表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザッシュゴッタ  作者: みの狸
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/133

堕落

 

 バスマさんから離れ、先輩たちが集まっている所に行く。オルヴォさんに失礼なことを言ってないといいんだけど……

 先輩と宮さんがボクに気づき、ニヤリと笑う。


「バスマと、結構、話してたみたいだけど、何を話してたんだ?」

「歌詞や曲をどうやって作ってるのか聞いてたんです」


 時間がないから簡単にしか聞けなかったけど、やっぱりプロは考え方からして違った。


「マジか!そんな話ができるなら、オレが話しかければよかったぁぁ!」

「オレだって、ギターの弾き方で聞きたいこと山ほどあったのに!」


 ……先輩たちって勝手だ。



「それで、オルヴォさんと話は出来たんですか?」


 先輩たちでもさすがにいきなり犯人かなんて聞いてないだろうとは思うけど、心配だ。

 オルヴォさんの近くで腕を組んで立っている将さんが深く頷いた。


「おう、自白させたぞ」

「え?自白?それって……」


 胸を張って答える将さんを見た後、先輩たちとレイくんを見る。全員が頷いている。

 本当に問い詰めたのか……。いや、それより!


「本当に、オルヴォさんが犯人だったんですか!?」

「名推理だったろ」


 あれを推理というのだろうか……


「犯人って、大げさだな。ちょっと、張り紙したくらいで。ジョークじゃないか」


 オルヴォさんは悪びれた様子もなくあっけらかんとしている。

 ちょっと、ひどくないか……


「ギターを燃やしたのは、ジョークではすまないですよ!」


 人が大事にしているものを燃やすなんて、最低な行為だ!


「ギターと言われてもね。何度も言っているように、私は君がバイトしている店に張り紙はしたけど、それ以外は知らないよ」

「え?どういうことですか?自白したって」


 肩をすくめてよく分からないジェスチャーをするオルヴォさんは、反省している様子は全くない。


「どうやら、ギターの件は違うらしい。オルヴォがやったのは、カフェの張り紙だけだそうだ」


 宮さんの吐息交じりの説明に、改めてオルヴォさんの顔を見つめる。


「そうなんですか?」

「ギターを燃やすような頭の悪そうなこと、私がやるわけないだろ」


 張り紙をするのは頭いい事なのかな?フランス人の基準ってよく分からないな……

 でも、誤魔化したり、嘘をついている感じはない。


「オルヴォ、あの時、チャットしてた言ってる」


 レイくんの言葉にオルヴォさんが頷く。アリバイがあったということか。


「ギターを燃やした奴は他にいるってことだよなぁ……。問題が尽きねえなぁ」


 伊与里先輩が空を仰ぐ。


「オルヴォさん、なんで、張り紙なんてしたんですか?」


 オルヴォさんに嫌がらせされる覚えはないと思うんだけど。


「君たちがあまりに刹那的に生きているように思えてね。私は君たちに我が身を振り返ってほしかっただけさ」


 オルヴォさん、教育者のような口ぶりだけど……


「彼女が浮気してるみたいな張り紙で、何を振り返れというんですか?」

「学生のうちは勉強だけしていればいいんだよ。それを君は女の子たちといちゃいちゃと!女の子に現を抜かして人生を無駄にする前に悔い改めてほしかっただけだよ。いいかい、女性なんてものはね。男を堕落させる」

「あ!また会ったね~」


 オルヴォさんの話を遮るように、遠くから女性の声が聞こえてきた。聞き覚えがあるような気がして振り向くと、華やかな女性の一団が手を振って駆け寄ってくるのが目に入ってきた。


「この間のお姉さんたち」


 沈没船まで泳ぎに行こうとした時に会ったお姉さんたちだ。具合が悪くなったレイくんに飲み物をくれたので、覚えている。

 お姉さんたちは目の前まで来ると、ボクたちに軽く挨拶して、レイくんに向き直った。


「この間はごめんね~。急に声かけられて驚いたよね。ワンちゃんにフランス語で話しかけてたから、つい」


 お姉さんの一人が、レイくんに手を合わせて謝っている。レイくんはこの前のように倒れることもなく、ごく自然に首を振っている。


「私ね、大学の第二外国語でフランス語を取ってるの。だから、ちょっと、フランス語で会話できたらなぁ、なんて思っちゃって」


 それでレイくんをナンパしてたのか。


「フランス語に興味がおありのようで」


 オルヴォさんがいきなり会話に割って入ってきた。


「あら?この間はいなかったですよね?もしかして彼の親戚の方ですか?」

 “Oui. Enchanté de vous connaître.”


 オルヴォさん、フランス語で話しはじめた……


「フランス語上手ですね!」

「フランス人なので」

「そうなんですか?日本語が自然なんで、どこの国の方かと思っちゃいましたよぉ」

「私でよければ、フランス語の会話相手になりますよ」

「きゃあ、うれしい!」


 お姉さんたちの輪に入っていく。その顔は見るに堪えないほどデレデレだ。

 女性は男を堕落させるとかなんとか言ってたけど……。オルヴォさん自身はいいのだろうか?


「「「クソがっ!!!」」」


 先輩たちの声が揃う。ボクも気持ちは同じだ。レイくんもフランス語で小さな声で罵っていたので同じ気持ちなんだろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ