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87.考古学者の家へ

 俺は職員にクエストについて聞いてみた。


「このクエストの詳細を教えてください」

「あー。このクエストですか。このクエストはですね……」


 職員の話では、王都の外れにある一軒家に住んでいる考古学者の手伝いだ。

 その考古学者が研究しているテーマが、共通語が広まる前に言語はあったかというものらしい。

 

 俺の予想通りのクエスト内容だ。

 最初のシークレットクエスト以外に、言語スキルを使ったことが無い。

 さすがに、隠し要素を見つけるためだけのスキルではないと思っていた。


 しかし、ここで一抹の不安がよぎる。

 ファーストの図書館で言語スキルについて聞いたときの事だ。一番文字を見てきているだろう、司書ギルドの職員が言語スキルについて全く知らなかったのだ。

 そのうえ、他の言語の存在について否定的だった。

 

 クエストを受けるのに制限は無いが、難易度が高い可能性がある。

 だが、それでも受ける価値はあると思っている。

 言語スキルを活用できる可能性を広げるためにも、クエストがクリアできないとしてもこの考古学者と縁を作っておいて損は無いはずだ。

 俺はこのクエストを受注したところで、ログアウトした。


 次の日の朝、俺は春花にクランについて質問することにした。


「春花、この前のイベントの話なんだが」

「そういえば、お兄ちゃんがイベントについて知らなくて、途中で終わっちゃってたね」

「あの話をしてきたという事は、俺をクランに誘うつもりか?そういえば、春花のパーティーはどこかのクランに入ったのか?」

「そうだね。クランに入ったというよりは、クランを作ったんだよ。かなり緩いクランだよ」

「俺は読書がメインだから、団体行動するつもりはないぞ。だから、今のところクランに入るつもりは無い」


 俺の回答に春花は少し考えてから話しだす。


「実はね。あのイベントでパーティーを組んでいた人たちと作ったクランなんだけど。あの時のメンバーにお兄ちゃんを誘ってほしいって頼まれたんだよ」

「それはまた、なんでだ?」

「前回のイベントの時、お兄ちゃんの活躍で館ダンジョンをクリアしたでしょ?毎回そういう事があるとは思ってないけど、時々でもそういう事があれば、あやかりたいってことじゃない?」


 あれは偶然の産物で、同じようなこと求められても困るんだが……。


「とりあえず、今回のイベントに参加する為という名目で、お試しで入るのはどう?」

「それでいいならいいぞ。今回はお試しというか、助っ人?みたいな形で。他にもそういう人はいるのか?」

「そうだねー。そろそろ第2陣が来るでしょ。そういう人を集めて、人数いっぱいには揃えたいって言ってたよ。その中で、クランを気に入ってくれた人は残ってもらうんだって」


 そういえば、第2陣の人たちにはイベントで恩恵があると書いてあった。

 ひとまず、人を集めてからクランメンバーに正式勧誘するようだ。

 新しく入る人が多いなら、俺も多少はやりやすいだろうか?

 話し合いもひと段落して、俺たちは学校へ向かう。


 ……………………。


 下校後、自室でログインする。

 昨日受けた、司書ギルドのクエストのために考古学者の家に向かう。

 一応、従魔たちを連れて王都の周りを覆う壁沿いに歩いていく。


 目的の場所に着くとボロボロの木の小屋のような建物があった。

 ギリギリ建物であるといえるほど、ボロボロの小屋だった。

 ……本当に人が住んでいるんだろうか?

 扉にノックするのは危険そうだったので、外から声をかけてみることにした。


「おーい。誰かいませんかー」


 しばらく待っていたが返事はない。クエストの依頼書ではここで間違いないはずだ。

 何度か声をかけてみるが、返事が返ってくることはなかった。

 留守なのだろうか?

 俺が帰ろうとしたその時、小屋の中から物が崩れ落ちる音がしてきた。


 何やら、嫌な予感がした俺は小屋の中を確認するために小屋の扉を開ける。

 扉には鍵がかかっておらず、中からは異臭が漂っていた。

 エラゼムとグリモは平気だが、俺・ハーメル・ヌエにはかなりきつい。

 ハーメルとヌエには外で待機してもらい、俺とエラゼム、グリモで中へ入っていく。


 小屋の中は案の定ゴミだらけで、においはどうやら台所からするらしい。

 俺は物音の原因を探すため辺りを見回してみる。

 ゴミは多いが今崩れたと思われるものはなかった。


 しばらく中を調べていると突然、エラゼムの足元が崩れた。

 エラゼムは自力で這い出てくる。そして崩れた足元を確認すると、どうやら地下室の階段があったようだ。

 俺とエラゼムは階段周りのゴミをどけて、地下へ下りていく。


 地下への階段は薄暗かったので光魔法で辺りを照らしながら下りていく。

 地上の惨状とは打って変わって、埃が少したまっている以外はきれいな状態だった。

 階段を降りた先にはいくつかの本棚があり、奥のほうにある本棚が倒れていた。

 どうやら、先ほどの音はこの本棚が倒れた時の音らしい。


「うーむ」


 俺が倒れた本棚に近づいた時、かすかに人の声がした。

 なんとなく足元辺りで聞こえた気がしたので、そっと目線を下す。


 すると、本棚の下に、古ぼけたローブを着たお爺さんが倒れていた。

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ごみ屋敷(笑)
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