねー」
「大丈夫な写真なんだろうな?」
「わかんないけどお母さんが『一般イベだとギリアウト』って言ってた」
「だったらアウトなんだよっ!」
朝ごはんとか、夏休みのこととか、ゲーセンのこととか。
そんなことを話していると、すぐに学校についてしまう。
本日は夏休み前の調整日、終日実習だ。配布物をもらった後は自由行動になる。
真面目に実習する生徒もいるし、部活や委員会関係のことをする生徒もいる。
進学校ってのに、意外と実習とかが多いんだよな。
靴箱で上履きに吐きかける。日葵は教室へ、俺は……。
「そっち行くんだ。頑張ってねイックン」
「いやいや、頑張るのはそっちだろ。……日葵、今日は一緒に帰ろう。ゲーセンよろうぜ」
「もー、イックンは不良だなー。いいよ、楽しみだねっ!」
元気に教室へ行く日葵の後ろ姿を少し見つめ、西棟へ向かう。
「……部長会があるのは、スクリーンのあるPC室なんだよな」
ポケットから、特待生の女子が持っていたカギを取り出して、『視聴覚室』の鍵を開けた。
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