藁麿と幸洋と幸洋と
春、桜が満開に少し前のこと。
幸洋の家族が、神社に来た。
理由はお礼をしに来たのだ。
幸洋が大きく、スクスク育っていると!
幸洋はたくさんはしゃいでいたが、疲れて眠り……そして
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母さん「菖蒲池神社、久しいね」
父さん「確かにな」
母さん「お義父さんは?」
父さん「治療中だ、定期通院だ」
母さん「そっか……境内に来たわ」
父さん「はやく手を合わせて帰ろぜ」
幸洋 「いやあ、て、あわす」
父さん「どういう意味なんだ」
母さん「アハハ」
久しぶりの場所
うん、久しぶり
僕達は母さんのお供
ボク達、母さんのお仕事のお供
藁麿、いる?
いる?
藁麿 『居るでおじゃる』
あっ、藁麿だ!
あっ、おじゃるだ!
藁麿 『ニャン太、真似するなでおじゃる』
アハハ
ごめんなさい
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早く帰りたい父さんを尻目に、幸洋は色々神社を堪能していた。
そんな幸洋に、父さんはあきらめてゆっくりしている。
母さんは幸洋と、あちらこちらを見回りしていた。
数十分後
母さんに抱き抱えられた幸洋が、境内に来た。
はしゃぎ疲れて、眠ってしまったのだ。
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僕達、父さんといる
母さんが、幸洋といるからだね
うん、そうだよ
うんうん
父さん「今年もいい一年でありたいな」
だって
うんうん
藁麿 『いい一年でおじゃるか』
母さん「父さん、幸洋が」
父さん「あら、寝ちゃたか」
母さん「うん、少し前に目をこすっていたと思ったら……」
父さん「あったかくなったな、よし少し境内に幸洋を置いて寝かせよう」
母さん「え? 境内に!」
父さん「母さんのカバンから……バスタオルを置いてっと!」
母さん「ちょっと! 勝手に引かないの」
父さん「少しだけ、ここで話さないか? 今日は俺達以外は人気がない」
母さん「境内に勝手に上がって」
父さん「ちょっとだけだ。何かあったら責任はとるから」
母さん「……少しだけよ」
父さんと母さんが、藁麿のお家におじゃましたよ
うん、藁麿! おじゃまします
藁麿 『家ではない……まあ、かまわないでおじゃるが』
母さん「幸洋、大きくなった」
父さん「ああ、来年はまた大きくなるんだ」
母さん「うん!」
母さん、父さん、嬉しそう
……うん
どうしたの? ニャン太
……バスを思い出した
……バスかあ
幸洋は、バスを……
ニャン太!
……ごめん、止めるよ
幸洋 「あう、あう、あう」
母さん「あら、幸洋がなんか言ってる」
父さん「寝言だな」
……!
どうしたの?
しっ! 静かに!
え?
幸洋 『ポンニャン……聞こえる?』
え?
これは!
幸洋 『ポンニャン、僕はそろそろ消える』
消える?
……まさか、千日が
幸洋 『近いんだ……もう、君達に会えない。この幸洋には』
ウソだ!
……そうなんだ
ニャン太!
仕方ないよポン太
藁麿 『確かにでおじゃる。ポン太の気持ちもわかるでおじゃるが……』
幸洋 『藁麿、お願いがある』
藁麿 『マロは……いや、何でおじゃる』
幸洋 『これからの、幸洋とお話したい』
え?
これからの?
幸洋 『うん! 藁麿、これからの僕と話がしたい。今しかないんだ!』
藁麿、お願い
幸洋のお願いを聞いてよ!
藁麿 『……わかったでおじゃる』
幸洋 『ありがとう』
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第四十話
未来の君へ
応援団!
ウーン、ここはどこ?
おひさま、やさしい、あったかい
フワフワ、フワフワ
「幸洋!」
だーれ?
「幸洋!」
だーれ? こわいよ ママー
「こわくないよ、君だよ」
え? ぼくなの?
「うん、君の生まれてから今までの僕だよ」
……わかんない ワーン
「ポンニャン」
えっ、ポンニャン、しってるよ
「クマ、カッパ、ハート」
うんうん
「みんなが、君の応援団だから!」
おう、えん、だあ?
「うん、みんなが、幸洋を見ているから! 幸洋ガンバレよ!」
うん! ガンバレよ!
「ガンバレよ……か。まあいいや……そして忘れないでね!」
わすれない?
「うん、忘れないでね。千日前の君と、バスのことを」
???
「……この願い、未来の君に託す!」
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幸洋 『ポンニャン、藁麿、お別れだ』
幸洋、伝わった?
どう、だった?
幸洋 『言いたいことは、言った!』
言いたいこと?
何を?
幸洋 『ポンニャン達は、君の応援団だってね』
応援団?
応援団?
藁麿 『……そろそろ消えるでおじゃる』
幸洋 『うん……正直、寂しいよ』
……
……
幸洋 『じゃあ、さよなら!』
幸洋 「うわうわ、うーん」
母さん「おはよー、幸洋」
父さん「もう、午後たぞ!」
母さん「いいの!」
幸洋 「ママ、パパ」
母さん「なーに」
幸洋 「おうえたん」
母さん「なにそれ?」
父さん「……そうだな、俺達は幸洋の応援団だよ」
幸洋は……
わかっているのかな?
藁麿 『それは幸洋にしか分からんでおじゃる』
母さん「帰ろう」
父さん「帰ろうか」
幸洋 「うん……せん、バイバイ」




