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【本編完結】学園の二大王子がクラスの天然女子に興味を持ったようです。ってそれ俺の彼女っ!!  作者: 路地裏の茶屋


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天然少女とクールシスター

「お待たせー。今日も待ってくれてありがとね」


 学生会の業務を終えた日葵が、教室へ飛び込んできた。

 夕方の風すら熱を孕み、窓から覗く雲の高さは夏の訪れを示すようだ。


「ご苦労様。今日は色々回っていたんだな」


 鞄を担ぎながら日葵の横に並ぶと、制汗剤の匂いがした。歩き回って汗を掻いたのだろう。

 ……彼女の制汗剤の匂いにドキドキする俺は変態かもしれん。


「そうだよ。あっ、なんかマルっちが新体操部に来たよ。イックンに言われて来たって。あれって、何だったの?」


「あぁ、まぁ、俺も仕事を手伝いたかったんだよ」


 日葵が学生会の仕事をしている以上、王子達のファンに嫌がらせを受けることも十分に考えられた。

 何ができるわけでは無いがバレー部の丸宮と、女子の知り合いが多い陸斗に頼みこみ、何かがあった時に動いてもらうようにしていた。丸宮は日葵とは仲の良い友達だし、直接救助に向かったのはやりすぎ感があったが、女子達の機微はやはり女子に任せるのが良いだろう。他にも数少ない知り合いには全員声を掛けている。ちょっとした気遣い一つで、リスクが減らせるのならそうするべきだろう。

 日葵は、頭が良いのだが人とのコミュニケーションが単純なのがトラブルに発展するんだよな。

 まぁ、そういう真っすぐな所が好ましくはある。何か、めっちゃ惚れているよなぁ俺。


「よくわかんないけど……ありがとね、イックン」


「どういたしまして、帰るぞ。立っていても暑いからな」


 まっすぐに見れないんだよな。こういう時にかっこつけれる男になりたいぜ。


「だねー。あっ、さっきIineがあって、サッキーが帰りに合流したいんだって」


咲月さつきちゃんが? 珍しいな。俺も一緒でいいのか?」


「むしろ、イックンに来て欲しいんだって」


「別にいいぞ」


 彼女に最後に合ったのは、四月に日葵に告白してから色々あったタイミングだ。


「集合場所は、古町商店だからジュースでも買おうよ」


 古町商店はここいらで古くからある駄菓子屋だ。一応果物も売っているので大人も利用している。

 少し遠回りになるが、坂道を下り商店街方面へ向かう。

 日葵との会話は学生会のこととか、夏休みとか、テストとか。日葵からは次々に言葉が出てくるので、沈黙はほとんどない。ニコニコでブンブン手を振りながら話す姿を見ていると飽きないな。


「とりあえず。明日の会で部費の発表が終われば、ミッションコンプリ―トでっす」


「そりゃあ、良かった。学生会のことが無くなって、学食に戻るのは残念だけどな」


「イックンは甘えんぼさんだなー。仕方ないなー。新学期になったら、またお弁当作ってあげるね」


「マジか、それは嬉しい。帰り道の買い物とか楽しいし」


「エヘヘ、私もちょっとハマりそうだよ。好きな人に料理を作るのって素敵だねっ」


「グフっ……」


「ジ〇ンのモビルスーツがどうかしたの?」


「自覚無いのかよ……」

 

 この子、恋愛方面でも天然なんだよな。やられっぱなしなので、カウンターを仕掛けても良いが、さらにやられそうだ。顔を逸らすのが精一杯。耳まで赤いけど、夕日に誤魔化してもらおう。


 そうこうしているうちに古町商店が見えてきた。木造の建物の前には箱に入った果物が並べられ、日差し除けのパラソルが雑に立てられている。その下に咲月ちゃんがいた。

 日葵が走りだし、そのまま抱き着く。ちなみに咲月ちゃんは、中学三年であるが日葵より頭一つ高い。


「わーい、サッキー!」


「わわっ、危ないよお姉ちゃん。樹さんもお疲れ様です。お呼びしてすみませんでした」


「いいよ、いいよ。こっちこそ暑い中待たせてごめん。ちょって待ってて」


 鞄をパラソル下の机に置いて、店内へ、冷蔵庫からラムネとオレンジジュースを三つ取り出す。

 おばちゃんに三百円を払い、外へ戻ると、目をキラキラさせる日葵と申し訳なさそうにしている咲月ちゃんがいる。


「ほい、ラムネとオレンジジュ-ス」


「すみません。お金、払います」


「わーい。イックン太っ腹!」


 日葵がすぐに呑み始めた。まったくコイツは妹の奥ゆかしさの一つでもあれば……まぁ、このままでもいいか。


「というわけで、おごりになったから気にせず飲んでくれ」


「あ、ありがとうございます。もぉ、お姉ちゃんったら」


 片手でぐびぐびオレンジジュースを飲む日葵とは対照的に、両手で瓶を持ちちびちびと飲む咲月ちゃん。

 また背が高くなったような気がするな。


 日葵よりも短い髪を肩口でそろえ、ほっそりとした体躯に涼やかな切れ目、日葵が向日葵ならば彼女は桔梗の花のようだ。言うまでもなく日葵の妹なのだが、日に日に美少女感が増しているのは恐ろしい限り、後数年もすれば、周囲が放っておかない女性になることだろう。

 ちなみに姉妹仲はかなり良く、日葵はことあるごとに咲月ちゃんの自慢をしてくるので、それほど話をしたわけではないのに彼女のことに詳しくなってしまっている俺がいる。咲月ちゃんも表だってはいないがかなりのシスコンである。以前咲月ちゃんのスマフォの待ち受けを見たら日葵だったしな。


「それで、今日は何の用事なんだ?」


「えと、今日、ウチへ来るんですよね。それなら、今日のご飯は樹さんの好きな物を作ろうと思って、お姉ちゃんと一緒に料理しますね」


「それは楽しみ……何て?」


 聞き捨てならない言葉があった気がする。


「えと、好きな晩御飯の食材を買って帰ろうと……」


「その前」


「ウチへ来るんですよね。今日?」


 ……ギギギと錆びた扉のように首を動かし、プハーとラムネを飲み終わった日葵を見る。

 

「日葵、聞いてないぞ」


「私も聞いてないよ。でも、イックンの好きなご飯を作るのはいいよね。お弁当で鍛えた腕を見せる時でっす」


「えっ、お姉ちゃん。伝えてないの。Iineにお父さんからメッセージが入っていたよ」


「そなの? あっ、ほんとだ。イックン。お父さんが今晩ウチにおいでってさ。ちなみに拒否権は無いって書いてあるよ。イックンの親の許可ももらっているって」


「何で、うちの親とそっちの親が繋がってんだよっ!」


 日葵が家に来たことは何度もあるし、両親も日葵のことは知っているが、親同士の接点は無いはずだ。


「わかんない。けど、今晩は頑張ってご飯作るね。イックンっ!」


 ご飯の前に胃が痛いんだけど……。一体これからどうなるんだ?

 

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↓ハイファンタジーでも連載しています↓

奴隷に鍛えられる異世界生活

― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も面白かったです。 [気になる点] これは…既に両親公認の仲なのかな? [一言] 次回も楽しみにしています。
[良い点] 面白かったです。次回も楽しみに待ってます。 [気になる点] 赤はそうでも無いけど青は強引に迫りそう
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