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83.知性ある本

 学校が再開して3週間くらい過ぎた頃、俺は王都の図書館で読書していた。

 1週間おきにラビンスと王都を行き来して、王都図書館での読書とDランクダンジョン攻略のため準備を進めている。


 すでに迷宮ダンジョンの9階層まで進み、レベル上げと装備購入のための資金稼ぎも順調と言えよう。


 読書の方はゆっくり進めているので、まだまだ先は長い。

 そもそもCランクダンジョンを攻略するときに読む本が残っていないとしばらく戦闘だけになってしまう。

 なので、王都図書館の蔵書の半分を読む前に、Dランクダンジョンをクリアすることが目標だ。


 しかし、1つ問題が発生している。それは新たな従魔をテイムできていないことだ。

 時々、ラビンスのテイマーギルドに顔を出しているが、ピンとくるモンスターがいない。

 それに今、挑戦している迷宮ダンジョンではハーメルたちと役割が被るモンスターが多くテイムをしていない。


 さすがに妥協が必要だろうか?

 そろそろテイムしないと先に進むことができない。

 今週は読書週間なので来週、ラビンスに行くときにテイマーギルドによってみるとしようかな。


 俺は今読んでいた小説を読み終わり本棚にしまう。

そして、次の従魔を決めるためにモンスターに関する本がある2階に向かう。

2階に向かいモンスター図鑑を手に取った時、かすかに物が下に落ちる音が聞こえた。


 物音がした方に目を向けると、どうやら奥の部屋の方から聞こえてきたようだ。

 あの部屋に誰かいるのだろうか?

 しばらく見ていると、司書ギルドの職員が出てくる。

 そして、職員の手には1冊の本が握られていた。


 ……あそこの本は持ち出し禁止のはずでは?

 気になった俺は職員に声をかけた。


「あの、ちょっといいですか?」

「はい? 何でしょうか?ただいま取り込み中でして……」

「あそこの部屋の本は持ち出し禁止だと聞いていたのですが……」

「ああ、このモンスターの事ですか」


 職員さんが持っていた本をこちらに向けてくる。

 よく見てみると、あの部屋で見たことが無い本だ。

 そのうえ、小刻みに震えている。


「あそこの部屋の注意事項を知っているという事は、紹介状をお持ちの方ですね。部屋についての説明を受けた時にモンスターが発生する場合があるという話があったかと思います。この一見本に見える物は、れっきとしたモンスターです」

「そうなんですか」


 確かに奥の部屋の説明を受けた時に、本の淀んだ魔力の影響でモンスターが発生する時があると説明があった。

 てっきり、スライムとかのポピュラーなモンスターかと思ったら見た目が本にしか見えないモンスターが発生することもあるようだ。


「モンスターの発生原因が本の魔力だからか、こういった本のような見た目のモンスターが度々発生します。

こういったモンスターは外に連れ出してから倒します。ゴブリンなどのすぐに人を襲うモンスターの場合はあの部屋で倒しますが、この本型のモンスターや即時戦闘にならないモンスターは外で倒します」


 あの部屋の本は危険なものばかりだ。極力、影響のないようにする処置だろう。

 しかし、先ほどからギルド職員の手の中で震えている本型のモンスターを見ていると、何やらかわいそうに見えてくる。

 俺は職員に質問する。


「ちなみにそのモンスターどのような種族なんですか?」

「これですか? このモンスターはインテリジェンスブックというモンスターで、基本的に自ら動くことができません。そして、人が持つことで装備品のような扱いになるモンスターです。効果のほどはそれぞれの個体で違うようですが」


 なるほど、それで職員さんもさほど気にせず手に持っているわけか。

 俺は職員にある提案をした。


「そのモンスター、俺にテイムさせていただけませんか?」

「テイマーの方でしたか。ですが、いいのですか?ここで生まれたばかりのモンスターなのでそれほど強くないですよ?」

「はい。そろそろ従魔を増やそうと思っていましたし、これも何かの縁かなと思いまして」

「わかりました。さほど危険のないモンスターですし、ここでテイムしていただけるのであればかまいません。ただし、テイム後は一度、図書館を出て預けてきていただきます」


 俺は職員さんの提案を受け入れて、本型のモンスターをテイムすることにした。


「テイム」


≪インテリジェンスブックのテイムに成功しました。名前を付けてください。≫


 テイムに成功した俺は、職員からインテリジェンスブックを受け取り外に出た。



NAME「」  ウイングの従魔

種族「インテリジェンスブック」LV1 種族特性「魔法生物」「装備品」

 HP 10

 MP 100

筋力 1

耐久力 1

俊敏力 1

知力 15

魔法力 15

 スキル

「魔力上昇LV1」「火魔法LV1」


 

 マイルームに戻った俺はインテリジェンスブックのスキルを確認する。

 これは逃げることも戦う事も難しいステータスのようだ。

 種族特性の魔法生物はエラゼムと同じなので割愛して、もう一つの種族特性を確認する。



特性「装備品」   移動の為のスキル、種族特性が無いと、自ら動くことができない。人ないしモンスターの装備品として扱う事ができる。ただし、パーティー枠は1つ消費される。装備品としての効果はステータス値全てを加算し、重量は筋力と同等になる。

装備者はスキルを共有し、使用することができる。同じスキルが存在する場合、レベルが高い方が優先される。



 これは大器晩成型のモンスターだな。

 レベル1では大した効果は得られないが、レベルを上げてステータスが上昇すると真価を発揮する。

 1人で2人分のステータスになるわけだ。これはかなり大きい。

 俺には絆のペンダントの効果で従魔に限り、パーティー枠が1つ多くなる。

 つまり、デメリットを打ち消すことができるというわけだ。


 テイマーのパーティーはリーダーがやられると、そのまま全滅扱いで全員リスポーンしてしまう。

 少しでも俺の生存確率を上げるためにもこいつのレベル上げは急務だ。

 こいつの成長次第で、すぐにでも迷宮ダンジョンの中ボスにも挑戦できるかもしれない。


 さて、こいつの名前を考えないとな。

 俺はインテリジェンスブックを観察してみる。

 見た目、茶色い皮で綴じられた本のように見える。

 俺は手に取ってページを開いてみる。


「……ZZZ」


 ……開いたページいっぱいにそんなことが書かれていた。

 どうやら、他のページは開けないようだ。

 おそらくインテリジェンスブックの状態か、気持ちが書かれていると思われる。

 しゃべれないであろう、インテリジェンスブックがどのように感情表現するのかと思っていたが、こういう形だとは思わなかった。

 そして、職員から受け取ってからやたら静かだと思ったが、寝ているようだ。


 せっかくの命名の時に寝たままなのは残念なので、揺すって起こしてみる。

 すると、ページの文字が変わる。


「!!」


 どうやら起きたようなので早速、命名することにした。



NAME「グリモ」 ウイングの従魔

種族「インテリジェンスブック」LV1 種族特性「魔法生物」「装備品」

 HP 10

 MP 100

筋力 1

耐久力 1

俊敏力 1

知力 15

魔法力 15

 スキル

「魔力上昇LV1」「火魔法LV1」


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― 新着の感想 ―
名前が某魔導書のグリモアールですか。
[良い点] やっとさ、新たなメンバーが!しかも主人公にお誂え向き!てか寝てたんか~い!(笑)図太い本じゃなあ!(笑)
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