家族 背中
母さんと父さんのアパートにおじゃまして、もうすぐ一年経つ頃、母さんと父さんはアパートを引っ越すことになる。
理由は、母さんが妊娠した。
それに伴い、父さんの実家に母さんが、住むことになったからだ。
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父さん「よし、これで全部だ」
母さん「お疲れ様」
業者 「では、トラック持ってきます」
父さん「お願いします」
箱にいっぱい詰められつて……
ボク達は様子を見ている。
クマ 『この場所もお別れだな』
うん。
これで何回目かな?
二回目?
ううん、三回目だよ。
クマ 『……エアコン先生と、新しい場所に行きたかったな』
……
それはもう、言わないでおこう。
クマ 『すまん』
ところで、クマ……
スマホだけど……
クマ 『エアコン先生のあれ以来、父さんに反抗的になった。そして……』
そして……なに?
どうした?
父さん「あちゃー、スマホ(こいつ)動きが鈍くなった」
母さん「本当に?」
父さん「ああっ、買い換え時期かな」
母さん「捨てる」
父さん「いや、しばらくは使う」
母さん「そう」
父さん「予定はいつだ?」
母さん「七月終わり頃か、八月頭ごろ」
父さん「そうか……」
父さん、嬉しそうだ。
母さんも、嬉しそう。
クマ 『エアコン先生のおかげだ』
うん。
うん。
母さん「ところで、父さん。聞いていい?何故?菖蒲池神社にお参りに行こうと、前向きになったの?」
父さん「別にそこに行ったから、子供ができた訳では……」
みんな『できました!』
母さん「何があったの?」
父さん「……夢だ」
母さん「え?」
父さん「実は夢で決めた」
母さん「どんは夢?教えてくれる?」
父さん「いいよ。母さん教えてやる。俺の見た夢を、そして子供が欲しかった理由を」
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第十三話
背中
俺はガキの頃、手が着けられないワルガキでな、親の小銭をぺちったり、弱いやつには手を出したりしていた。
「うそ!初めてきいた」
ワルガキだった。
しかし、母親も父親もそんな俺を咎めはしなかった。
俺がいつしか自立してくれると考えたようだ。
しかし、俺のワルガキはドンドン酷くなっていった。
ある日、とうとう、友達を怪我させた。
誰が見ても俺が悪いのだが、ガキだった俺はアイツが悪いと笑っていた。
「……」
……殴られた。
オヤジに殴られた。
痛い!……そんなモノではなかった。
心が締め付けられた。
そう……
心が痛かった。
母は泣いていた。
心に変化を見せない俺に……
普通なら、ここまではほっとかない。
しかし、俺を信じたばかりに、ここまでほっといてくれた。
結果は……これだった。
「……その後はどうなったの?」
俺は静かになった。
心に衝撃を受けたからな。
そして何より、両親から……
お前は、あきらめた
……そう言われた。
お前の好きはことをして、楽しく生きなさい。
オヤジも母も俺に、背中を向けた。
その時の弱々しい両親の……
背中に俺は自分を恥じた。
「……っで」
俺は改心はしていない。
しかし、無理やりでもいい。
いや無理やりに、やらないといけない。
無理やりに……
違う自分を創り、背中で語らないといけないほど、情けない俺を潰さないといけない。
そう思った。
「今の父さんは、それを潰した。いっしょにいる私だからわかる。……うん、わかるつもり!」
少し前にあきらめた会話をしたろ?
公園のブランコで、気持ちを確認した時の頃からだ。
実はその頃から、両親の背中の夢を何回か見ていたんだ。
「え?」
俺の心を試すような夢だった。
そんな夢を、見る機会が多くなった。
そして、オヤジが来た日の夜、夢でオヤジが出てきた。
その時着ていた服のままのオヤジだった。
オヤジは言った。
お前に任す
そう言った。
しわくちゃな笑顔を残し、背中を向けて小さくなっていった。
なぜだろう?
小さい背中が偉大に見えた。
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父さん「そんなセンチというか、なんというか」
母さん「……」
父さん「……泣いてる」
母さん「少しね」
ねえ、その夢。
エアコン先生のイタズラだ。
クマ 『エアコン先生……すごいよ』
エアコン先生……
すごい……
クマ 「ん?何がきた」
さっきトラックって言ってた。
そのトラックってヤツがきた。
業者 「お待たせしました。後は積んで、目的地まで行きましょう」
父さん「わかりました」
母さん「お願いします」
あっ、僕達乗せられた。
ボク達、乗せられた。
クマ 「さて、新しい場所に行こうか!」
うん。
行こう。
つづく




